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「サーキューエコノミー」とは何かを分かりやすく解説します

はじめに

サーキュラーエコノミーを日本語に直すと「循環型経済」になります。日本では昔から「循環型社会」という言葉を政府をはじめとして多くの文書で使われていて、近い概念になります。しかし、日本で考えて教えられている「循環型社会」とエレンマッカーサー財団が提唱している「サーキュラーエコノミー」は少し違います。後者の「サーキュラーエコノミー」はより最近に考えられて、より具体的に踏み込んだアプローチを提案しているのでこのブログではそれを分かりやすく説明したいと思います。

これまで提唱されてきた循環型社会

これまで提唱されてきた循環型社会とは、なるべくリサイクルをすることで、廃棄と天然資源の消費を減らそうという試みでした。しかし、サーキュラーエコノミーはもう少し踏み込んだ経済システムを提案しております。

サーキュラー(循環型)とリニアー(線形型)の違い

まず、サーキュラー(循環型)とリニアー(線形型)の違いについて説明します。
お手本となるサーキュラー(循環型)の究極は自然界のエコシステム(生体圏)とされています。自然界に「ごみ」は存在しません。植物は土の栄養と太陽のエネルギーで育ち、動物は植物を食べます。動物が死んだら死骸は安全に土の栄養となって、また植物を育てます。ここに「ごみ」はなく、あるのはエネルギーと物質の循環だけです。このシステムは長く続いて、これからも、もっとずっと長くつづくでしょう。これが循環型のエコシステム(生体圏)になります。

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ところが我々は線形(リニア―)型経済を採用しています。線形型経済とはすなわち、資源を採掘して、生産して、廃棄します。我々が新しい自動車を購入すれば古い自動車を廃棄します。我々がこれを繰り返すたびに限りある資源が消費されて、有害あるいは自然を汚染する「ごみ」が排出されます。これは化学物質やプラスチック、放射性廃棄物を含みます。資源からゴミが一直線で、多くの物質がリサイクル(すなわちサーキュラー=循環)されません。このため、循環型と比較してこれを線形(リニアー)型経済と言います。この経済システムが理論上長く継続することができないのは明らかです。
エネルギーも、現在はエンジンや発電の大部分が化石燃料を採掘して大気中に二酸化炭素を放出するという方法で獲得されてます。これは線形型経済に該当します。また、二酸化炭素を排出しないからクリーンと主張されている原子力発電ですが、ウランやプルトニウムを採掘して放射性廃棄物が出ます。これも線形型経済です。

この現在線形型で回っている経済を循環型にしようと言うのが「サーキュラーエコノミー」になります。具体的に何をどうしていこうかという話は以下の通りです。

経済(エコノミー)をサーキュラー(循環型)にする方法

例えば食品などのパッケージは現在は石油由来で生分解しないポリマーでできていますが、将来的には植物由来で生分解性のポリマーにすれば堆肥化可能です。なお、環境のためにはパッケージのような使い捨ては極力減らすがいいと思いますが、ここは必要に駆られて使い捨てなければならないものの例え話です。

では冷蔵庫などのように耐久性が必要とされて、全て堆肥化できない商品はどうすればいいのでしょうか。これらの製品は貴重な金属やプラスチックを循環させるために、修理や交換で製品の性能を維持して使える期間を長くする努力をします。現在採用している「廃棄」してあたらしいものに「置換える」習慣を改めて、分解して修理や交換することも目的に製品を設計していく必要があります。

所有の概念を見直す必要もあります。我々は既に製造業者から製品ではなく使用するライセンスを買うという所有を社会実装するだけの技術を持っています。

線形型経済と循環型経済の比較

図はEUが目指す循環型経済1)より引用

さらに上図の「生物的材料」と「工業的材料」を合わせて修理やリサイクルに戻ってくる製品を設計できるか考えてみてください。「生物的材料」とは例えば木材や綿布、植物由来生分解性プラスチックなどの生分解性の素材を指します。一方、「工業的材料」とは金属、ガラスなどの無機材料全般と生分解しないプラスチックを指します。例えば、オフィスの机や椅子は木や布またはプラスチックと金属でできています。これらを修理交換を繰り返して長く使いますが、いよいよ使えなくなったときは木や布または生分解性プラスチックなどの生分解するものと金属などの生分解しないものに、分解します。これをそれぞれ、堆肥化(コンポスト)して農業に用いたり、新しい製品を製造したりするのに使います。

エネルギーも、現在は化石燃料の燃焼や原子力発電で得られています。これは限りある資源を消費して廃棄物を出す線形型経済です。サーキュラーエコノミーであるためには、太陽、風力、水力のような再生可能エネルギーを使う必要があります。

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なぜ今サーキュラーなのか?

