世界の高額賞金レースとロードレースの大会レベルについて
1/24にドバイマラソンが開催された。
この↑ドバイマラソンの展望記事を翻訳・執筆しているときに思ったが、昨年からドバイマラソンの賞金が男女ともにほぼ半減となった。どうやら一時はWMM入りが噂されていたドバイで観客がほぼいないとこともあり(ドーハ世界選手権のように)、そういった大会査定の諸条件が満たせないとWMM入りは難しいようだ。
そのような理由で賞金が昨年から半減したかどうかはわからないが、それでもこのドバイマラソンはハイレ・ゲブレセラシエやケネニサ・ベケレが出場したときを除いて、基本的にはアピアランスフィー(招待出場料)が招待選手に支払われない。そうようなこともあり、もともと賞金が高額に設定されている。
前回は賞金が1〜10位までほぼ半減したのにも関わらず、大会新が出てレースのレベルは維持された。今回も優勝記録は2:06:15と平凡だったが、サブ2:07が11名も出たレースは史上初だった。
ドバイのように賞金が半減されてもレースレベルが維持されているのは興味深い。出場する彼らにとっては優勝賞金が2000万円から1000万円に半減しても、大金であることには変わりないのだ。
ロードレースの大会レベルは何に比例するか?
日本ではハーフのサブ60は頻繁に出ないが、現在北米や欧州のレース(あとRAKハーフ)では、ハーフのサブ59、60が1レース中に連発している。また、東京マラソンこそ2時間03分台の大会記録を持つが、東京マラソンよりも大会記録が速い大会は6大会ある(以下のトップ10は大会記録の速い順にランキングされている)。
① 大会レベルはラベルのグレードに比例するのか?
これらの大会レベルは一体何に比例しているのだろうか。↑のマラソンの10大会のうち、10位のアブダビマラソンを除いて全てがWAゴールドラベルレースである(2020年よりWMM + 数レースはプラチナレースに昇格する)。
大会のレベルはある程度はラベルのグレードの高さに比例するが、それは大会の規模が大きいかどうか(選手招聘に関しての予算がどれだけあるか)にも比例しているといえるだろう。
② 大会レベルは賞金額の多さに比例するのか?
アブダビマラソンはラベルレースではないが、レースレベルは高い。理由は明白で、賞金額が高いからだ。
【2019年12月:アブダビマラソンの賞金】※以下から全て$1=110円で計算
優勝:$100,000(1,100万円・男女ともに)
1〜10位賞金総額:$179,000(1,969万円)
アブダビマラソンの優勝賞金はシカゴ、ニューヨーク、東京、ドバイと同額の10万ドル。そのようなこともあってレベルが高い(強い選手が多く出場する)。このように中東ではレースのラベルに関係なく、賞金の高さに比例してレースレベルが決定している。
ドバイマラソンやアブダビマラソンと同様にレベルが高かったハーフマラソンが、2019年のバーレーンナイトハーフと2018年のリヤドマラソン(サウジアラビア)。
2019年にいきなり新設された高額賞金レース(しかもハーフ)のバーレーンナイトハーフは3月に開催され、優勝賞金はアブダビマラソンと同じ10万ドル(1,100万円)。以下のメンバーが招待された。
男子は41名の招待選手でケニア人とエチオピア人6名ずつ。この中にはハーフサブ60選手が多数いたが、59:42でエチオピアのハディスが優勝(レースの記事)。ラスト100mまではエチオピアのイェマーが先頭だったが、フィニッシュ地点を間違えて2位。彼は$25,000しか獲得できなかった($75,000の損出)。
バーレーンナイトハーフの↑女子は、のちにロンドンマラソンを優勝し、シカゴマラソンで2:14:04の世界新を出すB. コスゲイが優勝。2位には後にドーハ世界選手権マラソンで金メダルを獲得するR. チェプゲティチ、3位は2018年世界ハーフ金メダリストのN. グデタだったことから、レースレベルの高さがわかる。
(賞金総額200万SAR=6,000万円)
そして、2018年2月にサウジアラビアで行われた第1回リヤドマラソン(ハーフがメイン)は優勝賞金が100万SAR = 約3,000万円弱!!(記事)
この大会は歴代最多?の超高額賞金からか、男子のみで行われ、しかも2019年には開催されなかった。レースはエチオピアのゲタネ・モッラが優勝した(彼はその10ヶ月後2019年ドバイマラソンで初マラソン2:03:34の世界最高記録で優勝)。
③ 世界の高額賞金ランキング
このようにレースレベルは賞金額に比例するという考えのもと、高額賞金レースのランキングを以下に作成した(2020年1月現在)。
【備考】
・1位の賞金額でなく、1〜10位の賞金額合計でランキングを作成
(ボーナスの金額は含んでいない)
・順位に対して記録で賞金が変動するソウル、バレンシア等は対象外
・対象は毎年開催の大会のみ = バーレーンハーフとリヤドマラソンを除く
1位:ボストンマラソン(2020年大会賞金リスト)
・優勝:$150,000(1,650万円・男女ともに)
・1〜10位賞金総額:$339,100(3,730万円・男女ともに)
・1〜15位賞金総額:$353,000(男女ともに15位までに賞金が出る)
・世界記録を上回った選手にボーナス$50,000
・大会記録達成者にボーナス$25,000
