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中厚底、厚底カーボンシューズの2021-22年にかけてのカットアウトの変化と傾向

2021年の春にアシックスがメタスピードスカイを発売したことによって、さらに開発競争が激化している各ブランドの厚底カーボンシューズ(またはカーボンロッド、グラスロッドを挿入したシューズ)

各ブランドでミッドソール素材やアッパー、カーボンプレートの剛性などが微妙に違う。今回の記事では軽量化を目的としたミッドソールのカットアウト(くりぬき)が各ブランドのシューズによってどのような違いがあるのかをみていく。

厚底カーボンシューズの頂点、ナイキのヴェイパーフライネクスト%の特徴は厚底であるのにも関わらず200gを切る軽さ。アルファフライでも210gほどと厚さ40mmギリギリのシューズの軽さとは思えない。ミッドソールをカットアウトすることで軽量になるものの、それによって損なわれるのが安定性である。各ブランドその塩梅を探りながら開発を進めている。

2021年発売のものは中足部の中央をカットアウトしたものが多かったが、2022年発売に向けて開発されているシューズはさらに大幅なカットアウトがみられ、さらなる軽量化を目指している。今後は前足部(もしくはそれと中足部)とそれ以外の部分のミッドソールが前後に分離しているセパレート型の厚底カーボンシューズが定番になっていくのだろうか。

(プーマのファストRニトロエリート。αflyのようにセパレート型)

ナイキ


ヴェイパーフライネクスト%2

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大きなカットアウトは特になし。それでいて200gを切る軽量性はさすが。今後のアップデート版のプロトは未確認。


アルファフライ

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大きなカットアウトは前足部の中央。FLY PLATEが見える。

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横から見ると、ミッドソールが前足部とそれ以外でセパレートになっていることがわかる(カーボンプレート以下のミッドソール下部)

アルファフライはヴェイパーフライネクスト%2よりも厚みがあり安定性が高いとはいえないので、マラソンなどの長距離のレースで失速してしまってからはヴェイパーフライネクスト%2よりも失速してしまった(であろう)人をみる。アルファフライのように反発性がトップクラスでも安定性を削いでいればそれはある意味「諸刃の剣」いえる。

また、ヴェイパーフライネクスト%2よりもアルファフライのほうが剛性が高いということも見逃せない。そういう意味ではより剛性の低い非カーボンプレートシューズのストリークフライは5 / 10km以外のレース用にはなりにくいのかもしれないが、テンポ走やロングラン、インターバルなど幅広く練習に使用することができると考えられる。


アルファフライ2(プロト)

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(出典:インスタグラム / protosoftgram

アルファフライ2は前作と同じく前足部の中央にカットアウトがあり、カーボンプレート以下のミッドソール下部がセパレート。アップデートしているのが中足-後足部にかけて中央がよりカットアウトされているのと、メタスピードスカイのアウトソールのように小さな穴を開けている。

さらにもう1点のアップデートはエアポッドの真下にZoomXのミッドソールが微量ながらも追加されていること。これによって前作と比較して前足部のクッション性や接地感がやや異なるのだろうか。

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(アルファフライは↑エアポッドの真下にZoom Xはない)

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(出典:TF XC Running / エアポッドの真下に微量のZoom X)

日本の駅伝でチラホラ見られるアディオスプロのカスタムソールでお馴染みのDSPアウトソールのこんなプロト↑もリークされているが、前作よりも軽そうにみえる。2022年秋頃に発売予定のアルファフライ2が最終的にどのような形として完成するのが楽しみであるが、定価が高いんだろうな...


ストリークフライ

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(出典:インスタグラム

2022年3月発売予定(日本の発売日は不明)ストリークフライに大きなカットアウトが無いということは、おそらく安定性が高いということが考えられる。ZoomXよりも硬度が少し硬いTPE ZoomXという種類のミッドソールをフルレングスに使用。カーボンなどのプレートは挿入されていないが、安定性を高めるために中足部にTPUのシャンクが入っている。

この動画によればドロップは6mmで重量は159gぐらい(サイズ不明)だそうだが、ミッドソールが少し違うということでどんな走り心地か気になるところ。これは流石にヴェイパーフライネクスト%2よりも高い価格で販売されることはないと思うので、タクミセン8のように手頃な価格であれば積極的に買いたい。


プーマ

ディヴィエイトニトロエリートレーサー

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東京五輪女子マラソンで銅メダルを獲得したプーマ契約のモリー・サイデルが着用していたのがこのシューズ。2021年末に別カラーが入荷されたが、それまでは日本ではほとんど在庫がなく、持っている人は少ないと思う。カットアウトは2021年の東京五輪までの主流ともいえる中足部の中央にカーボン丸見え。


ファストRニトロエリート

2022年上旬に限定数での発売が予定されているセパレート型のミッドソールタイプの1足。前足-中足部にかけてNITRO ELITE、後足部はEVAということで安定性がどうなってるかは履いてみたい。ただ、ディヴィエイトニトロエリートレーサーが26,400円(税込)で販売されており、ファストRニトロエリートは、もちろんそれよりも高い定価なんだろうな...


