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【weekly post】2021年11月建設・不動産領域Pre-Seed~SeriesA資金調達in欧州

2月末にアップした12月のUSに引き続き、今回は、11月の欧州を見ていこうと思います。

前回欧州を取り上げてから結構時間が空いてしまったので、欧州の建設不動産領域の特徴を簡単におさらいしておくと、USと比較して、シンプルに建物や構造物を作ったり管理したりというよりかは、少し環境的な要素を織り込んだスタートアップが出てくるのが欧州の特徴といった感じになります。

11月でいうとまさに環境貢献をするような事業で、かつ、あまり多く登場する機会のない建材系があったので後ほどご紹介できればと思います。

また、日本でいうところのスペースマーケットやサマリーポケットのようなサービスがPre-SeedやSeedで出てきたいたのは印象的でした。

それでは早速、11月の欧州の調達を見ていきましょう!

11月のサマリー

今回のweeklyの対象になる企業は下記の通りで、該当する企業の数は11社でした。(いつも15社前後なので若干少なめです。)

■対象企業

所在地:オーストリア、スペイン、ドイツ、トルコ、イタリア、UK
対象領域:建設・不動産領域
企業ステージ:プレシード~シリーズA
ファイナンス時期:2021年11月1日~11月30日まで

2021年11月欧州建設不動産領域 ステージ別分布(シリーズAまで)

前月、先々月と比較しても明確にPre-Seedの割合が増えてます。件数が少ないので割合が強く出ているというのもあると思うのですが、絶対数ベースで見ても、4社となっており、いつもだと2社ほどなのでいつもの倍くらい出てきているような感じです。

Seed自体の割合はいつもと変わらないので、Seedが減ったというよりかは、SeriesAがググッと減ったのが今月と言った感じでしょうか。

ステージ別平均調達額

SeriesAは、10月と比較すると落ちてる感じがするんですけど、そのほかの月も含めて考えてみると、ほぼほぼ平均的な値かなと言った感じです。
むしろ、シードの調達額がやや減少気味といった感じでしょうか。
ただこれも、全体的に低い水準だったというわけではなく、1社桁が違う会社があり、そこが引き下げた感じで、そこを抜くと$3.12Mほどになるので、いつも通りの水準かなと思います。

領域別調達企業数と調達総額

今月は、全体の約半分に当たる数の企業が不動産関連ソフト系ということでかなり偏りがあった1ヶ月でした。
ファイナンス総額が極端に小さいのは、ほとんどの企業が調達額非開示だったためです。

今月最高額の調達になったのは、建設関連ソフト系でシリーズA調達を行ったオーストリアの企業になります。
後ほどご紹介できればと思いますが、MicrosoftのM12から調達を行っています。

それでは今月は上記の中から3社をご紹介します。

①【衛星データのリアルタイム3D化AI】blackshark.ai(SeriesA)

blackshark.ai

設立:2020年
所在地:UK
今回調達金額:$20M
調達総額:$20M
リード投資家:Point72 Ventures(スティーブン・コーエンのファンド)、M12(Microsoft)
サービス内容等
衛生画像の情報をもとに3Dデータを構築するAIを開発している企業で、かなりの容量がある不明瞭な衛星データをほぼリアルタイムで処理し画像に含まれる建物などの高さを認識したり、道路や線路などのインフラの意味情報(semantic information)も正確に抽出できるようでした。

建設文脈でご紹介させていただいてるんですが、ユースケースとしてはかなり幅広く考えられているようで、地域の周辺環境分析(住宅or商業地、屋根の種類、エアコンの有無など)だけでなく自動運転やフライトシミュレーション、森林破壊の監視、保険、スマートシティ、人道支援なども想定されていました。

投資家のマイクロソフトとの関わりとしては、航空ファンの方であればご存知のタイトルかもしれませんが「Microsoft Flight Simulator」に搭載されている機能を開発したというところでのつながりがあるようでした。
このラウンドで、Google Earthやエアバス、Ycomなどなど有名どころの元CEOや共同創業者が顧問的なポジションで参画しているようです。

②【産業廃棄物を活用した高耐久性コンクリート代替素材】Material Evolution(Seed)

Material Evolution

設立:2017年
所在地:UK
今回調達金額:$3.5M
調達総額:$3.4M
リード投資家:Playfair Capital
サービス内容等
独自のジオポリマー技術*と独自のアルゴリズムを活用し持続可能な建設よう素材の開発を行う企業です。
すでに産業廃棄物95%で構成された素材を開発しており、通常利用される同等のセメントと比較した時により耐久性が高く(通常の10倍強力で耐久性は5倍程度)、炭素消費も85%削減できているようです。

勉強不足で全く知らなかったのですが、セメントは世界のCO2排出量のうち8%を占めるようでかなりの削減インパクトになるのかなと思いました。
またこのラウンドでは、イギリスの環境やエネルギー系の行政機関BEISが後援する公共機関のInnovateUKからも助成金が出ているようでした。

③【賃貸物件高付加価値化SaaS】Zazume(Seed)

