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〈問〉 パリ協定とは何ですか?

〈回答〉

2020年以降の温室効果ガス排出削減等のために合意された協定のことです。2020年を期限とした京都議定書の後継となる枠組みとして、2015年にパリで開催された第21回国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の締約国会議(COP21)において締結されました。世界共通の目標として、世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも2℃(努力目標1.5℃)に抑えることが掲げられています。

〈補足〉

  1. すべての国が参加すること

  2. 具体的な温室効果ガス排出削減の目標値

  3. 途上国への資金援助


〈補足詳解〉

1.
全29条で構成された「パリ協定」の主な内容は下記の通りです。京都議定書において、ヨーロッパ諸国、日本、米国などの先進国または市場経済移行国のみに温室効果ガスの具体的な削減目標が義務づけらていましたが、当協定では途上国を含めた全ての国が削減に向けて取組むことが強調されています。京都議定書では「目標の達成」が義務とされていたのですが、当協定では「温室効果ガス削減・抑制目標の策定・提出」が求められているだけで、「目標達成」を義務としていない点が特徴的です。京都議定書の「目標の達成」に対しては、なぜ先進国だけなのか?と疑問の声が上がったことから、今回は実効性を確保するために、各国が主体的に定めた目標と手法を尊重する形となりました。
パリ協定第2条には、"pre-industrial levels"(産業革命の時)から比較して、二度以上の上昇を防ぐことは世界共通の約束であることが明記されています。

2020年以降の枠組み:パリ協定|外務省
パリ協定第2条|UNFCCC

パリ協定は合意はされたものの、最低でも55カ国が参加し、かつその国々の総排出量が世界全体の総排出量を最低でも55%に達することで、はじめて当協定の効力が発せられることとなっていました。(当協定第21条)
途上国を含めた各国の理解が早々に得られたことから、COP21の翌年には条件を満たし発行される運びとなりました。

パリ協定第21条|UNFCCC

2.
では、日本の排出削減目標はどれほどなのでしょうか?

すべての国が温室効果ガスの排出削減目標を5年毎に「国が決定する貢献(NDC)」として提出・更新する義務があります。日本が2015年に国連に提出した最初のNDCには、「国内の排出削減・吸収量の確保により、2030 年度に 2013 年度比▲26.0%(2005 年度比▲25.4%)の水準にすることと する。」とされており、2030年までに2013年度比較で26%の削減目標を掲げていました。
2021年のNDCで、2030年度までに2013年度比較で46%の削減へと見直されるとともに、パリ協定ではNDCとともに長期戦略の策定が規定されていたことから、2050年カーボンニュートラルに向けた基本的な考え方等を示す「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」が閣議決定されました。

ちなみに他国の削減目標は、フランス・ドイツ・イタリア・EUは55%削減(1990年比)、米国は50 ~52%削減(2005年比)、中国は排出量のピークを2030年より前にすることを目指すこととGDP当たり排出量65%削減(2005年比)、インドはGDP当たり排出量を45%削減(2005年比)、ロシアは30%削減(1990年比)などと、つまり、国ごとに主体的な目標が設定されています。

日本のNDC(国が決定する貢献)|地球温暖化対策推進本部


ちなみに、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」の中で、会計・ファイナンス分野に関連するところでは、サステナビリティに関する開示の充実、脱炭素化イノベーションに取り組む企業への資金支援、サステナブルファイナンス(グリーンボンド、ソーシャルボンドなど)推進のためのガイドラインの改訂・策定などが目標に掲げられました。この辺りは、また後日に詳細を説明させていただきます。

3.
2020年までに約1.3兆円の気候変動対策支援を途上国に対して実施することが合意され、当支援はODAの一環として実施されました。また、2021年6月のG7コーンウォール・サミットでは、2021年から25年までに官民合わせて6.5兆円の途上国支援が公表されました。2050年カーボンニュートラルを達成するために、途上国において多様なエネルギー源・技術を活用した脱炭素の活動包括的に支援していくことが表明されています。その後も、追加支援などにより途上国の活動を支援が計画されています。

気候資金に関する我が国の新たなコミットメント|外務省

〈参考〉