# 91 医師が覗き見る「日本社会のイマ」
今回は『新しい資本主義』について覗いてみる。
衆議院選挙は終了、自民党は単独で過半数を上回り、岸田内閣の第一歩が始まる。
今回の選挙戦を見ていて、各党は成長と分配を主張するも、多くは分配に傾いて、成長戦略が置き去りになっていた。
自民党公約では『新しい資本主義』という言葉が踊る。
成長戦略としてのDX(デジタルトランスフォーメイション)が取り上げられ、DX社会への構造改革が検討されるのであろう。
IT企業が更なる脚光を浴びる事になるが然し、どの国でもIT関連の事業は格差拡大の牽引役となっている。インドでもIT成金は増え続け、格差が問題視され始めた。中国では共同富裕路線から、IT企業が米国で資金集めをすることを厳しく規制し始めた。
世界中で分配が話題になっている。もはや格差の拡大は坐視出来できない段階に至っているのであろう。
格差を示すジニ係数というものがある。ジニ係数は0から1までの数字で表され、以下のように定義されている。
完全に所得分配ができている(格差がない)状態→0
1つの世帯がすべての所得を独占している(最大の格差が生じている)状態→1
0が格差ナシ、1が富を独り占めしている格差の限界を示している。
このジニ係数には「当初所得ジニ係数」と「再分配所得ジニ係数」の2つがある。
当初所得ジニ係数とは、純粋に前年の所得を対象に計算して求められた数値である。
一方で再分配所得ジニ係数とは、社会保障料および税金の控除をおこない、年金や医療、介護などの社会保障給付をくわえた所得から求められる数値を示している。このジニ係数を米国などと比較すると少ないのだが、日本は驚くことに、係数は先進国の平均を上回り、日本が格差社会である事に気付く。
然し、この社会保障などを織り込んだジニ係数は日本ではここ数十年、微増であり、高止まりの状況で、格差は拡大している様には見えない。
視点を変え、これを年齢別に見ると、高齢者に比べ若者のそれは増加して、格差が拡大している。これは日本が高齢者に手厚い社会保障を施しているということ、若者は置き去りになっている、という事である。
以上から日本の格差社会対策は、もっと若者、子育て世代への社会保障の充実を計るべきであると言う命題が見えてくる。
以前、麻生大臣が日本は『中福祉、中負担』を目指すと言っていた。然し現実は日本は「低負担・中福祉」国である。
低負担を中負担にする事で、若者達の社会保障を充実して行くのか、それとも今のままで、高齢者への福祉を減らして行き、若者に振り分けるのか、など税制を取り巻く議論がある。然し、成長戦略が噛まないその様な議論は実り少ないモノになるだろう。
postーコロナは色々と社会の歪みを露呈している。中でも日本社会の生産性の向上と格差社会の問題は課題である。
だからこそ、成長戦略と格差社会是正をマリアージュさせて『新しい資本主義』を我々に示してもらいたい。
岸田内閣はさらに具体的なビジョンを示してくれると期待している。
コロナに密着して行きます。
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