アディダス

アディゼロアディオスプロ

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(出典:価格.comマガジン

パックマンみたいな前足部のアウトソールが特徴的。中足-後足部の中央がやや窪んでいるもの大きなカットアウトはなし。


アディゼロアディオスプロ2

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中足-後足部にかけての窪みは前作と同じとして、カーボンロッドが見える中足部の内側のカットアウトが特徴。内側は前足部とそれ以外でセパレートなので半セパレートというところ。アルファフライ2のプロトと同じようにアウトソールには小さな穴。

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また、中足部をカットアウトしている側と逆側(外側)の微妙なカットアウト部分もある(↑カーボンロッドの真下の中足部の影になっている部分)この部分も窪んでいる。このようにアディオスプロ2はアディオスプロからのカットアウトのアップデートが2箇所あるが、実はそこまで重量が変わっていない。

アディオスプロのヒール厚が39.0mm、アディオスプロ2のヒール厚が39.5mmと微増していることもあるが、アディオスプロ2はかかとのサポート性が上がっている気もするので、カットアウトしたものの重量にあまり変化がないのには納得である。現時点ではZoomXよりもやや重いので、今後ライトストライクプロを超える反発性と軽量性を両立するフォームを使用することになれば面白そう。


アディゼロタクミセン8

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タクミセン8は5 / 10km用の中厚底のグラスロッドということでカーボンロッドを使用しているアディオスプロやプロ2よりも剛性が少し低い。アディオスプロ2と同じ中足部の部分がカットアウトされている(半セパレート)

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さらに、前足部の外側もグラスロッドがチラ見できるほど少しカットアウトされている。タクミセン8はこれらのカットアウトだけでなく中厚底らしくVFネクスト%よりも軽いということが特徴。

5 / 10kmの距離の駅伝やロードレース以外には山上りの5区や向かい風が多い区間などに良さそう。それよりも、剛性が低いということで汎用性が高く、トレーニング用として適度なクッション性と反発性のバランスということでかなり優秀なシューズだと感じている。


2022年以降のアディダス?

どんなアップデートを施してくるかが興味深い。プライムXのような非公認シューズもあるが、40mmギリギリでセパレート型にしてきたらそれはそれで面白いが、ライトストライクプロのフォームの感じからして、前足-中足部の剛性を上げてアンビションのスパイクみたいな感じの厚底シューズ(プーマのファストRニトロエリートのように)中足-後足部にかけて安定性の高いフォームを使用する可能性も考えられる。どうだろうか?


アシックス

メタスピードスカイ / エッジ

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大きなカットアウトはみられないが、中足-後足部にかけてやや窪んでいる。アウトソールのアシックスグリップのグリップ性能が高いので穴が多く大きい。メタスピードエッジよりもやや分厚いメタスピードスカイの重量は200gを切り、厚さ30mm以上の厚底カーボンシューズの中でも超軽量といえる部類。しかし、アディオスプロやネクスト%のように35mmを超える厚底ではなく、どちらかというと中厚底寄り。それもあって軽量性が高い。


メタスピードスカイ / エッジ2(プロト)

アウトソールは前作とあまり大きく変わらないように見える(大きなカットアウトはない)

シューレースがアルファフライやドラゴンフライ使われている感じのものにアップデート(アシックスでこのタイプは初か!?)見た目はもしかしたらメタスピードスカイ よりも1、2mmほど厚みが増しているのか?それと、アディオスプロ2のようにミッドソールの外側が前足-中足部にかけてやや窪んでいる。そして、カーボンプレートの形状が(というか湾曲のカーブが急になっているように)変更されているように見える(カーボンプレートの最下部がシューズのちょうど中央にあるように見える)


アシックスの2022年以降は?

アシックスの40mmギリギリのカーボンシューズはまだ見ないので、いつかアルファフライタイプのセパレート型のカーボンシューズが開発されるのだろうか?

