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第99回箱根駅伝で慶大・貝川裕亮選手が履いたアンダーアーマーのシューズ

第99回箱根駅伝で10区を走った貝川裕亮選手が履いていたシューズが一部のシューズマニアたちの間で話題になった。また、このUAのシューズは文春オンラインの記事で「箱根駅伝初登場の“謎シューズ”」として紹介された。

今回は、アンダーアーマー初のPebaxミッドソール+カーボンプレートシューズ「Flow Velociti Elite」の誕生までについてのストーリーとシューズの詳細を以下に記す(Flow Velociti Eliteは記事内でFVEと省略)。

この記事のサマリー(要点)🗣
・慶大・貝川選手が履いたのはUA Flow Velociti Eliteという名称
・UA初のPebaxミッドソールを含むカーボンプレートシューズ
・ワープ2.0アッパー+2層ミッドソール+カーボンプレートの構造
・2021年1月頃からプロトがありUAのプロ長距離チームが使用
・2022年6月に北米で限定発売。日本では2023年春に発売予定
・2022年11月のニューヨークシティマラソン女子優勝者が着用
・日本では箱根駅伝以外では東日本実業団駅伝で使用者がいた

UAプロ長距離チーム:ダークスカイディスタンスの結成

現在はOACに在籍しているモーガン・マクドナルド(東京五輪5000mオーストラリア代表)が、アンダーアーマー契約の選手だった2019年の夏のこと。

世界陸連公認代理人(AR)のスティーブン・ハースが米国アリゾナ州フラッグスタッフを拠点としたアンダーアーマーのプロ長距離チームを立ち上げ、同じくコーチのシェイラ・フーリハンと指揮を始めていた頃の話である。
※フーリハンはその後2021年にカリフォルニア州の大学の指揮に戻る。

オレゴン大時代に無双を誇ったエドワード・チェセレクのコーチを2019年から務めているハースは、チェセレクの彼女であるシャロン・ロケディという選手も当時から指導している。

この選手こそが、2022年11月のニューヨークシティマラソンで優勝し、アンダーアーマーの契約選手としてWMMでの初優勝を飾った選手であるが、その時に履いていたシューズ(FVE)が当時、一部の間で話題となった。

(前後してしまうが)時は、2020年のコロナ禍に入り各ブランドはパンデミックで予算をカットせざるを得なくなった。

そして、全米学生チャンピオンなどが北米でプロ選手になるための契約交渉のテーブルにおいて(予算カットの影響から)契約履行が難航する。

そんな中で、オンが勢力拡大を図り米国コロラド州ボルダーにプロ中長距離チームのOACを結成。

その他に水面下で動いていたのがアンダーアーマーである。

2019年から準備を進めていたプロ長距離チームのダークスカイディスタンスを正式にローンチさせたのである。

その後、UAは陸上プロチームのブランディングを刷新し、高地のアリゾナ州フラッグスタッフ拠点のダークスカイディスタンス(長距離)と、UA本社のあるメリーランド州ボルチモア拠点のボルチモア800m(800m専門)と、ボルチモアディスタンス(長距離)をそれぞれ結成して今に至る。


FVEのプロトタイプは2年前(2021年1月)から存在

ニューヨークシティマラソン優勝で注目を浴びたロケディとともにダークスカイディスタンスを実績面で率いるのがウェイニ・ケラティである。

ケラティはロケディがニューヨークシティマラソンで優勝する前日に開催された全米5kmロード選手権で優勝。ケラティはダークスカイディスタンスの結成時にドラフトNo.1として期待されていた選手である。

余談であるが、ケラティはエリトリア出身の選手。ケラティがU20世界選手権に出場した際にアメリカを訪れ、帰国せず亡命。その後、ニューメキシコ大在籍時に全米学生クロカンや全米学生選手権の10000mで優勝し現在はアメリカ国籍を取得している選手である。

ロケディやケラティほどのトップレベルの選手を抱えるダークスカイディスタンスであるが、チームの選手たちがFVEのプロトタイプを着用していたのが2021年1月頃からである。

このnoteを書いている私は2019年からこのUAのダークスカイディスタンスを注目していたので、このプロトを当時からくまなくチェックしていた。

この2021年1月という時期は、アルファフライが発売されて(2020年3月)から1年弱の時期であり、アディオスプロ2(2021年6月)やメタスピードスカイ(2021年4月)が発売される少し前の時期である。


UAは期待の2足を2022年6月にゲリラ発売

それから1年以上の時間をかけてFVEのプロト開発が進んだが、ケラティはこのプロトを履いて2021年の全米5kmロード選手権を制している(=2021、2022年の2連覇)。

UAはこの辺りの時期からUA初のスーパースパイクのShakedown Eliteの開発にも取り掛かっていたが、そのShakedown EliteとFVEは2022年の全米選手権とオレゴン世界選手権を見据えて2022年6月にゲリラ発売された。

UAは2022年の8月1日にこの2足の新作についてプレスリリース(英文のみ)を出しており、北米のみのゲリラ発売であったことと、この2足が2023年のグローバルローンチを予定していることを記載している。

Flow Velociti Elite:UA北米公式サイトより
Shakedown Elite:UA北米公式サイトより

なお、先述したようにどちらも北米のみの先行販売であったため、日本で現在は発売していないが、グローバルローンチは2023年春に予定されている。

米国では現在どちらも購入可能。

※ ちなみにスパイクは購入済み…

2023年各メーカー最新スパイク記事でレビュー予定…


Flow Velociti Elite:シューズの概要

FVEはまだ履いたことがないのでシューズの概要のみ記載。

東日本実業団駅伝でアスリートエージェントの全選手?がFVEを着用。日本人選手では、慶大の貝川選手を含めても、まだUAユニフォームの選手、またはUA関係者しか着用していない、というところ(日本未発売なので)。

2022年の秋にFVEの海外レビューがいくつか挙がっていたが、基本的なシューズの概要は以下。

・UA「ワープ2.0アッパー」採用
・2層のミッドソール
(上層:超臨界ビーズ発砲Pebax / 下層:Flowフォーム→直アウトソール)
・フルレングスカーボンプレート
・厚さ:前足部28mm / 後足部36mm(ドロップ8mm)
・重量:216g(26.5cm)
・販売価格(北米):250ドル
・ユニセックスサイズ

ワープアッパーは最近のUAのランニングシューズ「Flow Velociti Wind 2」でお馴染みのアッパーで、さらにそのアッパーに磨きをかけた印象(軽量化されていることだろう)。

また、2層のミッドソールの上層は超臨界ビーズ発砲Pebax、見た目としてはサッカニーのPWRRUN PBと同じようなビーズ発砲の軽量高反発フォーム。

下層はFlow Velociti Wind 2でお馴染みのFlowフォーム。こちらは安定性の高いフォームで下層に置き、アウトソールのゴム部分がなく、ホカのアウトソールのゴム部分がないシューズに似たような感じで、これも軽量化のため。

2層のセパレート(別々の)ミッドソールといえばアディダスのボストン10や、この度発売されるミズノのウェーブリベリオンプロなどが挙がるが、それぞれのジオメトリ(構造)がやマテリアル(素材)が微妙に違うので、全て同じような履き心地になるわけではない。

以上が、UAのFlow Velociti Eliteについて私が現時点で知っていることである。私は「各メーカーのカーボンシューズ計25足の比較(2022-2023年新作:21足)」を今月にnoteに公開する予定であるが、その後、春にこのFlow Velociti Eliteを履くことを楽しみにしている(そのnoteにFVEを追加予定)。


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