見出し画像

【IoT】SORACOM LTE-M Buttonの日本版とグローバル版を徹底比較してみた

SORACOM LTE-M Button日本版とグローバル版を、徹底比較しました。
案外差があることがわかりました。


背景と目的

ソラコムから販売されているSORACOM LTE-M Buttonですが、日本版の他、グローバル版が販売されていることを知りました。何が違うんやーということで、比較検討します。

詳細

1. SORACOM LTE-M Button 日本版とは?

これです。

画像出典:ソラコムwebサイト

SORACOM IoT ストアから購入可能です。

2. SORACOM LTE-M Button グローバル版とは?

これです。

画像出典:ソラコムwebサイト

グローバルのSORACOM IoT Storeで販売されています。
mouserでも販売されており、こちらのほうが購入しやすいと思います。
公式ドキュメントもあります。

3. 【比較1】価格とハードウェア

まず、価格とハードウェアを比較します。下記比較表をご覧ください。
価格は円安の影響も考慮すると、概ね同等価格です。
グローバル版は、デカくて、重くて、タフ(防塵防水機能あり)です。

並べると、グローバル版は一回りデカいです。

4. 【比較2】通信環境

通信環境を比較します。下記比較表をご覧ください。

日本版はKDDI。
グローバル版はSoftbankとdocomoのいずれかが繋がります。現状SoftBankに繋がっており、どちらも繋がる場合は、SoftBankが優先されるのでしょうか?
別途、SoftBankが圏外で、docomoは圏内という場所で、実験をしてみたいと思っています。

5. 【比較3】通信費

通信費を比較します。下記比較表をご覧ください。

グローバル版の方が基本料金が安いです。また、1回の通信当たりの通信量も小さく、また通信費も安いです。グローバル版の通信費の課金単位は100KiBごとなのですが、100KiBで294回通信できる計算であり、この範囲では30円です。よって、基本料金60円+通信費30円=月90円で運用できそうです。この安さは魅力的です。

6. 【比較4】消費電力量

消費電力量を比較します。下記比較表をご覧ください。

まず、電源仕様ですが、日本版は単4電池x2本、グローバル版は単3電池x2本であり、グローバル版の方が電池容量は倍以上大きいです。一方、1回の通信あたりの消費電力量は、日本版は約0.5mWh、グローバル版は約1.2mWhと、グローバル版のほうが大きい結果となりました。

また、長期駆動を行う上で重要となる待機電流についても調査しました。公式ドキュメントによると、接点Close時の方が接点Open時よりも消費電力が高く、接点Openの時間が長くなるよう使用すべしと書かれています。これは、接点Close時、プルアップ抵抗に電流が流れ続けるためだと推定します。実際、電流を計測してみると、Open時は0.01mA未満に対し、Close時は0.1〜0.2mAという結果になりました(別途、分解能の高い電流計で再試験するつもりです。再試験次第、更新します)。

グローバル版の方が電池容量が大きいが、消費電力も大きいです。実際の通信可能回数は、同程度ではないかと推定しています。ここに関しては、別途検証していきたいですね。

あと、グローバル版ボタンを分解すると、リチウムキャパシタが搭載されており、通信時にこの電力も使用しているようです。この点も日本版は異なります。

7. 【比較5】ボタンと接点の動作

ボタンと接点の動作を比較します。下記比較表をご覧ください。

まず、ボタンの押し方の違いを整理します。押し方によって3種類の信号を送信することができます。具体的には、シングルクリック、ダブルクリック、ロングクリックの3種類を押し方あります。
シングルクリックは、日本版が0.1〜1.2秒、グローバル版が0.1〜2秒と、若干仕様が異なります。ダブルクリックは、シングルx2という意味では同じです。最も異なるのはロングクリックです。日本版の場合は、1.2秒以上押すと通信するのですが、グローバル版の場合は2〜6秒押すと通信します。6秒以上押し続けると通信しません。ここは注意が必要です。

次に、接点端子の違いを整理します。日本版は、ボタンと同じ仕様であり、接点端子間をシングルクリックorダブルクリックorロングクリックすることで、3種類の信号を通信することができます。接点Open時に通信させたい、ということはできません。一方、グローバル版は、ボタンとは異なる信号として扱われます。接点Close時にCloseの信号が通信され、また接点Open時にもOpenの信号が通信されます。

8.  グローバル版の隠しコマンド???

前述の通り、グローバル版は、通常、シングル/ダブル/ロング/接点Close/接点Openの5種類の信号を送ることができます。しかし、現時点でわかっている範囲で、以下3つのいずれかの動作を行った場合、 ”msg_type”:“status”という通常とは異なる信号が送られます。
・ネジを2つ外し、ボタン内部のリセットボタンを押下した場合
・ボタンを12秒以上押下後、離した場合
・イヤホンジャックに3極or4極ジャックを差し込み、LとGNDを接続した状態でRとGNDを接続した場合。

公式ドキュメントを見ましたが、これに関する記述を見つけられませんでした。下図の、1行目が隠しコマンド(?)のSORACOM Harvestの結果です。2行目がシングルクリック、3行目がダブルクリック、4行目がロングクリックの結果です。1行目には、電池電圧[mV]など、実運用上重要となる情報も含まれます。長期駆動時に役立ちそうです。

まとめと今後の課題

SORACOM LTE-M Buttonを用いることで、「ボタンを押す」や「接点を閉じる」等の動作を、簡単にIoT化でき、アイデア次第で応用の幅は広いと感じています。

日本版では、接点Open時の通信がなく、接点Open時にも通信させたい場合は、接点と日本版ボタンとの間に、別のマイコンを入れるなどの工夫が必要でした(参考をご覧ください)。一方、グローバル版は、標準で接点close時だけでなくOpen時にも通信させることができ、この点が最も面白い点だと感じています。

例えば、機械設備にリレーを介してグローバル版ボタンを取り付けるだけで、設備異常に加え、設備復帰を即座に知ることができます。

他にも様々な応用が考えられると思います。是非事例共有ください。

参考

・機械設備にボタンを追加するだけで、設備異常を知ることができます。ボタンの付け方に関しては、下記を参考ください。

・機械設備の設備異常に加え、復帰を知りたい場合、日本版ボタンの場合は、下記記事の通り、マイコンを追加する必要がありました。一方、グローバル版を用いれば、マイコンを入れるようなややこしいことせず、グローバル版ボタン一つで、設備異常&復帰通知が可能です!!!

・グローバル版ボタンの隠しコマンドを知るキッカケになったブログ。大変参考になりました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?