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岐阜県石徹白『地域再生機構』の平野彰秀さん | 社会の片隅から、共感とストーリーで人を動かす

サステナビリティを継続的に学ぶラーニングコミュニティ「Sustainability College」。月に2回の授業のうち、1回は多種多様なフィールドで活躍されているゲストをお招きした「講師回」、2回目は生徒同士の交流や知恵を交換し合う「ゼミ回」を行っています。

「#サスカレ授業参観」では、講師回のダイジェストをお届け。講師による45分間の講義とそれを受けた生徒たちからとめどなくあふれる質問たち...。「Sustainability College」が普段どんなふうに学びを高めているのか、その様子をレポートしていきます!

「Sustainability College」では2月中旬に5期生を募集予定。
気になる方はサスカレのTwitterアカウントをフォローして、新着情報をお待ち下さい。

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2021年最後の講師回でゲストにお越しいただいたのは、『特定非営利活動法人 地域再生機構』の平野彰秀さん。平野さんが所属する『地域再生機構』は、地域住民が主体となった小水力発電や木質バイオマスの導入支援を行っている団体です。岐阜県郡上市の石徹白(いとしろ)地区では、地元住民や地元団体と連携しながら活動を行っています。

石徹白は、その豊かな水の流れを生かして早くから小水力発電事業を始めた地域として知られています。2016年6月に総工費2億3,000万円をかけて新設された「石徹白番場清流発電所」は、約130世帯分の電力を発電。発電所建設のために、高齢者単身世帯も含めた集落のほぼ全戸が合計800万円を出資して、2014年、新たに集落独自の農協を設立しました。

参照:土地に宿る知恵や精神性を時代にふさわしい形でよみがらせる。小水力発電から始まった、岐阜県石徹白集落に暮らす270人の「持続可能な農村」へ向けた挑戦

平野彰秀(ひらの・あきひで)さん
地域再生機構副理事長、石徹白洋品店取締役。外資系経営コンサルティング会社を経て、2011年より、岐阜県郡上市にある100世帯250人の山間集落・石徹白(いとしろ)在住。集落全戸出資で小水力発電所を建設し、その模様は、映画「おだやかな革命」に取り上げられた。衣食住エネルギーを自らの手に取り戻しながら、暮らしとなりわいと地域づくりに取り組んでいる。

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「自分は既存の社会から外れた場所で生きている」という印象的な言葉から始まった本講義。とあるきっかけで岐阜県郡上に通うようになった平野さんは、誰かからの借り物の言葉ではなく、自分の言葉で語れる人たちと出会うことになります。その生き様に感銘を受けた平野さんは、東京のコンサル会社を辞め、石徹白に移住。既存の社会の枠組みから飛び出し、今に至るといいます。

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なぜ東京を出たのか、平野さんの半生や、小水力発電事業、なるべく端切れを出さずに服作りに励む「石徹白洋品店」についてなど、本当に盛りだくさんの内容を語っていただきました。

そんな中でも、特に生徒からの質問が多かったのは、「なぜ、平野さんはあえて“社会から外れた場所”で活動をおこなうのか」という問い。お話を伺うと、都会と地域を分けて考えるのではなく、互いにヒントを与え合いながら前進していきたいというビジョンが見えてきました。

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Q1.発電所建設のために、集落のほぼ全戸が出資してくれたというのは、本当にすごいことだと思います。きっと、多くの否定的な意見もあったであろうなかで、なぜ実現できたのだと考えますか? 地域や企業の中で、どうにか社会変革を起こしてきたいと思っても、周りが理解してくれないことって多々あると思うのですが...。

“相手が乗れるストーリーを描く”ことが成功の鍵だったと思っています。行政を巻き込みたい場合は、自分たちがやりたいことも強く心に持っておきながら、行政側のストーリーに乗せてあげることを意識します。計画や予算が決まる時期など、行政の意思決定のロジックを理解したうえで、自分たちと行政が共通で持てるストーリーを描く。

それは地域の人たちの場合も同じです。僕らの意見を押しつけるのではなくて、まずは彼らが大事にしていることが何なのかを知ること。地域の人たちは「SDGsのために」や「エネルギー問題を解決しましょう!」という言葉には全くピンとこないんです。それよりも、昔の人たちがどんなことを大切に暮らしを営んでいたのかをヒアリングして、「じゃあ、それを一緒に守りませんか?」とアプローチしていく。

相手のストーリーに乗せてあげると、その先はもう主役は僕らではなくて、行政や地域の人たちになるんです。


Q2.「社会から外れた場所で生きている」という言葉がありましたが、「社会から外れた場所」と、マスと言われるような大きな「社会的なインパクト」とどんなふうにバランスをとっていますか?