Zazume

設立:2021年
所在地:スペイン
今回調達金額:$2.8M(€2.5M)
調達総額:$2.8M(€2.5M)
投資家:Picus Capital、Nordstar、Plug and Play Tech Center
サービス内容等
ヨーロッパ、中東、アフリカのAirbnbの元マネージングディレクターによって設立された企業で賃貸物件に特化し、借り手探しから契約、不動産管理までを一括で行うSaaSをベースに作られており、内見管理や物件在庫管理、入居者審査、物件稼働率や収入、メンテナンス状況の確認までを行うことができます。

また、このサービスの特徴が、通常の業務効率化SaaSという面だけでなく、物件の付加価値強化もできるところにあるかなと思います。
入居者向けのマイページ的なページ内では入居のためのオンボーディングや生活する上で必要になる便利屋やクリーニング、ベニーシッターなどを依頼できるマーケットプレイス、トラブルが発生した時の連絡、近隣イベントなどの情報提供といったような、生活をより便利にする機能が提供されるので、Zazumeを使っていない物件に比べ、入居者に対する付加価値が高まった状態になります。

編集後記

2つ目で取り上げた企業は環境文脈を織り交ぜていることが多い欧州の建設不動産スタートアップの特徴そのもののような会社で、欧州らしさがあったなぁと思いました。

個人的にすごく面白いなと思ったのは最後に取り上げたZazumeでした。
これまで不動産の管理SaaSはかなりの数出てきていて、客付けから契約完了までであったり、収益性管理を行うようなSaaSはありましたが、、高付加価値化するといったものは割と珍しいような感じがします。(過去に高齢者向けにフォーカスしてるものはあったけど、あれは自社物件だったか、借り上げてるかな気がする..)

サービスつきのアパートを0からスタートアップとしてやろうとすると、めちゃくちゃコストもかかるし時間もかかるけど、客付けをしたい不動産オーナーをうまく手を取りつつ(SaaSのサービスを入り口に、これを使えばより高く?貸せる的な?)自社はソフト面にフォーカスすることで、短期間で大きく成長できる可能性がある状態にしてるというのは、とてもスタートアップぽいのかなと思いました。

日本に住んでいると、持ち家ではなく賃貸の人もかなりの数いるので、賃貸として貸し出す用に企業や個人が不動産投資をするのは比較的当たり前な感じがしてるんですが、海外だと、あまりメジャーではない地域もあるようで、例えばオーストラリアなんかだと、

これまでオーストラリアでは、家を持つことは成功者の証しであるという文化が根強く、賃貸住宅にはある意味不名誉なイメージがつきまとっていました。また、オーストラリアの賃貸住宅市場では伝統的に、個人オーナーが賃貸住宅を所有し、個人的に賃貸契約を結ぶ上に契約期間が1年と短く、居住に当たっても借り主の自助努力が求められてきました。

オーストラリアで最も注目されている不動産投資「Build-to-Rent」とは(EY Oceania)

上記のような文化が根付いており、日本のような環境とは異なる国もあります。が、その環境にも昨今の金融政策などの影響等もあり変化があるようで、

しかし、不動産価格の急上昇により住宅取得が困難になってきていることに加え、入居者の間で質の高いプロフェッショナルな管理や安定した入居期間への欲求が高まり、賃貸が安心で便利なライフスタイルの選択肢の1つとして多くのオーストラリア人に浸透していきました。

オーストラリアで最も注目されている不動産投資「Build-to-Rent」とは(EY Oceania)

同じサイトからの引用続きで申し訳ないのですが、参考にめちゃなるのでもう一ついくと、日本の賃貸と異なりBuild-to-Rentは、単なる賃貸というよりかはZazumeのようにサービスを提供がされていることが1つのポイントになっており、

ケータリング、コンシェルジュ、ビジネスラウンジ、ペットケア、カーシェアといった、入居者に提供されるアメニティにあります。これにより、これらのサービスを提供していない個人所有の賃貸住宅と比較して、平均で最大10%の賃料プレミアムを得ることができます。

オーストラリアで最も注目されている不動産投資「Build-to-Rent」とは(EY Oceania)

各国全てがその状態かは分かりませんが、少なくともオーストラリアではサービス付加により10%も賃料が上がるとのことなので、オーナーからするとかなりのインパクトになるのではないかと思います。
Zazumeの場合、賃料の1.5%~4.9%の利用料になっているので10%賃料が上がるのであれば許容範囲内のサービスなのではないかと思います。

日本でこのサービスがはまるか?と聞かれると、正直何故海外で入居者が付加サービスに対して10%を支払っているか次第かなと思っています。
日本の場合割と住宅街の周囲にクリーニング店があったり便利屋さんの数もそれなりにあったりすると思いますし、各サービスごとにサービスの質の高さも一定担保されてるかと思います。
なので、海外でサービスにお金が払われている理由が、探したり・依頼する簡単さや質の高さの担保であったりといったような日本だとすでにサービスがついていなくても満たされている理由なのであればしんどいかなと思う反面、ターゲットを絞ってやると(高齢者、都心から離れた郊外居住者、若者などなど)ならではのニーズが出てくるような気がしていて、そういったところで満たされないニーズを見つけられるとすごく刺さりがいいものができるのではないかと思ったりしました。

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