男子マラソン選手の戦績と勝率が示すもの
エリウド・キプチョゲのマラソンにおける強さを明らかにするための物差しの1つとして、男子マラソン選手の戦績と勝率を以下に並べる。
男子マラソン選手の戦績と勝率 2022年3月時点
【参考までに】
・記録は年々向上しているが、勝率で見ると“強さ”がわかりやすい
・半世紀以上前の選手はA.ビキラを除いて除外(調べるのが大変...)
・キャリア6戦未満の選手は除外 / 勝率30%以上の選手のみを掲載
・このリストの選手のマラソンキャリアは、おおよそ14-22戦程度
・キャリアが長いと勝率を保つのは難しい(ピークが限られている)
→ ワンジルがもし生きていたとしたら:勝ち続けたかはわからない
・10勝以上+勝率50%以上なら“超レジェンドクラス”と言ってもいい
・現在は世界選手権/五輪/WMM/ドバイ/バレンシアを含む連勝が難しい
・この10年はロンドンマラソン or 五輪で優勝するのが最も難易度が高い
・マラソンのプロ化(賞金や招待料)が始まった1970年代後半からマラソンのレベルが向上して競争が激化した → 現在最も招待料が高いのがロンドン
キプチョゲが異論無しのマラソンGOAT
GOATとはGreatest Of All Timeの略で、スポーツでは一般的に「史上最高(最強)の選手」という意味で使われる。マイラーのGOATはエルゲルージ、クロカンのGOATはベケレ、そしてマラソンのGOATがキプチョゲある。長距離選手としてのGOATなら、キプチョゲとベケレで票が割れるだろう。
【エリウド・キプチョゲのマラソン戦績】
・勝利数:14(歴代3位タイ)
・勝率:0.875(歴代1位)
・連勝回数:10連勝(歴代最多)※以上3つはサブテン選手が対象
・WMM優勝回数:9回(歴代最多)
・ロンドン優勝回数:4回(歴代最多)
・自己記録:2:01:39(歴代最高)
・非公認記録:1:59:40(歴代最高)
・サブ2:03:3回(歴代最多)
・サブ2:04:5回(歴代最多)
・五輪マラソン連覇(歴代で3人のみ)
マラソンにおいて、キプチョゲがGOATであることはこのような様々なデータからも裏付けがあるといえるだろう。
圧倒的なパフォーマンスのカレンジン族
ケニア男子は2000年以降にコンスタントに以下のマラソンレジェンド選手を輩出しており、ワンジルとマカウ以外の全員がカレンジン族の選手である。
・M.レル(WMM5勝)カレンジン族
・P.テルガト(世界記録)カレンジン族
・S.ワンジル(五輪優勝)キクユ族
・G.ムタイ(WMM2大会の現大会記録保持者)カレンジン族
・P.マカウ(世界記録)キクユ族
・W.キプサング(世界記録)カレンジン族
・D.キメット(世界記録)カレンジン族
・E.キプチョゲ(世界記録 / 五輪連覇 / 勝率87.5%)カレンジン族
・L.チェロノ(2位以内率82.4%)カレンジン族
東京マラソンでキプチョゲと終盤まで競り合ったアモス・キプルトもカレンジン族の選手であり、現在日本の実業団で活躍している“トップ選手”もカレンジン族の選手が大半である。
一方、ビダン・カロキなどケニアのニャフルル出身の選手はキクユ族。昔はカロキやワンジルなどニャフルル出身のキクユ族の留学生や実業団選手が大半だった。
また、ハーフマラソン日本学生記録保持者のモグスはキシイ族、800m世界記録保持者のルディシャはマサイ族とカレンジン族のハーフである。
2000年以降はマラソンにおいて男女ともにカレンジン族の圧倒的な支配が際立っている。
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