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東京マラソンと名古屋ウイメンズの海外招待選手

楽しみですね。

特に、東京五輪以外でコロナ禍の日本のレースにおいて、世界トップクラスと日本人選手が対決することはなかったので、今日本のマラソンの記録水準が上がっていることを考えると、今回の東京マラソンと名古屋ウイメンズは良い試金石のレースになるだろう。


東京マラソン:ロンドンが秋にあることで男女ともに史上最強メンバー

ここ数年の東京マラソンが良い点は、もうなくなってしまったびわ湖や福岡国際とは違って「海外の豪華メンバーを招集して日本人選手に挑戦させる」という姿勢を貫いていること。つまり、一貫性がある。

福岡国際もかつては世界一を決める大会であったし、平成になってからは2000年に2時間6分台の日本記録が生まれ(藤田敦史さん)、その後もゲブレセラシエ、ワンジルなどそうそうたるメンツが集まっていたが、近年は海外招待選手を招聘できずついには廃止になったしまった。

東京マラソンはレースディレクターの早野氏が、大会の歴史が浅い早くから「1km3:00を切るペース設定」にチャレンジしてた大会。最初のほうは「日本人選手には速すぎる」という声もあったようだが、いつしか、設楽悠太や大迫傑の日本記録やその他の選手の記録ラッシュに貢献。

厚底カーボンシューズが普及する前から「1km3:00を切るペース設定」を貫いていた東京マラソンのおかげで特に男子マラソンの記録水準が大きく押し上げられている事実がある。その波は2021年のびわ湖にも波及したが、2022年の東京は男子ともに世界記録保持者が出場するということで過去最高レベルとなることは間違い無いだろう。

当日の天気予報も晴れで気温も10℃前後とほぼ理想に近い。

今年の海外招待選手は男女ともに過去最高クラスで、今年は昨年と同様にロンドンマラソンが10月開催である影響が大きい。特に男子の海外招待選手は例年のロンドンマラソンのメンツそのものである。

当日は先頭集団のペース設定が気になるがおそらく2:53-2:55/km(5km14:25-14:35)ぐらいだろう(最初の5kmは下り)。

そうすると、中間点を60:50-61:30ぐらいで通過することになるが、キプチョゲやベケレのベルリンマラソンでの世界歴代1位、2位のレース時がそれぞれネガティブラップだったことを念頭に置いておきたい。

キプチョゲのWR時は中間点通過が61:06で、その直後にPMを振り切ってキプチョゲが独走。後半のハーフが60:33とネガティブスプリットでの2:01:39。

・キプチョゲ 2:01:39(61:06 / 60:33 / 2018年ベルリン)
・ベケレ 2:01:41(61:05 / 60:36 / 2019年ベルリン)

今回の東京でもハーフを61:00前後で入って、25kmか30kmからペースアップ、もしくは30kmで集団に人が多いと牽制することもあるので、その時は35kmぐらいからペースアップするのではないかと推測する。

この61:00前後だと思われる先頭集団に、日本記録保持者の鈴木健吾や、福岡国際優勝の吉田祐也などの日本人選手がもし、ついていくことがあれば大きな見所となるだろう(61分切りでの中間点通過だとオーバーペースになるかもしれないが)。

しかし、東京マラソンはこれまで日本勢への忖度はなく、過去にも多くの日本人選手がオーバーペース気味で突っ込んで入っている、ということを考えれば、今回も日本勢と海外勢のガチンコ勝負が見られるかもしれない。

優勝最有力のキプチョゲは千葉県でバブル(隔離中)。プロトシューズのアルファフライ2をケニアでの練習段階から履いているので今回着用する可能性が考えられる。

男子の海外招待選手の中ではシュラ・キタタが2020年のロンドンマラソンでキプチョゲを破って優勝しており、2018年のロンドンではキプチョゲとのデッドヒートに破れての2位。

キタタのコーチであるハジ・アディロ(後列左から2番目)も千葉県でバブル中。その他、エチオピアの男女選手が今回の東京に計7名出場予定(前回の東京優勝のレゲセを除く7名が↑写真に写っている)

