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【IoT基礎】#07 「センサー」をどう選ぶか?

IoTシステムによって現場情報を得るためには、観測したい現象を正確に把握し、それをどのような物理量で計測するかを決定することが重要です。本記事では、「観測したい現象」と「物理量」と「センサー」を結びつけるための思考プロセスについてまとめます。


背景と目的

このIoT基礎シリーズでは、IoTデバイスを自作する上で必要となる知識の全体像を知るとともに、自作する上で必要となる各要素に関し、どのような選択肢があり、どのように選べばいいのかを、私自身の経験をもとに整理しています。
これまで、
#00 はじめに
#01 IoTシステムの全体構成を知る
#02 「電源」をどう選ぶか?
#03 「電池」をどう選ぶか?
#04 「通信」をどう選ぶか?
#05 「マイコン」をどう選ぶか?
#06 「電源制御モジュール」をどう選ぶか?
という記事を書きました。

次はセンサー選びです。センサー選びは案外難しく、センサーの知識に加え、現場での要件把握や、観測したい現象を正確に把握し、どの物理量をどのセンサーで計測するかを決定することが重要です。本記事では、「観測したい現象」と「物理量」と「センサー」を結びつけるための思考プロセスをまとめることに挑戦します。

詳細

センサー選びの思考プロセスを、3つのStepで整理します。

Step1. 観測したい現象を物理量に置き換える

例えば、「室内の温湿度を把握したい」という事例の場合、観測したい現象は温湿度の変化であり、かつ温湿度センサーが存在するため、「観測したい現象」と「物理量」と「センサー」の関係がシンプルです。

一方、例えば「タンク内に入った燃料の残量を把握したい」という事例の場合、燃料残量センサーというものは存在しないため、「観測したい現象」と「物理量」と「センサー」の関係を一つ一つ紐解いていく必要があります。

まずは、観測したい現象を物理量に置き換えます。以下の図は、タンク内の燃料残量変化の模式図です。

この残量の変化を、現象として捉える。どの物理量が変化したのか?

この事例において、残量の変化に伴いどの物理量が変化したでしょうか?
(シンキングタイム・・・)
残量変化に伴う現象を深堀りし、それを物理量に置き換えると、
・燃料の天面の高さが下がる(物理量=距離
・燃料の天面の高さが下がる(物理量=物体の有無
・燃料の重量が下がる(物理量=重量
・燃料タンクを支える支柱のひずみが低減する(物理量=ひずみ
・燃料排出用モータ回転量と、残量は関係する(物理量=回転回数
などが考えられます。このように、観測したい現象を正確に把握し、どの物理量に置き換えることができるかをとらえる必要があります。

Step2. 現場要件等も考慮し、どの物理量をどのセンサー種で計測するか決定する

次に、現場要件も踏まえ、どの物理量をどのセンサー種で計測するかを考えます。
Step1で洗い出した物理量ごとに、対応するセンサー案と、設置/計測方法案をまとめました。下表をご覧ください。

あくまでも一例ですが、このように、物理量と、センサーと、設置/計測方法を整理します。このように洗い出すためにも、センサー種の全体感の把握、IoT事例集などの他社事例の把握などが助けとなります。

次に、これらの複数案を評価し、一つに決める必要があります。そのためにも、現場要件の深堀りが重要です。
例えば、
・どの程度の精度が必要なのか?一定量を下回ったことを把握するレベルでよいのか?残量100%,90%…というオーダーでよいか?残量100%,99%…という精度が求められるのか?
・複数タンクの残量検知をする場合、タンクの種類は1種類か?複数種類あるか?タンク仕様差がセンサーにどう影響するか?
・タンク周辺に電源はあるか?電池駆動か?
・どの案が設置しやすいか?
・どの案がメンテナンスしやすいか?
・1機あたりにかけられる費用は?
などを思い巡らします。

現場要件等も考慮し、観測したい現象をどの物理量/センサー種で計測するか決定します。ここでの手戻りは開発工数の負担となるため、慎重かつスピーディーに決めたいものです。

Step3. 最後に、具体的なセンサーを選定する

Step2で計測する物理量とセンサーの種類を決定しました。Step3では具体的なセンサーを決定します。
仮に、燃料残量を把握するためのセンサーとして、「距離センサー」を選んだ場合、距離センサーの種類を具体化します。
例えば、
・超音波センサー
・赤外線センサー
・レーザー測距センサー
・LiDARセンサー

などの選択肢があります。
これらセンサーの特徴を把握し、さらに現場要件、計測範囲と精度、温度特性、サイズ、コスト、インターフェイス、消費電力、耐環境性、入手性なども考慮し、具体的にどの型番の部品にするかを決定します。このStepでは、実際に各種センサーを購入し、プロトタイピングを行い、各センサーの特徴を現物で把握しながら、具体的な部品仕様を決めていくことになると思います。

まとめと今後の課題

本記事では、センサー選びの思考プロセスを、3つのStepでまとめました。振り返ると、
Step1. 観測したい現象を物理量に置き換える
Step2. 現場要件等も考慮し、どの物理量をどのセンサー種で計測するか決定する
Step3. 最後に、具体的なセンサーを選定する

の3stepでした。

センサーの選定は、センサー単体の知識だけでなく、「観測したい現象」と「センサー」を結びつけるひらめきも必要となります。是非、思考プロセスを参考頂き、センサー選びにチャレンジしてみてください。本記事が、センサー選びの参考になれば幸いです。

参考

・株式会社ソラコム著『IoTの知識地図』p.83のセンサー選びの難しさというコラムに共感し、センサー選びの思考プロセスを自分なりに整理しました。本書籍を読むことで、IoTの全体像を把握することができます。


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