メインスポンサーのジョンハンコックによる「おもてなし」はとても良い評判であり、賞金も15位まで出るなどサポートが手厚い。
2位:シカゴマラソン(2019年大会賞金リスト)
・優勝:$100,000(1,100万円・男女ともに)
・1〜5位賞金総額:$280,000(3,080万円・男女ともに)
6位以降には賞金なし、アメリカ人の部1〜10位には賞金あり(総額$67,250)
・大会記録達成者にボーナス$75,000(男女ともに)
3位:ニューヨークシティマラソン(2019年大会賞金リスト)
・優勝:$100,000(1,100万円・男女ともに)
・1〜10位賞金総額:$267,000(2,937万円・男女ともに)
・アメリカ人の部1〜5位にも賞金あり(総額$58,000)
ニューヨークシティマラソンはタイムボーナスの幅が広いがコースは急坂があるなど後半が厳しいコース。
(ニューヨークシティマラソンのタイムボーナス)
4位:ドバイマラソン(2020年大会賞金リスト)
・優勝:$100,000(1,100万円・男女ともに)
・1〜10位賞金総額:$192,500(2,117万円・男女ともに)
※ 2019年大会から賞金額が半減された
・世界記録達成者にボーナス$200,000
特例を除いてアピアランスフィー(招待出場料)がないが、地理的にエチオピアに近いこともあり、エチオピアの無名選手がこぞって出る。
5位:ラゴスマラソン(2020年大会賞金リスト)
・優勝:$50,000(550万円・男女ともに)
・1〜10位賞金総額:$185,000(2,035万円・男女ともに)
ナイジェリアのラゴスで開催されるゴールドラベルレース。
6位:東京マラソン(2020年大会賞金リスト)
・優勝:$100,000(1,100万円・男女ともに)
・1〜10位賞金総額:$184,000(2,025万円・男女ともに)
・世界記録達成者にボーナス3,000万円(男女1位のみ)
・日本記録達成者にボーナス500万円(男女国内1位のみ)
・大会記録達成者にボーナス300万円(男女1位のみ)
7位:アブダビマラソン(2019年大会賞金リスト)
・優勝:$100,000(1,100万円・男女ともに)
・1〜10位賞金総額:$179,000(1,969万円・男女ともに)
8位:ロンドンマラソン(2019年大会賞金リスト)
・優勝:$55,000(605万円・男女ともに)
・1〜10位賞金総額:$155,000(1,705万円・男女ともに)
・1〜12位賞金総額:$156,500(男女ともに12位までに賞金が出る)
・大会記録達成者にボーナス$25,000(男女1位のみ)
・男子:世界記録更新者にボーナス$125,000
・女子:男性ペーサーを使わずに大会記録を更新した者にボーナス$125,000
ロンドンマラソンはタイムボーナスの報酬が大きいので、天候が悪くない限りは優勝者はボストンの優勝賞金を上回り、実質$155,000を手にする(キプチョゲ)。
(ロンドンマラソンの↑男子:左、女子:右のタイムボーナス)
9位:ベルリンマラソン(2019年大会賞金リスト)
優勝:€40,000(484万円・男女ともに)
1〜10位賞金総額:€118,500(1,435万円・男女ともに)
・世界記録更新者にボーナス€50,000(605万円・男女ともに)
・男子1位サブ2:03:30もしくは女子1位サブ2:18で€30,000
・男子1位2位サブ2:04:30もしくは女子1位2位サブ2:20で€15,000
10位:バレンシアハーフ(2020年大会賞金リスト)
優勝:€35,000(422万円・男女ともに)
1〜10位賞金総額:€106,500(1,285万円・男女ともに)
・世界記録更新者にボーナス€70,000(844万円・男女ともに)
・男子サブ58:00・女子サブ64:30は更にボーナス€30,000(362万円)
【番外編】ウルトラマラソン
コムラッズ(R=南アフリカランド・1南アフリカランド=約7.7円)
優勝:$36,735(約400万円・男女ともに)
1〜10位賞金総額:$91,407(約1,000万円)
(世界最古のウルトラマラソンである南アフリカのコムラッズも高額賞金レース)
これらの賞金は獲得した賞金額にもよるが、基本的には何割かを大会が開催された国に納税し、さらにそこから選手の代理人へのフィーを何割か差し引く。また、国によっては賞金の何割かを選手の母国に納税しなければならないケースもある。
最高クラスの大会レベルは●●●●●●に比例する
ロードレースの大会のレベルというのは大会新記録の速さでも見ることもできるが、出場選手の層でも判断することができる。例えば、招待選手でサブ2:08が10人いるとか、サブ2:04が4人いるとかそういった具合だ。
① 最高クラスの大会のレベルは●●●●●●に比例する
多くの無名の選手は、例えばドバイマラソンをマラソンキャリアの足掛かりにしようと、このレースに出場することを選択している。このレースで良い記録を出すことによって、その後●●●●●●を手にしたいからだ。
そこで、2018年◼️◼️◼️◼️の●●●●●●について、以下のグラフを参考にしてみる。
【棒グラフ:2018年◼️◼️◼️◼️の●●●●●●●●●】
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