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世界陸連がレギュレーションを修正 ①:αFLY“初期版”は使用不可 ②:2020年4月30日以降はスパイクを含む全メーカーのプロトが使用不可

世界陸連(以下、WA)は1月31日、レギューレーションの修正内容を公開した。

現在の長距離界を席巻しているヴェイパーフライ(以下VF)ネクスト%は引き続き使用できるが、キプチョゲがINEOS 1:59で使用した“αFLY初期版”は今回のレギュレーション修正により1/31以降から使用できない。また、4/30以降は各メーカーのプロト使用も不可となる(エリート選手以外は使用可)。

以下、
・αFLY初期版 = ミッドソール厚さ40mm以上・プレート3枚
・αFLY修正版 =ミッドソール厚さ40mm以下・プレート1枚
とする。

世界陸連の調査チームは引き続きシューズの研究を行い、シューズ性能の不均衡によって競技の公平性が損なわれていると判断すれば今後規制がさらに強化される可能性もある。

【サマリー:記事の要約】
競技で使用されるシューズは
・ミッドソールの厚さ40mm以下(スパイクは30mm以下)まで
・内臓プレートは1枚まで(複数のプレートを同じ平面以外に配置するのは禁止)

※VFネクスト%はOK、αFLY初期版はNG
2020/4/30以降に使用するシューズは、大会で使用する日から4ヶ月前までに市販されていなければならない(4/30以降はスパイクも含めてプロト使用不可
※エリート選手は新製品を4ヶ月間レースで使用できない=練習では使用できる
プロト使用NGであるが、個人の足の特徴に応じたカスタムシューズは許される(外反母趾が痛い等の医療的なカスタムものはOK。例:ミムラボ)

世界陸連:新レギュレーションに関するプレスリリース

※今回のWAの発表を受けて、日本陸連は競技規則(日本語)の修正をするはずなので、日本陸連が今後発表する公式な日本語の競技規則を後日、再度確認することをオススメします。


オリンピックイヤーの変革

WAはシューズの開発競争が加熱する2020年のオリンピックイヤーに、これまでになかったシューズのレギュレーションを作成した。

私は木曜日にTwitterで以下のようなアンケートをとったが、ネクスト%の使用をこれまで通り継続させて欲しいと願う人が多い一方で、αFLY初期版がこれまでのシューズと比較して飛び抜けた性能を持つシューズとして認識されていることを再確認した(36%の人たちは少なくともそう思っているだろう)。

WAがプレスリリースで発表したセバスチャン・コー会長の声明は以下である。

「スポーツシューズ市場全体を規制するのは私たちの仕事ではないが、競技中のエリート選手が使用するシューズが不当なアドバンテージをもたらさないように、エリート競技における競技性を維持することが私たちの義務である」
 「オリンピックイヤーに入ると、これまで使用されてきたシューズを禁止することはできないと考えているが、今現在使用されているシューズよりも先の領域をいくシューズ(プロトタイプ)の使用を禁止することによって、競技性を保つために一線を引くことができる」

オリンピックイヤーで加熱するシューズの開発競争に対して、WAはレギューレーションを設けることによって、競技性を保つ上での適切なバランスを見出した。

INEOS 1:59でキプチョゲが使用した「αFLY初期版」は1/31以降使用できないが、今回のレギュレーションを受けて修正されるであろうαFLY修正版が流通されることが予想される。競技審判はエリート選手が競技規則に反しているシューズを着用していると判断した場合、レース終了後にそのシューズを検査することができる。

αFLY(それが初期版か修正版かはわからない)はナイキの契約選手にはすでに配布されており、東京オリンピック全米マラソン選考会、東京マラソンで使用される予定だった。また、VFネクスト%はかかとの高さが約40mm、前足部の高さが32mmで、平均して高さ36mmと今回のレギューレーションに対して問題なく使用できる。

果たしてナイキは4/30までにαFLY修正版やプロトスパイクを市販するのか?

