見出し画像

【ドラゴンフライ無料プレゼント】の真意と陸上スパイクの希少化 / 価格高騰、厚底シューズの高価格化に対する問題提起。

(※これまでnoteで様々ことを書いてきましたたが、このnoteの内容は長くなります。それでも、できれば多くの人に読んでいただければと思っていますので拡散していただけるととても嬉しいです)

今回は【ドラゴンフライ無料プレゼント】の真意と陸上スパイクの希少化 / 価格高騰、厚底シューズの高価格化に対する問題提起を以下に記す。

私が希少価値の高いドラゴンフライを"誰"にプレゼントしたいと思っているか

なぜ私が希少価値の高いドラゴンフライを手放すのか

ナイキのドラゴンフライというスパイクは昨年の男子5000/10000m、女子5000mでそれぞれ世界新をマークした選手(J.チェプテゲイ / L.ギデイ)、男女10000mで日本新をマークした選手(相澤晃 / 新谷仁美)が着用していた1足。

そのようなこともあり、瞬く間に日本では人気の火がついたスパイクであるが、供給量がそこまで多くなく、入荷後に即売切の状態が長く続いている。

私も何とかして手に入れたものの、スパイクを履いてのトラック練習をまだまだ先に控えていたため、履かないままに保存していた。

そうして日が経っていくうちに、こういった希少価値の高い製品が転売にかけられ定価以上の値段で取引され、そういった状況がやがて経済力を持たない学生ランナーたちに影を落としていることに私は次第に気づいた。

日本でもにわかに起こっている経済格差による競技力への影響。簡単にいえば厚底カーボンシューズや、スーパースパイクを何らかの理由で履けていない人たちは、もうその時点でスタートラインに立った時に遅れをとっている状況である(これは平等な条件ではないと思う)。

そこの溝を少しでも埋めるべく、我々大人が社会に出る前の学生にできることは何なのか、と考えた時に、私は自分が持っているいまだに使われていないレアシューズを学生に無料で提供したいと考えた。

そこで、どのような人に提供したいと考えたか。答えは、
・大切に使ってくれる人
・凄く喜んでくれること
・絶対に転売をしない人
と考えた時に、まだこのシューズを持っていない人、という絶対条件を設定した。

ただ、そんなことはハッキリいってすぐわからない。だから、私は何かしらの理由でこのシューズが入手できていない人がそもそもどういう人なのかを深く考えた


Twitterの拡散力を使って潜在的な深いニーズにリーチさせたい

なぜ拡散を煽るようなやり方にしたのか

この方式は、企業のプレゼント企画やお金配り系の企画で使用される定番の方法である。ただ、ポイントは以下。

・このシューズを持ってないであろう学生にリーチしたい
・そのためにはまず"学生の間"で拡散してもらう他ない=リツイートが必須
・私の発信していることをキャッチしてほしい=フォローが必須

「こんなことをしてフォロワー増やしに躍起になっている」と思われても仕方ないのであるが、この方法はかなり効率的に潜在的なニーズにリーチできる方法だと思っていて、熟考のうえでこの方式を採用した。

目論見は見事的中し多く拡散された。

引用リツイートで必死にアピールしてくる学生が多かったが、それはそうだ。レアシューズだからほぼ全員欲しいだろう。しかし、それらのアカウントの人が本当にそのシューズを持っていないかを見抜くのは困難である。

ただ、いろんなアカウントを辿っていくと、学生らしいツイートを垣間見ることができ、ついに経済的に困窮しているであろう学生のアカウントにたどり着いた。

ここで2点。

当選しなかった学生たちへ
今回当選確率はリツイートした人をみると1/1000程度。その中でも、この人は!という人には、私から今日以降にDMを送ってまた別のプレゼントをする予定(楽しみにしていてください)。