女子の優勝最有力は世界記録保持者で東京五輪マラソン銀メダルのブリジッド・コスゲイ。東京マラソンは男子ペーサーが用意されるだけでなく、男女同時スタートなので、彼女が位置するであろう女子の先頭集団は大所帯になる可能性がある(男子エリートの市民ランナーがこの集団で走る予定の人がそこそこいる)女子の先頭集団が中間点を67:00前後で通過すると世界記録更新の可能性に期待したい。

2021年ベルリン3位のヘレン・ベケレ(↑写真左)はオンの契約選手であり、今回プロトシューズのクラウドブームエコー3.0を着用する可能性が考えられる。オンはトラックでの世界チャンピオンのヘレン・オビリと今年から契約しており、オビリが今秋に初マラソンを予定している。そのことを考えてもオンがロード用の新シューズ開発に相当気合いが入っていることと想像できる。

女子は日本の一山麻緒と新谷仁美が日本記録更新やサブ2:20を視野に入れていると思うが、もう1人アフリカ勢以外でサブ2:20を意識している選手といえばサラ・ホールだろう。

ホールは現在38歳であるが、夫のライアンのコーチングでマラソンの記録を2020年12月に2:20:32にまで伸ばし、先月のヒューストンハーフでは1:07:15の全米記録を樹立。マラソン練習の過程でのハーフの好記録だけに、マラソンにも期待が集まる。一山や新谷、ホールの集団はアフリカ勢の先頭集団よりも後ろに位置する可能性が考えられるが、ホールの場合は後半の方が速いネガティブスプリットのなる可能性があると考える(前半69:45前後からのサブ2:19も十分に考えられる)

しかし、東京マラソンは南下する風が吹くことが多く、最後の5kmでペースダウンする例が多い。それを考慮すると当日の風向きと風強さから、前半型のラップも考えられる。

当日はコンディションが良さそうであり、男女ともにマラソンの日本記録が更新される可能性があるが、同じぐらい、世界記録が更新される可能性もあると考えて良いだろう。そうなると、男女ともに日本人最上位選手の順位が何位になるかは気になるところ。大迫傑が2:05:29の日本新を出した2020年の東京マラソンでは大迫は4位だった。


名古屋ウイメンズ:優勝賞金が東京よりも高い(2,900万円弱)

最後に、少しだけ名古屋ウイメンズの海外招待選手についても触れてみる。

今年の名古屋ウイメンズは、それまでの日本人選手に合わせたようなペース設定にならない可能性がある。今年はなんと優勝賞金が25万ドル(2900万円弱)と、東京マラソンよりも(他のどのWMMよりも)高い。

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コロナ禍で去年のシカゴやホノルルなどは賞金額が減るなどといった大会もあったが、名古屋は今回強気に出た。

ドバイマラソンのように、招待料(アピアランスフィー)を招待選手に支払わない大会は賞金が高いケースがあるが、今回の名古屋はそういった形式での海外招待選手の招聘なのだろうか。今回の2位以下の賞金は不明であるが、名古屋ウイメンズが女子のみの開催ということもあってか、一気に世界一の優勝賞金のレースと化した。

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今年の海外招待選手には2:17台の2選手(チェプンゲティッチ、サルピーター)がいるが、特にサルピーターは今年からNNランニングチームに加入し、ケニアのイテンにおいて素晴らしいトレーニングを現在消化している。そして、彼女も今秋以降にはマラソンの世界記録を狙えるレベルにあるといっていい。

前回の東京を2:17:45の好記録で優勝したサルピーターが東京ではなく名古屋に出場するのは、この2900万円弱の賞金を狙ってのものだろう。また、チェプンゲティッチも東京五輪ではサルピーターと同じくうまく走れなかったが、そのレース除くとマラソン7戦5勝(2位×1 / 3位×1)とほぼパーフェクト。2019年の世界チャンピオンであり、2021年のシカゴのチャンピオンである。

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名古屋は東京に比べると海外招待選手の数が少ないのが気になるが、東京の海外招待選手のように抜かりない仕上げで素晴らしいレースを見せてくれることだろう。

日本勢もマラソンの記録水準を上げているが、東京と名古屋で海外勢が一体どんなレースを見せるかは楽しみである。

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