2/1 AM10:20 追記:ナイキはすでにミッドソール40mm以下、カーボンプレート1枚のαFLY修正版を用意している。

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(出典:Rolows

ナイキの契約選手は「αFLY修正版」をメーカーが直ちに用意できる場合はそのプロトを4/30までの大会で使用することができる。

「αFLY禁止」と言っている人の発信は推測である。彼らはαFLYを手に取っていないし、αFLYの実際の寸法を知らない。(BTCエリートのPeter Bromka)


他社はナイキに追いつくことができるだろうか?

アシックスのプロ選手のサラ・ホール(2019年ベルリンマラソン5位:2:22:16)は、レギュレーション変更の意思を発信してきた1人であったが、今回のレギュレーション修正を受けて安堵のツイートした。

全メーカーのエリート選手は、東京オリンピック全米マラソン選考会や東京マラソン、ロンドン、ボストンなど4/30のレースまではレギュレーションに反していないプロトタイプの使用が可能である。しかし、4/30以降にエリート選手が新製品を使用したいのであれば、そのシューズが4/30までに発売されている必要がある

※4/30以前に発売されたシューズは、例えば4/20発売でも4/30以降にエリート選手は使用できるが、4/30以降の大会ではその大会開催日の4ヶ月前に販売されたシューズを使用しなければならない(=プロト禁止

このような状況で5月やオリンピックを迎えることになるが、各メーカーはVFネクスト%に迫るシューズを4/30までに発売しないと、オリンピックの舞台ではナイキのシューズを履く選手が表彰台を独占することも考えられる。

レギュレーションでは4/30以降はプロト不可とされているが、シューズのカスタムについては医療的なものであればという条件付きで認められる。

例:外反母趾で市販品が足に合わず、オーダーメイドで微調整をする。
(医療的とあるのはそれを:例えば“外反母趾”を証明する書類がないと、オーダーシューズの使用はいけないのだろう。オーダーシューズ使用は申請制になる?)

しかし、アッパーとミッドソール以下を組み直す、いわゆるハイブリッドシューズに関しては規制する、とレギュレーションには明確な記載がない。例えばナイキ以外のアッパーで、ミッドソール以下をVFのものに組み合わせてカスタムするというハイブリッド(ステルス)が使用できるのかはまだハッキリしていない。

ハイブリッドシューズの使用に関しては今後も議論の余地がありそうだ(WAがこのハイブリッドシューズを今後規制の対象とするかもしれない)


各メーカーは新製品の発売日をどうするか

αFLY初期版(ミッドソール40mm以上、プレート3枚)は1/31より即時使用禁止であるが、αFLY修正版や他社のプロトタイプは4/30までに市販されない限り、4/30以降に即時使用できない。

・ナイキ:αFLY修正版(ミッドソール40mm以下、プレート1枚)や、プロトスパイクに関して発売時期をいつにするかが注目される。3月にαFLY修正版を発売するとの噂もある

・ブルックス:ハイペリオンエリートは2/27に発売予定。それ以降の大会で誰もが問題なく使用できる。

・スケッチャーズ:スピードエリートハイパーが2月発売。問題なし。

・サッカニー:6/1↑に販売を予定していたエンドルフィンプロをオリンピック選手に使用させることを想定した場合(ジャレード・ウォードが全米選考会を突破した場合)、4月30日までにリリース日を前倒しする必要がある。

・アシックス:上に同じ。メタレーサーが4月30日までに発売されるかどうか。

・ニューバランス:上に同じ。フューエルセルレーサー(ミッドソールの高さが40mm以内ならば)が4月30日までに発売されるかどうか。

・ミズノ:箱根駅伝で数名が着用した新製品をオリンピック選手や、8月30日までのレースに出場するその他のエリート選手に使用させることを想定した場合、4月30日までにリリース日を前倒しする必要がある。

・アディダス:ヒューストンハーフで使用されたプロトはミッドソールの厚さが40mmを越えていれば使用不可。

・ホカ:2/29の東京オリンピック全米マラソン選考会でスコット・ファウブルが使用予定のカーボンXロケットのプロトを市販するかどうか。


新しい情報が入れば随時、追記していきます。

私は1/15にこのようにツイートしています。なぜ今回プロト禁止する(=4/30以降に使用されるシューズは4ヶ月前に市販されていなければならない)必要があったのかについては以下の過去記事を参照してください。

以下は2/1公開の最新の記事です。


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