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134 医師が覗き見る「日本社会のイマ」

アメリカの8月の消費者物価指数が発表され、前の年の同じ月と比べて8.3%の上昇となり依然として記録的な水準が続いて、インフレがピークアウトしたのではないかとの観測は打ち砕かれた。米国中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会は大幅な政策金利の上げを継続するものとみられる。

インフレの高止まりの原因について諸子百家状況である。FRBも昨年まではこれを供給制約として軽く見ていた。簡単な事ではないのだ。

ネガティブ思考の人は、人件費に注目する。求人が増え続けて、失業率は低下、雇用はタイト化して、景気は加熱気味である。この失業率を悪化させて、かつ求人率は高く保ちたいという思惑は果たせぬ夢であると言い、FRBの舵取りの難しさを強調する。やるせないネガティブ思考の展開だ。

一方で、ポジテブ思考はテクニカル分析から、近いうちに金融政策の引き締めが効果を見せ始めるという。折れ線グラフが苦手な私には受け入れにくい意見でもあるのだが。

その他、色々とあるのだが、今回は米国の不動産の状況からインフレを眺めてみた。

住宅費が6.2%も上昇している。住宅ローンは6%を超えて、住宅ローン申請件数は64%減少している。原材料費の高騰もあり、住宅は高止まりしており、新規住宅購入も買い替えも手控えられて、賃貸住宅を探す賃借りが増えて、需給面から家賃が高騰しているようだ。家賃の消費者物価指数への影響は3割程度と言う方もいる。これが下げ始めないとインフレがピークアウトしたとは言えないのであろうか?
しかし、一度上がった家賃が簡単に下がるとは思えない。最終的には下げ始めるのであろうが、それにはタイムラグがあるはず。そんな訳で、家賃に関しては遅行指数と捉えるのが一般的なはずである。
消費者物価指数にこだわり、一喜一憂する昨今であるが、この指数には先行指標も含まれるのだが、遅効指数も混ざっており、冷静に判断することが求められるはず。

しかしながら、FRBがこの指数にこだわり、政策金利を振りかざして、金融引き締めに走るのは、これしか方法がないので仕方ないのかも知れない。しかし、現実には密かにデフレが始まっているのかも知れない、そこを見抜く様な意見が聞きたいものだ。医療の世界では知らず知らずに進行する生活習慣病を『サイレントキラー』という。デフレはインフレに比べると痛みを伴わない事が多くて、まるでサイレントキラーの様にも見える。

資本主義は基本、『儲ける自由』でもある。放っておくと、景気は加熱して、手に負えないハイパーインフレに陥り、瓦解してしまう。

しかし、そんな危惧をするのはFRBぐらいで多くは金儲けに猛進してゆくのだろう。

日本が唯一マイナス金利政策を取り続ける事を横目に、大量のドル買い円売りで一儲けを企む人々がいる。

日本は円安メリットを取りたいわけで、コロナによる入国制限を撤廃して、インバウンドで儲けて、貿易赤字を減らしたい。そんな動きが始まっている。

円安メリットに注目の海外投資家は、日本の不動産物件を買い漁り、儲けを膨らます。

円安に眉を顰める政府関係者は、 ....注視する....と繰り返しているのだが、見えてこない議論だ。しかし、黒田日銀総裁の任期も終了するわけで、その後には現在のようなマイナス金利政策を変更する可能性もある。そうなると、多くの痛みも伴うのだが、円買いへの転換になる。
その痛みは、変動金利で借りて不動産を購入していた方々を直撃するはずだ。

インフレは良し悪しが議論されるべきものであろうが、『金儲け』にとっては単なるチャンスという事なのだろう。これが資本主義の本質なのであろうが、ここは物事を斜に見る姿勢も必要になるはず。

勝手に走らせると、資本主義はメルトダウンしてしまうかも知れない。しかし、金融引き締めを急激に行うと、取り返しのつかないデフレが密かに進行する事も念頭に置かなくてはならない。「サイレントキラー」に注目。

post-コロナは複雑です。




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