プラスチックごみはたった25%しかリサイクルされていません。脱プラスチックのために知っておきたいリサイクルの実情。
プラスチックのリサイクル率84%のうち56%がサーマルリサイクル(熱利用)で二酸化炭素にしてしまうので実質リサイクルとは言えないという残念な状況です。加えて残りの4%のケミカルリサイクルの内訳を見てみると最も使われているのは「高炉・コークス原料」となっており1)、ほぼ熱リサイクルです。プラスチックのリサイクルを困難なものにしているのは種類の豊富さです。
はじめに
日本のプラスチックのリサイクル率は84%と言われています1)。一見、紙のリサイクル同様に非常に高く見えます。しかし、新しく作られる紙は半数以上が古紙由来なのに対し2)、新しく作られるプラスチック製品はほとんどが新品の石油からできています。今日はこのからくりについてお話します。
廃棄ヒエラルキーの記事3)を読んでいない方は、環境問題にとってリサイクルよりも優先順位が高いことが書いてありますので併せて読んで頂けると嬉しいです。
プラスチックの3つのリサイクルの方法
プラスチックのリサイクル方法は大きく分けて3つあります。
1.マテリアルリサイクル
2.ケミカルリサイクル
3.サーマルリサイクル
この3つのリサイクルをもう少し詳しく説明します。
1.マテリアルリサイクル
マテリアルリサイクルとは材料リサイクルという意味です。例えばPETボトルを溶かして糸にしてポリエステル繊維に再加工するのはマテリアルリサイクルに該当します。リサイクルに資源とエネルギーを使いますが、ある程度原型を留めてちゃんと再利用されていると言えます。
2.ケミカルリサイクル
ケミカルリサイクルとは化学リサイクルという意味です。高温で熱分解して合成ガスや分解油などの本来は石油から作る化学原料にしたり、または化学的に分解してモノマー(石油とプラスチックの中間の物質)に戻すなど、他の化学物質に転換して再利用します。車や時計に例えると一度完全に分解してまた再構築するイメージです。
廃棄ヒエラルキー的な考え方に立てばそのままの再利用は資源とエネルギーを使うリサイクルより優れています。同様にプラスチックの原型を留めたままのマテリアルリサイクルは、ケミカルリサイクルよりも資源とエネルギーを使用しないので優れており、ケミカルリサイクルはマテリアルリサイクルに劣ると言えます。
3.サーマルリサイクル
サーマルリサイクルとは熱リサイクルという意味です。具体的にはプラスチックを燃やして、得られる熱を電気や温水などとすることです。日本ではサーマルリサイクルもプラスチックのリサイクルとされていますが、これはリサイクルではなく「熱利用」という別の方法だというのが世界的な考え方です3)。
リサイクルと言えないプラのリサイクル
殆どがサーマルリサイクルという現状
日本のプラスチックごみの行く先としては、
マテリアルリサイクル 23%
ケミカルリサイクル 4%
サーマルリサイクル 56%
未利用(熱利用なしの焼却や埋立て) 16%
と言われています1)。リサイクル率84%のうち56%が熱リサイクルで実質リサイクルとは言えないという残念な状況です。
ケミカルリサイクルの真実
加えて4%のケミカルリサイクルの内訳を見てみると最も使われているのは「高炉・コークス原料」となっています1)。
ここで鉄の作り方を簡単に説明します。鉄は地中にある鉄鉱石(酸化鉄)とコークス(石炭を蒸し焼きしたもの)を混ぜて焼き、鉄鉱石を鉄にします。この時、コークスは還元剤、つまり酸化鉄を鉄に還元させる燃料のような役割を果たします。冬の使い捨てカイロの逆の反応になります。カイロは鉄と空気中の酸素が結合(燃焼)して熱を放出しますが、製鉄は逆に酸化鉄に熱とコークスを加えて鉄を作っています。
プラスチックのケミカルリサイクルで最も使われているのはこの「高炉・コークス原料」になります。酸化鉄を鉄に還元するための還元剤として利用するのであれば結局二酸化炭素として大気中に放出されてしまいます。これではケミカルリサイクルではなく、ほとんどサーマルリサイクルでは?と思ってしましますよね。
プラスチックリサイクルの難しさと打開策
プラスチックリサイクルの難しさ
プラスチックのリサイクルを難しくしているのはプラスチックが非常に多くの素材でできて混ざっていることです。一口にプラスチックごみと言ってもポリエチレン、ポリプロピレン、塩ビ、スチレン、PET、熱硬化性樹脂などがあります。これらをマテリアルリサイクルしようとすると分別しなければなりません。また、色がついているもの、フィラー(鉱物)が練りこんであるもの、ポリエチレンにアルミが蒸着してあるもの、ポリエチレンと塩ビの多層構造のもの等もあり、リサイクルの際は分別が必要です。特に着色は同じ用途への利用を妨げますが、比重等の分離が難しいので厄介です。手間をかけて分別するくらいなら燃やしてしまえというのが現状です。
プラスチックリサイクルの打開策
使い捨てペットボトルで飲料を飲むのはいい事ではなく、一番は使い捨てプラスチックを止めることです。しかし、循環型社会のためにリサイクルもある程度は必要で、プラスチックリサイクルのヒントはペットボトルのリサイクルにあると思います。ペットボトル用のPET容器には着色をしないなどの自主的なガイドラインがあり、その決まりに則ったペットボトルが生産されています。中に入れていいものも決まってます。このため、使用後に回収すると一定の品質のペットが集まり、繊維やシートになるマテリアルリサイクルが進んでいます。
一方、食品包材などは色も素材も多層構造もバラバラであるため、回収してもサーマル以外の利用が困難です。例えばお肉は発泡スチロールのトレイに乗ってますが、お魚はPET製のトレイに乗っていたりしますよね。色も形も素材もバラバラです。ポテトチップの袋はアルミ蒸着してありますが、せんべいの袋は中が見えるように透明ですよね。これではリサイクルもままなりません。
肉魚、お菓子、いくつかのタイプに分けて包材の素材と中に入れるものに決まりを作ってその後分別すればリサイクルも進むと思いますが、これは政治や業界団体の仕事ですね。我々がイチ消費者として出来ることは、包材の多い商品は買わないということくらいです。
まとめ
プラスチックごみの行く先は、マテリアルリサイクル23%、ケミカルリサイクル4%、サーマルリサイクル56%、未利用(熱利用なしの焼却や埋立て) 16%です。結局一度使ったプラスチックは約75%が二酸化炭素となって大気に放出されます。プラスチックのリサイクルが進まない理由は種類が豊富で分別してられないことです。対策は使い捨てのプラスチックを避けること、PETボトルの様に一定の規格に統一していくこと等が挙げられます。
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1)プラスチックリサイクルの基礎知識
https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf1.pdf
2)脱プラスチックのお手本にしたい!優れた日本の紙のリサイクルの状況について!
https://note.com/susecoplant/n/n93d9b9b3a6a9
3)今すぐアクションしたい人必見!地球に優しい行動が分かる「廃棄物ヒエラルキー」
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