人類は誕生してからほとんどの期間を今日の食事の心配をして、けがや病気が即死刑宣告という暮らしをしていました。戦争や犯罪を含む暴力もひどく、争いごとに殺し合い以外の解決を持っていませんでした。私たちの重要は関心事である「今日のご飯は何にしよう?」という選択を、人類が持てるようになったのは極めて最近の話で、長い長い期間を「いつ食料が底をつきるか?」を心配して生きてきました。

産業革命以降、人類は膨大なエネルギーと物質を手にし、人類の三大厄災であった飢餓、病気、暴力を克服しました。しかし、我々はあまりにも長い期間この厄災と共に生きてきたので、脳や身体がこれらに備えるように造られております。

スーパーに行けば食べられる以上の食料を買っては腐らせ、身体が本当に必要な量以上のものを食べては太るのは、あなたのせいではなく飢餓と共に生きてきた人類の習性の名残です。人間のこれらの習性により我々は現在、過剰に大量生産、大量消費、大量廃棄の時代を迎えています。

このため、様々な環境問題が地球レベルで報告されてそのうちのいくつかについては我々の経済の持続可能性を脅かすと警告されています。詳細は「環境破壊による地球の限界「プラネタリーバウンダリー」と、深刻な農業の環境問題について説明します。」に記載したので興味がありましたらどうぞ。このため、継続を目指すのであれば、地球の有限性を意識した経済への方向転換を迫られております。

また、世界中で、「飢えの心配を経験した世代(団塊)」→「高度経済成長を経験した世代(新人類、バブル、氷河期)」→「物心ついた時には大量消費とネットインフラが確立されてた世代(ゆとり)」のパワーチェンジが起きております。特に「物心ついた時には大量消費とネットインフラが確立されてた世代(ゆとり)」は「飢えないこと」「経済成長をすること(お金を稼いで消費をすること)」よりも「自分らしさ」「家族や仲間」などと共に「地球環境問題」を重視しており、この世代が力をつけてくる中で、政府や企業も持続可能性を打ち出す必要に迫られております。

その他の補足

適用範囲:サーキュラーエコノミーを目指すことができる産業分野は、製品、インフラ、設備、サービス等があります。ほぼ、すべての産業部門に適用することができます。

メリット:企業の立場で考えると実装にはコストがかかるとも言えますが、限りある資源を有効に使うということは長期的に求められる技術であることは間違いないですし、循環型の製品やサービスは消費者にとっても魅力的になるはずです。

原則:エレンマッカーサー財団はサーキュラーエコノミーの原則を以下の様に定めております。
自然の生体圏を再生(Regenerate natural systems)
製品と原料を使い続ける(Keep products and materials in use)
ゴミと汚染を出さない設計(Design out waste and pollution)

まとめ

自然界に「ごみ」は存在しません。あるのはエネルギーと物質の循環だけです。我々は資源を採掘して、生産して、廃棄する線形型経済を採用しています。この経済システムは有限の資源を消費するので理論上長く継続することができません。

このため、資源の消費と廃棄をゼロにすることを目指し、サーキュラーエコノミーという概念が生まれました。サーキュラーエコノミーでは自然で分解しない素材を用いないこと、製品を捨てずに使い続けること、堆肥化可能な素材と使い続ける素材を分けてリサイクルできるように設計すること、再生可能なエネルギーを使うことでエネルギーと物質を完全に循環させて、資源の消費と廃棄をゼロにすることを目指しています。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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1)https://eumag.jp/feature/b0517-2/


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