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#253:生きのびるための事務

息子のテニスの話ばかりなので、今日は少しだけ読書感想文。

「生きのびるための事務」
原作:坂口恭平、漫画:道草晴子

普段から事務作業は決して好きな方ではないが、「生きのびるため」と言われると気になる。


事務のイメージ?

事務と聞けば、日々の雑務をイメージする人も多いのではないだろうか。領収証を集めて経費精算したり、家計簿をつけたり確定申告したり、郵便物を仕分けして返事や対応を行ったり…など。

この本の主人公の坂口恭平さんは著作が40冊以上あり、絵を描く画家だったり音楽も製作する人。

ひと言で表現するなら芸術家。

芸術家って事務ができない、もしくは芸術や創作と事務とは1番縁遠いような感じもする。

ところがその仕事(芸術や創作)をするためには事務が必要であり、有名な芸術家であるピカソもしたたかな事務によりのし上がったようなのだ。

イマジナリーフレンド

事務について主人公の恭平に教えてくれるのは、イマジナリーフレンド(空想上の友達)のジム。

そして、この本は恭平とジムが会話しながら、徐々に恭平が夢を叶えるストーリー。

ジムは真面目に事務の話をするのだが、破天荒でもあり、毒も吐く(よく「それダサい」と言う)独特なキャラ。しかし、ジムの語る事務の話は、為になるけど堅苦しくはなく、芯を喰う。

事務という言葉では分かりにくいのだが、事務という名の「サバイバル術」を書いた本。しかも、それは生活に即した実用的なサバイバル術。

だからタイトルも「生きのびるための事務」。

事務とは

ではジムのいう事務とは何だろうか。

主には2つ。お金の管理とスケジュール管理。
おー、まさに事務っぽい。

なぜお金やスケジュールを管理するかを徹底的に突き詰める。答えは自分が目指す将来の目標を達成するためである。ただそのためにだけである。

この自分のために行う事務は実にパワフルだ。

例えば作家になりたい夢がある場合。
作家になった自分がうまく想像できるだろうか。将来の夢の想像とはどうしても漠然となりがち。

ジムの場合、将来の現実をノートに書き出した上で具体的に想像するように勧める。どういうことかというと、具体的に作家になった生活(現実)を24時間に区切って、それぞれの時間で何をしているかを全てノートに書き起こす。

ノートを書き起こしてみると、作家は毎日3時間から4時間程度かけて執筆するのが作家の現実。作家になるということはまさにこの生活をするということ。この生活を本当に望むかどうか。

またこの生活をどう構築するかを突き詰めれば。夢の実現までのステップが明確になる。ジムは、このような可視化することを事務と呼ぶ。

事務的に行う

その他にも印象に残ったことがある。

例えば「事務的に」という言い回しについて。

Webで調べると、「事務的に」は合理的、冷静という良さもある反面で、冷たいや無愛想というネガティブなイメージもあるし、その方が強い。

だが感情が入ると、人は必要以上に緊張する。また不安や心配でうまく力が発揮できないことも。

そんな不安定な要素を取り除いて、「事務的に」物事を進めることの威力は測り知れない。そのためにしっかりと予め可視化すること、目的にあった手段を選ぶことが事務ということらしい。

やり方が違うだけ

物事がうまくいかない時、人は「なんて自分はダメな人間なんだ。能力が足りない」などと自己卑下することがある。(程度の差はあれども)

しかし、この本に出てくるジムは「それは違う。あくまでやり方(手段)が間違っているだけで、その人自体を否定する必要はない。」と力強く我々の背中を押してくれる。

ただただ正しい手段を選んで、堂々と、そして何の不安もなく事務的に進んでいけばよいのだと。

いまモヤモヤや不安を抱えている人、日々の心配が拭えない人には、実践的な対処療法である事務を知ることが少し役に立つかもしれない。(後半どんどん展開していくサクセスストーリーには、少し作者本人の天賦の才も感じてしまうけど。)

お読みいただきありがとうございます。

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