【weekly post】難治性の癌である膵癌、早期発見に取り組んだ尾道市医師会の仕組みづくり
GW前に、こんなnoteを書きまして
思いのほか多くの方に見ていただけたので、せっかくならなんかこれに類するものを定期的に出したいなと思いました。
ってわけで、今回から毎週1本ずつ面白い取り組みや事業機会など何か考える際のきっかけや、何某かの役に立つかもしれない面白そうなことをピックアップして分解したり、周辺情報を調べたりしつつまとめていこうと思います。
今回は、Newsweek「世界の最新医療2021」から、気になったものを1つピックアップしました。
テーマは、"膵癌"です。
膵癌は早期発見が難しく、他の癌と比較しても5年生存率が低いことでで有名な気がしています。
そんな早期発見が難しい膵癌において早期発見を実現しようとした取り組みがありまして、2007年に始まっています。
今回は、その仕組みなどについてまとめながらヘルスケア領域での機会を簡単に掴めればなと思います。
膵癌とは
膵癌とか膵臓癌とかそういった名称で呼ばれる癌です。
場所としては、9割以上が膵臓から十二指腸に分泌される消化液の通り道である膵管にできるものです。
そもそも症状が出にくい上に、膵臓自体が他臓器や血管に囲まれており、そもそも発見することが難しいかつ、早い段階から浸潤・転移してしまう特徴も持っているため、太い動脈に浸潤してしまったりすると主要の大きさに関わらず手術困難になることから7割程度で手術による治療が不可能とされているようです。
下にグラフの画像を入れていますが、ガンの部位別5年生存率を見ると11.1%とダントツで低く、ステージ別で見てもステージⅠであったとしても5年生存率47.5%となっており、ステージが進むごとにこの確率は大きく下がっていて、ステージⅡで19.2%、Ⅲで7.3%、Ⅳで1.8%となります。
ステージⅠの時点でも他の部位の全症例での5年生存率より低い状況ですが、他の部位と比べてみてもより一層早期での発見が重要であることがわかります。
膵癌早期診断プロジェクトの仕組み
当時尾道市医師会の会長であった片山壽先生を中心に2007年に開始された取組で、近隣の病院と役割分担を行い患者を紹介し合う仕組みである「病診連携」を軸とした取組でした。
具体的な取組内容を説明する前に、そもそも、なぜ尾道市が病診連携できたのかという話なんですが、実は尾道市、高齢化率が高くて、2015年時点で全国平均26.6%に対し34.2%となっています。これはかつてから続いているもののようで、これを問題視し、1994年に尾道方式と呼ばれる地域医療機関連携体制を作っていたようでした。
そんなわけで、すでに病診連携が構築されていたことを背景に膵癌早期発見プロジェクトは進みます。
具体的な取組内容としては、下記の通りです
事前準備として、連携施設においては膵臓診察に関する危険因子の啓発を行い中核病院では、詳細な検査が可能になるような画像診断の有用性の啓発と実施方法の講習を行い、実務的には、地域連携施設が初期スクリーニング、中核病院が詳細検査と言ったような分担を行なっています。
中核病院に行っても膵癌と確定しないケースもあるためその場合は経過観察になるわけですが、その際は、中核病院だけでなく地域連携施設と役割分担を行い経過観察を行います。
膵癌早期診断プロジェクトの成果
(↑2007~2017年6月末までのデータ)
そもそも膵癌の5年生存率がめちゃくちゃ低いので、ぱっと見すごく低い印象を持つんですが、広島県の膵癌平均5年生存率が8.5%であるのに対して、10ポイント程度上回る成果を上げていることがわかるかと思います。
また、早期発見が非常に難しい膵癌ですが、膵癌確定であった555例の内、約1割に当たる51例がStageⅠ以下での発見となっています。
全国での膵癌早期診断プロジェクト導入ケース
5年生存率がダントツで悪い膵癌を早期発見できる仕組みとして、全国に導入されていっているのかと思いきや、そこまで急拡大しているという感じでもなさそうで、2018年時点で、大阪北部・岸和田地区、山梨地区、鹿児島地区、埼玉地区、神奈川川崎地区、静岡磐田地区で展開されています。
たまたま調べている中で埼玉県本庄市で上がっていた市長への手紙の中で本庄市で導入されていない理由が書かれていました
「「尾道方式」につきましては、膵臓がんの早期発見による5年生存率に、有効であるとの情報は伺っておりますが、現時点では、膵臓がんの検診が厚生労働省の指針に含まれていないため、本市では導入しておりません。」
厚労省の指針として含まれるか否かは、各地域でこの仕組みが導入されるか否かに大きな影響がありそうだなと思います。
まとめ
ヘルスケア領域だと予防や早期発見が大事という話をよく聞きます。一方で、予防については、一部の健康意識の高い人を除くと課題が顕在化していない状況のため積極的に取り組むことは比較的難しいなと感じています。特に日本の場合、保険制度もしっかりしている中で、仮に病気になってもそこまで大きなお金が必要にならないことも一定関係しているのかなと考えたりもします。
コロナ禍で、多少健康意識が高まった人もいると思うので、社会的なきっかけである程度意識が高まっていく可能性はあるだろうと思いつつも、そのスピードはおそらく遅いと考えると、膵癌に限らず自力でやってしまうくらい健康意識は高くないものの、もう少し改善があれば予防活動を行なってみたいと思っているような人から順々に活動できる仕組みを作っていくことが大事なんじゃないかと思っています。
早期発見できる仕組みは、尾道方式のような病診連携のような医療機関連携等による部分も大きいので、なかなか入り込みづらいと思うのですが、受診させる仕組みや経過観察に関する仕組みは現状のハードルを下げるような仕組みを作ることは可能なんじゃないかと思ったりします。
ターゲットにもおると思いますが、受診に関しては多くが時間やコストがネックになっていて、進んでいないのではないかと思いますし、経過観察については、時間の部分がネックなんだろうと思います。
遠隔医療によって時間の改善は進んでいくと思いますが、その遠隔医療でできる内容を拡張することや、そもそも病気を予防したり、早期発見するために今よりも安く、早く、簡単(多分やすくが一番大事なんだろうと思います...)に体の状態を把握できる仕組みは、今後スタートアップが出てくると少しずつではあると思いますが改善していくんだろうと思いますし、日本国内でもまだまだ可能性があるところだと思うので引き続きみていきたいなぁと思っています。
領域的に可能性があるかどうかという話はさておき、価格感や簡単さに関してはすごく面白いなと思ったUKのスタートアップをめちゃくちゃ簡単にご紹介して終わろうと思います。
引き続きファーストラウンドを中心に投資検討を行なっておりますので、ヘルスケア領域に関わらず、資金調達のご相談や事業ディスカッション等のご連絡お待ちしております!(ご連絡はTwitterDM等からお待ちしております。)
・企業名:TestCard.com(@UK)
・調達金額:$9.1M
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参考(順不同)
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