学生へのプレゼント企画は続く
今回は"経済格差が産む競技力の差"をテーマにしているため、プレゼントの対象は経済的に困窮している選手を対象としたが、学生へのシューズプレゼント企画は続く予定。次回は走破タイムの予想の的中者にプレゼントいった、ゲームのような感じで気軽にプレゼント企画に参加していただきたいと思っている。

今回のドラゴンフライのプレゼントの当選者はすでに決定。

ちなみに、ドラゴンフライをプレゼントした学生がどんな人なのかを以下に書きたい(本人の許可をもらって書いています)。


競技層における陸上中長距離種目が"ユニバーサル"なスポーツでなくなり始めた時

私が思う陸上競技の魅力は、種目にもよるが、おおよそはユニバーサルな一面だと考えている。以下にも書くが、ゴルフやフィギュアスケート、乗馬といった学生では限られた人のみが取り組めるスポーツではなく、陸上とはもっとユニバーサルなスポーツである。

ここでのユニバーサルというのは、年齢、性別、(世帯)所得、文化、宗教、人種等に関わらずどんな人でも取り組めるスポーツである、という意味で使用している。

特にトラック種目は使う道具でその大部分を占めるのがシューズになるので、逆にいえばシューズがあれば"誰でも"できるスポーツであるといえる(裸足でも競技参加することができる)

これこそが陸上という古くからのスポーツがこれまで持ってきた魅力の一部であると私は考えている。アフリカ系の選手が短距離/中距離/長距離問わずここまで多く活躍できているのは、野球やサッカーと同じように、陸上にユニバーサルな一面が保たれてきたからだろう。

ただ、それが"競技選手"の間で揺るがされていると感じてしまうのが、タイトルにある通りの【陸上スパイクの希少化 / 価格高騰、厚底シューズの高価格化】で、これが各々のパフォーマンスの差にも影響してくるから厄介な問題だと思う。

今回、ドラゴンフライをプレゼントすることに決めた東海地区のある高校生(A君)はそのシューズを履いて

「5000mで今年の秋には14分台を出して、大学では陸上を続けたい」

という目標を教えてくれた。

とはいえ、彼は去年の県高校駅伝で経済的理由から厚底シューズを買えなかったことで、駅伝の前半区間を走ったチームメイトがレースを終えた後、その選手から厚底シューズを借りて走ったそうだ。

このような話は実は今多くの高校生の間で起こっている事実であるがあまり表には出ない問題なのかもしれない。

「陸上をさせてくれている親には感謝している」

とA君はDMに綴ってくれたが、その一方で、

「3万円のシューズはさすがに高すぎる」

と親に言われ、セールになっていたズームフライ3しか買えなかったそうだ。そして、ズームフライ3で練習を重ね、県高校駅伝の本番を迎えて、本番は違うシューズを履いた、というわけである。

こういった話は実はあまり知られていないが、海外ではよくある話だそうで(とある国の短距離の学生の間でもよくある話だそう)、そういう話を聞くと日本はやはりまだまだ恵まれている国だと当然思ってしまう。

「そんなことがどうした?別にシューズの貸し借りぐらいどこでもあるでしょ?」

と思ってしまう人がもしいたとしたら、この問題の根本はそこではなくて、もっと広い視野で考えなければならない。陸上競技のユニバーサルな視点と、未来の才能が経済的理由でもし今後失われていくことがあってしまうのだろうか、と。


"消耗品"であるランニングシューズの高価格化

問題なのは、2020-2021年にかけて、陸上中長距離種目が希少価値の高い、または価格の高いシューズを使用しなければ、競技力に差がつく状況が生まれてしまっている、という現実である(特に男子の間で。競技選手が皆厳しいトレーニングをしているという前提のもと)。

それに似た状況がトライアスロンである。ただ、トライアスロン自体は多くの人ができるスポーツではないし、陸上とはまた違うとはいえ、こういった経済格差によるパフォーマンス差は、学生や社会人になりたての総じて若年層に影を落としている。

