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【IoT】SORACOM LTE-M Button Plusで機械設備の異常検知と復帰検知を実現する1 〜ハード設計編〜

前回の記事では、SORACOM LTE-M Button Plusを用いて設備異常を検知する方法について考えました。

本記事では、SORACOM LTE-M Button Plusを用い、異常検知だけでなく、復帰検知とハートビートを実現する方法について考えます。

背景と目的

機械設備を維持管理するうえで、設備異常の発生を即座に知ることは多くの場合有用だと思います。ただ、実運用していくと、設備異常時だけでなく以下の条件時に通知を得たいというニーズが出てきます。
・設備異常時に通知を得たい!
・設備復帰時にも通知を得たい!
・IoTデバイス自体の不具合監視のため、一定期間ごとに通知を得たい!

これら3つを、①設備異常時、②設備復帰時、③ハートビート、と定義すると、先程紹介した前回の記事では、①をSORACOM LTE-M Button Plusで実現する方法について整理しました。

SORACOM LTE-M Button Plusは、接点がOpenからCloseになった時のみ通信する仕組みであり、正攻法で行くと①設備異常時の通知しか実現できません。なんとか工夫して②設備復帰時の通知と、③ハートビート通知を実現できないか?

本記事では、SORACOM LTE-M Button Plus(以下、ボタン)で①〜③を実現する方法について考えます。なお、通知に関しては下記記事も参考になると思います。

ボタンは3つの状態を通知できる

まず、ボタン自体の仕様を確認します。ボタンは接点の押し方によって3つの状態を検知できます。接点をロングクリックするとclickType=3という情報が、接点をダブルクリックするとclickType=2という情報が、接点をクリックするとclickType=1という情報がクラウドに送信されます。

例えば、①設備異常時に、ボタンがロングクリックされ、②設備復帰時に、ボタンがダブルクリックされ、③ハートビートとして一定期間毎に、ボタンがシングルクリックされる仕様にすれば、①~③の状態をクラウドに送信することができそうです。

マイコンを割り込ませ3つの状態をつくりだす

前回の記事で説明した、①設備異常時の通知の部品構成は、下図の通りでした。設備異常時は、設備異常に連動した接点がCloseになり続けますが、これはロングクリックに相当するため、clickType=3という情報がクラウドに送信されます。しかし、この状態では、②設備復帰時③ハートビートをボタンで送ることはできません。

そこで、①〜③の状態をクラウドに送信するべく、リレーとボタンの間に、マイコンとフォトリレーを割り込ませる仕様を考えます。下記が概略図です。

①設備異常時、つまり設備側の接点がOpenからCloseに変化した時、マイコンとフォトリレーを介してロングクリックのパルスをボタンに送信し、
②設備復帰時、つまり設備側の接点がCloseからOpenに変化した時、マイコンとフォトリレーを介してダブルクリックのパルスをボタンに送信し、
③ハートビート、ボタン自体に不具合がないことを知るため、一定期間毎に、マイコンとフォトリレーを介してシングルクリックのパルスをボタンに送信する
という構想です。
今回は、マイコンとしてATtiny13Aを、フォトリレーとしてTLP222Aを用います。

回路を設計する

以下が設計した回路図です。

ポイントを解説します。

まずATtiny周りについて。ATtiny13Aの2番ピンをInputピンとして、3番ピンをOutputピン使用しています。左側の接点がOpenの時は2番ピンが電源電圧(=High)となり、接点がCloseの時は2番ピンがGND(=Low)となります。2番ピンの状態変化に応じ、3番ピンからロングorダブルorシングルのパルス波出力するプログラムとします。このパルス波を、フォトリレーを介してボタンに入力することで、状態に応じたclickTypeをクラウドに送信することが可能となります。なお、2番ピンに接続しているR2の抵抗は、こちらの記事を参考に内部プルアップではなく外部プルアップとし、抵抗値を200kΩとしました。

次にフォトカプラ周りについて。フォトカプラの手前に入れるR1の設計には注意が必要です。この記事が非常に参考になりました。印加電圧によってR1を設計する必要がありますが、今回は、電源をニッケル水素電池1.2Vx2としたため、下記計算のもと、今回は手元にあった150Ωを選定しました。ただし、秋月電子のサイト見てみると、120Ωの抵抗があるため、120Ωのほうが安全側かもしれません。

$$
R_{1safe}=(V_{in}-V_F)/I_F=(2.4V-1.3V)/10mA=110Ω\\
R_{1std}=(V_{in}-V_F)/I_F=(2.4V-1.15V)/7.5mA=167Ω\\
V_{in}:入力電圧\\
V_F:順電圧\\
I_F:順電流
$$

ケースは、タカチ製の SW-125としました。ぴったり!
ケースから配線を引き出していますが、防水のためタカチ製のケーブルグランドRM12S-7Bを使用しました。
電池ボックスは3Mの両面テープで固定しています。


まとめと今後の課題

設備側のリレーとボタンとの間に、マイコンとフォトリレーを割り込ますことで、設備異常、設備復帰、ハートビートを送る構想について整理しました。

また、基板周りの設計と、ケース周りの選定部品についてまとめました。

次の記事ではマイコン(ATtiny13A)を省電力で駆動させるためのソフト設計について整理します。

参考

・ボタンで設備復帰通知を実現するうえで、非常に参考になった素晴らしい記事!!!

・フォトカプラの使い方。非常に参考になりました

・フォトカプラTLP222Aのデータシート

https://akizukidenshi.com/goodsaffix/TLP222Aj.pdf

・マイコンATtiny13Aのデータシート

https://akizukidenshi.com/goodsaffix/attiny13a.pdf


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