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悲しみ声が聞けない

「声」という曲をおそらく、2003年位に作った。

この曲が出来たとき初めて、自分の中にあった音の世界観を外に出すことが出来たと思った。
作詞作曲を始めてもう、6,7年経った頃だった。

そしてこの曲は

「悲しみの声が聞けない 自分につく嘘が増えていく どれを取って並べたって 不自然なバランスで崩れる」

という歌詞で始まる。

これは当時の自分の心境そのもの。
何だか、世の中、社会に飲み込まれて自分が悲しんでいるのか、どうなのか、そんなことさえ分からなくなっていた。
そして、自分に嘘つく場面ばかり。
そんな自分を取り繕って、何とか自分を重ねても、ちょっとしたことで直ぐそれは崩れていく。

そんな自分がまず、頭に浮かんでいた。
当時僕は東京に住んで、ミュージシャンを目指していた。
アルバイトが終わり終電で帰宅すれば夜中の1時を回っていた。
そこから、曲作りや自分の活動。でもなかなか進まない。
何も出来ない。ただただ焦る毎日。

そして、朝まで起きていることもよくあった。
そういう時は外に走りに出かけた。
何か気持ちをリフレッシュすれば何とかなる気がして。

その時見た朝焼けの景色がBメロに綴られている。

「朝焼けに染まった 静かな時間の中で 新しい風の行方 見つけ飛び立つ」

何だか、根拠はないけど、毎朝必ず朝はやってきて、僕らを包んでくれて、自然な流れに乗れれば、飛び立てる。
そんな小さな希望を感じるときもあった。
そしてこの曲のサビ

「僕の奥の方で声がしている この声は僕にだけ聞こえている 確かなものだけ」
「そして僕は歌う 鼓動に合わせ たった一つ自分の声で この地球の蒼に溶けながら響く」


自分の心の声に耳を澄まして、自分に正直に。
そして、僕はシンガーソングライターの人が歌の中で「僕は歌う、私は歌う」と歌われる歌詞が好きだ。
歌っていくという宣言、力を感じる。
なので、「僕は歌う」と小さく宣言している。

そしてこの曲の2番

「あなたの声が聞きたいよ」

とあなたに話しかけていく。
そしてあなたの声が夜空へ響くと歌う。

そこからCメロ。
一気にイメージは宇宙へ飛ぶ。

星を繋げて出来たメロディ
瞬きのリズムは永遠を刻む
幾千の星を奏でる輝きのハーモニー

小さかった僕の声、君の声がどんどん大きくなって、壮大な世界へ宇宙へと広がっていくイメージ。

そして最後のサビで

「君と僕の声が一つになり、重い扉は開かれていく」「心ひとつに響き合える」


と歌ってエンディング。

当時、すごいいい曲が出来たと思った。
この曲ならレコード会社でも送ったら、何か反応があるかも知れない!
そう思い、おそらく何十社もデモテープ(当時はMD?)を送った。

だが・・・1社も反応は無かった・・・

やっぱりそんなものか、僕の思い上がり、勘違いだったか・・・と現実を思い知った。

でも、その後もライブハウスでのステージでは必ず歌っていた。
やっぱり自分を表現できている曲という意味ではぶれてはいなかった。
それから、数年後たまたま駆け出しのレコーディングエンジニアの方と出会い、普段プロが使っているレコーディングスタジオで無料で2,3曲録音させてもらえることになった。その方も自分の練習の機会としたいとのことだった。

その時、真っ先に「声」をギター弾き語りで録りたいと思い、本格レコーディングした音源を作ることが出来た。
やっぱり、全然違う。質が。音の奥深さが。
当時ボイストレーナーの仕事をしていてたくさんの生徒さんを抱えていた。
ある時オリジナル曲の話になり「先生のオリジナルを聞いてみたい」と言われた。
丁度その時、その音源があったのでCDに焼いて渡した。

そして、その夜、そのCDを聞いた生徒さんから電話をいただいた。

涙声ですごく良かったです、感動しました。涙が出ました・・・。
これからも歌い続けてください。応援しています。

と、言っていただいた。

自分の作った歌で誰かが泣いてくれる・・・そんなことは考えてもみなかった。
そんな力はないと思っていた。

その時、やっぱり歌は凄い、歌の力は凄いもんだと実感をした。

そういう機会、自信を持った瞬間もあった。
でもやっぱり東京で仕事で音楽で食べていくというのは難しかった・・・
結局ミュージシャンの夢破れて、帰郷することになる。

それから、この「声」という歌は僕の中ではオリジナル曲の内の一つ。
地元でどういう音楽活動をしようか、どういう音楽が求められるのか、新しいことに目が行っていた。
でも、やっぱり自信のある曲だったから、地元のイベントなどでも歌ってはいた。

そして、2,3年前のこと、当時は地元でバンド活動をしていて、何曲かオリジナルがあった。
新曲を作ろうとメンバーと話していて、僕の中では今度の曲は宇宙!壮大なイメージがあると伝えた。
その時のイメージとして、僕の中ではドリカム「未来予想図Ⅱ」のイントロ、アウトロ。
あの感じで特にラストは聞いている人を宇宙まで連れ出すような曲にしたいと構想を話した。

そして、ふと、思い出した。

因みにずっと前に自分が作ったのもあって、例えばこういうイメージだよ!
と聞いてもらったのが「声」。

そして、その曲を聴いたメンバーが「めっちゃ!いいじゃないですか!」これをやればいいじゃないですか!
と言ってくれた。

自分の中ではすっかり頭の中から抜けていたオリジナル曲。
そうだ!こんなの作ってた!

そうして、「声」が蘇った。

そして後々、思った。
僕がこの歌の2番に書いた想い。

「あなたの声が聞きたいよ」


そのあなたが目の前に現れてくれたのだ!
すごい!すごい!
あの頃、東京で一人、狭いアパートの一室で作った曲が現実になってきた!
仲間と一緒にこの「声」の世界を創造できるかも!!
そうして、バンドで演奏が出来ることになった。

僕が初めにこぼした、小さな声、それが時間を超えて大きくなり現実に。
そして、僕自身もここ数年で曲のアレンジもするようになったので、あの当時作った曲自体のサウンドも出来上がった。
それだったら、タイトルも出世魚のように成長させよう!と
「space symphony」
(※スペース シンフォニー。宇宙交響曲的な意味)に変更。


そして曲の最後のフレーズ。
「声」は最後「声~」とタイトル名を歌って終わっていたがその歌詞を「宇宙(そら)へ~」に変えた。

悲しみの声が聞けなかった、孤独の中にいた、少年が自分の声に気づき、自分の足で歩き始めた。
よろよろ歩きで自信が無くても、自分を信じて歩いていけば、分かってくれる人がいる。
応援してくれる人がいる。仲間も出来てくる。

そんな経験が出来たんだなと振り返っている。
やっぱり音楽はすごい!素晴らしい!宇宙だ!

本当に僕一人、自分だけの力なんて弱い弱いもの。
それを一人で何とかしようと思っても、なかなか現実は動かない。

でも、周りの人、周りに目をやって、一緒に力を合わせれば重い扉は開かれていく。

そして今、その時が来ているような気がしている。

気づきはじめた人はそれぞれの宇宙を表現している。

新しい時代は始まる。

声は宇宙へ

※↑音量注意。『声』に比べ、音量大です・・・