ナイキはヴェイパーフライ4%の発売以降、高価格帯のシューズを立て続けに発売し、あのペガサスでさえも定価の値上げをしている。

それは新しいイノベーションが搭載されている、といった理由があるにしろ、ターゲットが経済的に余裕のある大人向けの商品展開であることは明らかである(ナイキやホカのリカバリーシューズが定価2万円台とは、どこの誰がそんな時代を想像しただろうか)。

このままランニングシューズの高価格化(それでいて耐久性が低いとなると)が進むと、私は好影響も与えるが、悪影響も与えると考えている。

その理由は上部にも書いているが、果たしてこのような状況が今後続いていくことは、誰にとって良いことであり、誰にとって悪いこととなっていくのかをもっと真剣に考えなくてはいけないのではないだろうか。


まだ"ユニバーサルな状況"だった私の学生時代

陸上中長距離種目が希少価値の高い、または価格の高いシューズを使用しなければ、競技力に差がつく状況が生まれている現実があるが、昔には3万円台のシューズもあったし、オーダーでカスタムすると確かにそれぐらいの値段はしたそうだ。

それでも、そこまでお金をかけたって、シューズの差ではそこまで大きなパフォーマンスの差が生まれなかったのも事実である。

私は学生時代にステップでセールになっているシューズで練習を積んで、そのままそのシューズで駅伝に出たこともあるし(全日本大学駅伝とか)、高校時代は陸上を始めたときにステップで買ったクロノディストを3年間使い続けた(インターハイの決勝もそれを履いて2位になった)。

私が、高校2年の終わりに大学で陸上をしたいといった時に、母は「ウチの家のどこにそんなお金があると思ってるのよ!」と、私に言った。

今、私は子供を持つ親になっているからこそ、その言葉の意味をより理解している。私は四兄弟の末っ子に生まれ、確かに当時の私の家族の家計は圧迫されていたと思う。そんな最中に「私立の大学で陸上をしたい」となると、母親は「そんな計画はなかった!」とばかりに先ほどの言葉を私に言った。

確かに、私は高校から陸上を始め「箱根駅伝に出たい」という目標は持っていなかったので地元の大学(立命館大)に進学した。だから、母は私が私立の大学で陸上するなんて思ってもいなかったのだろう。

まだユニバーサルだった状況の当時は、高校入学時に買ったスパイクを3年間大事に使って(25レースぐらい?)、そのまま高3時には全国インターハイの決勝で2位になった。

でも、今の時代に私が生まれていたら、2位になれたかどうかは正直わからないし、2万円以上のシューズを買うなんて、ハッキリ言って想像もできなかった。


合宿に行く時とシューズを買うときに感じた空虚感

私は大学に入学して競技を続けて行ったが、次第に母から「部活でかかるお金は将来自分で返済していくんだよ」と言われ、それから自分が競技でかけるお金の出どころを意識するようになった。

私は奨学金を3つ借りて、大学に自宅から通っていた。1つは高校時代のスポーツでの成績が認められてのもので返済不要の奨学金。あと2つは無利子のものと有利子のもの。大学を卒業してから現在で12年が経つが、現在もその2つの奨学金を返済している。

私は大学2年の春からアルバイトを始めることにした。勉強と部活とアルバイト。ただ、部活の頻度が多く(ほぼ毎日)、そのようなこともあったので、今では考えられないが深夜バイト(居酒屋)を始めたのだ。

それからというもの、睡眠時間が確保できなくなり、競技成績は格段と落ちた。関西インカレのメンバーに選ばれていたが、土曜日の練習に寝坊してしまって(夜勤明け)、当時のコーチに怒られて私は悔しくて涙を流した経験がある。

そして、不調は続き、大学2年の夏には5000mで高校1年の時よりも遅いワースト記録を出してしまい、マネージャーの先輩に「もう陸上やめたほうがいいよ」と言われたが、私がそこでやめたのは深夜バイトだった。