ミズノ

ウエーブデュエルネオ2

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25mm未満の中厚底シューズでカーボンプレートよりも剛性の低いウエーブプレートを使用。そこまで深みのないカットアウト部分は中足部より後ろの薄緑の部分。


RL-40(プロト)

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(出典:Twitter / @iydkzk_daapiyo

箱根駅伝で帝京大3区の遠藤大地が着用。アディオスプロ2やタクミセン8と同じように中足-後足部にかけ内側をカットアウトしている半セパレート型。また、外側にも黒いプレートらしきものが丸見え。RL-40の40は40mmギリギリということだろうから、厚さ含めてアディオスプロ2に似ている。

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おそらくRL-40はデュエルネオよりも硬いプレートを内蔵しているだろう。それはまさに、タクミセン8とアディオスプロ2との関係性と似たようなものである。


ニューバランス

フューエルセルRCエリートv2

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大きなカットアウトは中央部分のみ。


SCトレーナー / SCペーサー / SCエリートv3

40mmを超える厚さのSCトレーナーは2022年のニューバランスのSC3兄弟の1つ。この3つのSC(スーパーコンプ)シリーズはそれぞれ、

・SCトレーナー(超厚底 / ↑右下の写真の右)
・SCペーサー(中厚底 / ↑右下の写真の左)
・SCエリートv3(厚底 / ↑右下の写真の真ん中)

の3つがあり、3つとも「エナジーアーク」という新しいテクノロジーが採用されている。独特なカーボン形状+ソールの縦長カットアウトの複合的な進歩をニューバランスは、そう名付けたのだ。

これによって軽量化されていることは容易に想像できるが、安定性はどうなっているのだろうか。特にフューエルセルのフォームは柔らかくふんわりしているのが特徴なので、レースペースでの履き心地や安定性が気になる。


サッカニー

エンドルフィンプロ2

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中足-後足部がやや窪んでいるが、大きなカットアウトは無し。


エンドルフィンプロ3

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(出典:YouTube / Running Warehouse

2022年6,7月頃に発売予定のエンドルフィンプロ3は前作よりも厚みが4mm増している(プロ3:39.5 / 31.5mm / プロ2:35.5 / 27.5mm=どちらも8mmドロップ)それでいて、プロ2から数グラムしか重量が増えていないのは中央部分+前足部中央の縦長カットアウトの賜物といえる(アッパーもアトムニットみたいに通気孔が大きく、前作よりも軽くなっている)

このようにアシックスがまだ手をつけていない40mmギリギリの厚さのカーボンシューズをサッカニーは今年発売する予定。その走り心地が気になるところ。このように、前作よりも厚みを増やす場合、重量が大幅に増えないことが重要である。


エンドルフィンスピード3

2022年6,7月頃に発売予定のエンドルフィンスピード3は前作と厚みが変わらないが、アウトソールはプロ3とは違って大きなカットアウトがみられない。プロ3よりも汎用性が高いトレーナー / レーシングなので、反発性や軽量性よりも安定性が高いということが重要である。


ホカ

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(出典:インスタグラム / Roadtrailrun

2022年4月発売予定のカーボンX3はミッドソールが今作から超臨界発砲EVAに変更されているが、カーボンプレートがわずかに見えるぐらいで大きなカットアウトはみられない。


チャイナ

私が持っている中国のカーボンシューズで、2021年に発売されたものを並べていると、形はやや異なるもののカットアウトされている部分が全て中央でアウトソールのパターンも似たり寄ったりであることがうかがえる。

左から
・Health(新海尔斯) / High Racer(飙速)
・Zhong Qiao(中乔) / Feiying PB 1.5(飞影PB 1.5)
・Li-Ning(李宁) / Feidian Elite 2.0(飞电 Elite 2.0)
・C.General(初将) / 骉碳1.0(英語の製品名無し)
・Do-Win(多威) / Speedstar SE(神行者SE)
・Xtep(特歩) / 160x 2.0

さて、中国カーボンシューズは2022年にどんなカットアウトがトレンドとなるのか?

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(出典:インスタグラム / Xtride Runining

2021年秋に発売されたシューズであるが、Anta(安踏)の「骇浪」は中足-後足部にかけての縦長カットアウト。

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2022年発売予定のシューズだと361°の「飞飚」がプーマのファストRニトロエリートにそっくりのセパレート型。今後の40mmギリギリカーボンシューズはこういったセパレート型が主流になるのか。または、ニューバランスのような縦長カットアウトなのか。今後も注目していきたい。


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