見出し画像

エネルギーの転換!CO₂はこうして増えた?【解説5】


 今回はこれまでとは少し話は変わり、「人類のエネルギー転換」についてです。
 エネルギーとCO₂(二酸化炭素)には深い関係があるので、簡単にお話したいと思います。

第1回エネルギー転換〜火〜

 人類が初めて手にしたエネルギーは、火が持つ熱と光のエネルギーでした。
 一説には約50万年前頃に北京原人が最初に火を使ったと言われています。
 それまでは、自分のエネルギー、すなわち人力のエネルギーでした。物を運ぶ、木に登り木の実を取る等して暮らしていました。
 しかし、火を使えるようになると、食べ物を加熱調理し、効率良く栄養を摂取することができるようになりました。これにより、消化に必要なエネルギーが脳に回され、脳が発達したと言われています。
 やがて人類は火を利用して土器をつくったり、青銅等の金属を加工する技術を生み出して文明を発展させていきます。
 

第2回エネルギー転換〜石炭〜

 時代は進み、17世紀のヨーロッパ。
 この頃には、製鉄の燃料となる木炭、建物や軍艦に使う建築材等のために木が大量に使われていました。
 18世紀の産業革命による需要増加に伴い大量の木を切り出したことで、この頃ヨーロッパでは多くの森が消失してしまいました。

 そして、木材が手に入らなくなると、代わりのエネルギー源として「石炭」が注目されるようになりました。

石炭

 石炭は、長い年月地中に堆積した植物が圧力や熱で岩石状となった化石燃料です。
 製鉄では、石炭を蒸し焼きにして作られる「コークス」が広く使われ、石炭の需要増加に伴い、各地に炭鉱がつくられました。

コークス

 人類は、この時から化石燃料を使用して、地下にあったCO₂を大気中に排出するようになりました。

第3回エネルギー転換〜電気〜

 その後、18世紀ヨーロッパでは、イタリアの物理学者ボルタが電池を発明したり、イギリスの化学者ファラデーが電磁誘導を発見したり、電気の研究が盛んに行われていました。
 1873年に開かれたウィーン産業博覧会で、ベルギーの電気技術者グラムは発電機を展示したのですが、助手が誤って2台の発電機を出力線同士で接続したところ、1台の発電機が回転し始めると、もう1台の発電機も回り出すというアクシデントが起きました。
 グラムはこの時に電気が動力として使えることに気がつき、発電と電動力が結びついたことで、電気エネルギーの時代が到来しました。
 
この頃には蓄音機、電球、無線電信などが発明され、生活を豊かにしていきました。
 また、19世紀後半には、イギリスの技術者パーソンズが、発電用の蒸気タービンを発明しました。
 石炭を燃料にして水を熱し、蒸気の力でタービンを回転させて発電するというものですが、実はこの仕組みは、現在の石炭火力発電でも使われており、また燃料は違いますが原子力発電でも同じ仕組みが使われています。

経済産業省 資源エネルギー庁HPより


第4回エネルギー転換〜石油〜

 19世紀半ばには、アメリカで多量の石油を採掘することに成功し、世界中で石油事業が広まります。
 石油は、数億年前の水中のプランクトンの死骸等が土砂とともに堆積したものだと言われており、石炭と同様に化石燃料です。
 その後、内燃機関の技術が登場すると、石油は動力としても使われるようになりました。
 20世紀に入り戦闘機や軍艦等の燃料として使用されるようになると、石油の需要が高まり、第二次世界大戦後には、石油関連産業は世界の基幹産業になり、石炭から石油へのエネルギー転換が起こりました。
 さらに20世紀後半には、多くの人が車や飛行機を利用するようになり、石油
の消費量が増えていきました。
 1980年頃には一時的に消費量が減っていますが、2018年までは毎年増加している傾向にあります。

資源エネルギー庁「令和元年度エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2020)
第2章 国際エネルギー動向 世界の石油消費の推移(地域別)より

 第5回エネルギー転換〜再生可能エネルギーへ〜

 炭素が凝縮されている化石燃料は効率の良いエネルギー源ですが、 大昔から地中に蓄積されていたCO₂が大量に放出されることとなり、大気中のCO₂の量が急激に増えてしまっています。
 私たちはこれまでCO₂を排出し続けてきましたが、多くの国々が地球温暖化による影響を重く受け止め、脱炭素(ゼロカーボン)を目指すことを表明しました。
 前回の記事で説明した地球温暖化により生じる問題を避けるために、私たちはこれから化石燃料を使用したエネルギーから、持続可能な再生可能エネルギーへと転換していくことが求められています。

 だいぶ長くなってしまいましたが、いかがでしたか?
 大まかな説明でしたが、人類のエネルギー転換の歴史をたどると、CO₂の排出量が増加した経緯が少しお分かりいただけたのではないでしょうか。
 再生可能エネルギーについては、また別の回で説明したいと思います。
 それでは、また次回をお楽しみに!


※ 北海道の規定により、本サイトではコメントの投稿をご遠慮いただいております。
  ご意見・ご感想につきましては、E-mail(zc.hiyama@pref.hokkaido.lg.jp)にてお願いいたします。