そこから夏合宿で私は立て直して、秋には5000mで14:18の自己新を出した。夏の5000mは15:58だったから、40日ぐらいで100秒ぐらい速くなった。それはそれでいい経験だったし、その走りがあって、その年は全日本大学駅伝(6区区間8位)で走ることができた。

ただ、夏合宿や冬季の合宿、または日体大記録会などで遠征をすると、大きな費用がかかる。シューズを買ったりする中でも感じていたことだが、部活でかかるお金のそのほとんどの出どころは自分が借りていた奨学金だったし、親からもらう小遣いもその奨学金から賄われていた。

そういった自己投資に当時は何か空虚感を感じることもあったが、今では貴重な体験ができたと思っているし、なんやかんやで4年間大学に行かせてくれた親には感謝している。

そして、同じ長距離ブロックには私と同じようにバイトをして競技をしていた選手がいることも知っているので、私はこの学生時代の経験でハードなことを多く学んだし、睡眠時間が減ると競技成績に影響することもそこで大きく感じた。

ただ、当時はセールで5000-6000円のシューズでも十分戦えていたし、タクミセンの時代も型落ちであれば十分そういう状況ではなかっただろうか。


ナイキの”したたか”な販売戦略とシューズの希少化 / 高価格化

・高価格シューズを耐久性の低さ=パフォーマンスが上がっても耐久性に対してのコスパは悪い

このような経験があるので、今回私はシューズのプレゼントをするにあたってそういった私なりの基準で厳選したつもりではある。

ドラゴンフライを持っている人なら知っていると思うが、このシューズは実に耐久性が低い。アッパーはすぐ破れそうなぐらいに頑丈ではなくて、ミッドソールも↑ご覧の通りだ。このシューズを高校3年間のトラックの全試合で履こうとすると、かなり運が良くないとそれは達成できないかもしれない。

このシューズは耐久性が低いうえに手に入りにくく、しかも定価以上の価格で現在メルカリ等で取引が行われている。これは何を意味するかというと、経済的に余裕のある人が、このシューズを何度も使うことができる状況にあり、経済的に裕福でない人たちが憂き目を見ている、いうことである。

このような状況は、ヴェイパーフライ4%が発売した当初も似たような状況だった。希少であるにも関わらず、耐久性が低い(アウトソールの外側からえぐれていく)。でもそんな状況でも定価以上の値段でバンバン買っているのはその大半が比較的、お財布に余裕のある大人だっただろうと想像できる。

それにナイキはしたたかで、カラーを1色ずつ展開していく方法や、供給量を絞り込むやり方で希少化を産み出し、世間の話題をさらった。

それはナイキの素晴らしいマーケティングや、企業努力によるテクノロジーの進化によるものでもあるが、かつてヴェイパーフライ4%も希少化が進み、定価以上の市場価格で転売されていたことを考えると、このあたりから新たな転換期に入ったともいえる。


今後もnote有料記事やシューズの無料プレゼントを学生に行っていきたい

今回書いたようなことは、華やかな箱根駅伝の世界とは無縁の話かもしれないし、もしかしたら似たようなことが私たちの知らないところで起こっているのかもしれない。

私は今後もnoteの有料記事を容易に購入することのできない学生のために、有料記事のプレゼントを継続的に行っていきたいと考えているし、私が少々履き潰したものでよければシューズプレゼントも積極的に行っていきたいと思っている。

また、今後私が執筆していく有料記事の売上の一部はこういった無料シューズプレゼントの費用に充てたいとも考えている。もし、こういった意向に賛同していただけるという人がいらっしゃるようでしたら、この長文を読み終わった証として"スキ"のボタンを押していただけると大変嬉しいです。

長文をお読みいただきありがとうございました。

【この記事への引用リツイートの抜粋】


サポートをいただける方の存在はとても大きく、それがモチベーションになるので、もっと良い記事を書こうとポジティブになります。