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「きる(着る)は生きるの大部分」ですが、「合成繊維が着るの大部分」です。洗濯でのマイクロプラスチックの発生について。

ナイロン、ポリエステル、アクリルを3大合成繊維と呼びます。現在はこれらは石油から作られて、自然界にはない化学構造をしているため生分解しません。合成繊維を洗濯すると細かいプラスチックの繊維が水中に出てきます。6 kgの洗濯で700,000本を超える繊維が放出されると言われています。

繊維の話はマイクロプラスチックの発生源としても重要ですが、我々が環境に優しかったりビーガンに生きるには食の次に避けて通れない話題ですので少し詳し目に書きます。

天然繊維とは

繊維とは直径に対して長い糸状の形状のもののことを良い、直径が数十マイクロメートル程度のものをいいます。天然繊維の歴史は古く1 万年以上前とされており、先人達により衣類だけでなく様々な道具として使用されてきました。種ある天然繊維のなかでも麻(リネン)、綿(コットン)、絹(シルク)、羊毛(ウール)は 4 大天然繊維と呼ばれています。このうち麻と綿は植物からできていてセルロースという食物繊維の一種でできています。絹と羊毛は動物由来の繊維でタンパク質からできています。

化学繊維① 再生繊維・半合成繊維

1万年の歴史を誇る天然繊維と比較すると化学繊維の歴史は短いです。初めに作られるようになった化学繊維は再生繊維・半合成繊維と呼ばれるものでした。

綿や麻はセルロースでできていますが、紙もセルロースでできています。セルロースの長さが短くて数mmだったらパルプになって、長さが長くて数cmだと繊維になります。綿の繊維は綿花からわずかにしか取れませんが、パルプは木から大量に取れる上に廃材や廃紙からも取れますます。化学を修めた人なら安価なパルプから高価な綿を作りたくなります。化学構造は同じものですから。

この錬金術を可能にしたのが以下の方法です。パルプを薬剤で水に無理やり溶かして溶液(ビスコースと言います)にして、それを紡糸します。糸になったセルロースをレーヨンと言います。セルロースの束を一回溶かしてもう一回セルロースの糸にしているのでこれを再生繊維といいます。再生してはいますが、レーヨンはセルロースのため植物由来でその時の構造を留めているため生分解します。

また、パルプを溶かすときに末端の構造を薬品で化学的に一部改変してニトロセルロースや酢酸セルロースにしたものを半合成繊維と言います。セルロースそのままで紡糸するレーヨンよりも長い繊維ができ、糸の表面の濡れやすさも抑えられるので絹のような肌触りが得られるのが特徴です。半合成繊維も天然由来の骨格を留めているため、自然の中で分解します。

化学繊維② 合成繊維

人類が化学構造から全く新しく創造した初めての繊維はナイロンです。1935年デュポンは高分子合成の研究からナイロンを見出しました。それは強さ、弾力性等の全ての物性で既存のものを凌駕していました。ナイロンは「石炭、水、空気」から派生し、「鋼のように強く、蜘蛛の巣のように細い」と宣伝されて、爆発的にヒットしました。発売当初ナイロンのストッキングは絹のストッキングよりも価格が高かったのですが、伝線のしにくさで絹を凌駕しており大人気となりました。

その後、第二次世界大戦が終わって石油化学の時代が訪れると様々な繊維が発明されていきます。ポリエステル、アクリルなどが発明されていきます。ポリエステルは我々が飲料容器にしているペット(ポリエチレンテレフタラート)、ポリトリメチレンテレフタレートなどの総称です。アクリルは透明板の代表格であるアクリル板やアクリル絵の具ようなプラスチックを繊維にしたものです。ここまでくると完全にプラスチックの糸という感じがしますね。

ナイロン、ポリエステル、アクリルを3大合成繊維と呼びます。現在はこれらは石油から作られて、自然界にはない化学構造をしているため生分解しません。

合成繊維のメリット

合成繊維の最も優れた点を化学の視点からお話すると素材(化学構造)選択の自由度ではないでしょうか。天然繊維の化学構造は完全に決定しており、絶対に動かせません。しかし、合成繊維は化学構造レベルから人が自由に決めて作れるために様々な繊維が作れます。

これを例えていうならばあなたがレゴブロックでお城を作ろうとします。糸がブロックのパーツで、お城は衣服です。天然繊維は色も形も決まって動かせないパーツ、合成繊維は色も形も自由自在に動かせるパーツです。どちらがきれいなお城が完成するでしょうか?これはもはや安いとか高いとか強いとか弱いとかいう話じゃないんですよね。残念ながら天然繊維に勝ち目は薄いというのが答えだと思います。

強くしたければそういう化学構造に、見た目をきれいにしたければそういう化学構造に自由に変えることができます。このため、耐久性、速乾性、価格、あらゆる点で天然繊維を凌駕する合成繊維が作られています。

また、合成繊維は製造に綿や羊毛のように広大な土地を必要としません。羊毛の様に生産で温室効果ガスのメタンが大量に排出されることもありません。安価で、丈夫で、温かい、という特徴があります。マイクロプラスチックの問題を除けば環境に優しい側面もあります。

現在、日本で生産される繊維の大部分が合成繊維ですし、我々が着ている衣服はほとんどが完全な合成繊維か合成繊維を混ぜた天然繊維となっております。

合成繊維のマイクロプラスチック

糸くずフィルターというものがあるように洗濯をすると糸がほつれて細かい繊維が水中に出てきます。合成繊維を洗濯すると細かいプラスチックの繊維が水中に出てきます。6 kgの洗濯で700,000本を超える繊維が放出されると言われています。

これらは洗濯機の糸くずフィルターや下水処理場で補足されますが、完全に補足することができずに海へ流れてしまいます。

対策

対策は二つあります。一つはなるべく天然繊維、再生繊維、半合成繊維を着ること。天然繊維から出る糸くずは生分解性があるのでマイクロプラスチックにはなりません。ただし、合成繊維もマイクロプラスチック以外の観点で見ると環境に優しいと言えます。

もう一つは糸くずフィルターの強化です。現在商品化されている良いフィルターはありませんが(見つけたら更新します)、盛んに検討はされているようですのでじきに良い製品が出てくると思います。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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