今は複雑な世の中なので、ずっと同じやり方をやっていても解決策が見つからないと思うんです。社会の枠組みのすごい外れたところにいるからこそ、解決につながるヒントを生み出せることもあるんじゃないかなって。

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例えば、僕がやっている「石徹白洋品店」のような、昔のおばあさんの知恵を活用した服作りを都会のアパレルで働く人たちがひらめくとはあまり思えないですよね。全然違う発想だからこそ、もしかしたら解決の糸口になるかもしれない。辺境から革命が起こる場合もあるし、それが社会全体につながっていくこともありうると思っています。

あとは、「イノベーションは若者と新参者が起こす」みたいな言葉があって。その分野に入って日が浅いか、若いかのどちらか。僕は水力発電に関しても石徹白に関しても新参者でした。「あえて外れてみる」という選択は、面白いことが起きる可能性が隠れていると思っています。

Q3.石徹白の小水力発電は今どんなふうに広がっていますか?

今は、岐阜県だけでなく鳥取や和歌山など、あちこちで水力発電を広げる活動をおこなっています。地域で実現していくためにはプロセスが大切です。いきなり「発電所を作るから協力してください」と言っても伝わらない。

であれば、水力発電の仕組みを学びながら一緒に小さいものを手作りしてみましょう、というように、“一緒に学ぶ”という姿勢がポイントです。学びながら、教えてもらいながら、巻き込みながら、手を動かしながら。そういうプロセスを踏むことを意識していて、それを石徹白以外にも広げていっている最中ですね。

Q4.これからの日本の地域社会はどうなっていくと思われていますか?

地域社会だけでなく、都会も田舎も混ざっていくんだろうなって思っています。今までは、都会が圧倒的に強くて、田舎は人がいないからどうにか救ってあげなきゃ!みたいなイメージでしたけど、今は地域だからこそ尖った取り組みが生まれて、そこに可能性を感じた人たちが集まり面白くなってきている。それが都会にとっての課題解決のヒントになる可能性もあると思っています。特に教育分野では、田舎が逆に先進的みたいなことが起こり始めているんですよ。

だから、都会と田舎、どちらかではなく、どちらも融合し刺激しあっていく現象が起こる社会が望ましいと思っています。

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「Sustainability College」の講師回では、毎回講師からの宿題が出されます。今回は、こちら!

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平野さんから「自分の言葉で語る」というお話があったように、自分の人生と照らし合わせて、実現していきたいことを考えてくることが宿題です。年末らしい、1年を振り返る問いとなりました。(サスカレの宿題は強制ではありませんよ^^)

ぜひこの記事を読んでくださったあなたも、平野さんの取り組みをヒントにしながら、考えてみてくださいね!

次回の「#サスカレ授業参観」では、『ユーグレナ』の永田暁彦さんの回をお届けします!お楽しみに。

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今後のサスカレの予定

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「Sustainability College」では2月中旬に5期生を募集予定現在70名が参加する「サスカレ」では2月中旬に新メンバーを募集する予定です。4月の講義回からの参加になります。

なお、過去のゲスト講義はすべてアーカイブ視聴することができます。今回のnoteで紹介した平野彰秀さんの回も視聴できます。ゲスト講義の動画数は現在12本。気になる方はサスカレのTwitterアカウントをフォローして、新着情報をお待ち下さい。


【おまけ】今月のサスカレニュース
サスカレに参加している生徒や学級委員長の近況など、ちょっとしたニュースを毎月お届け!

▼新井紙材株式会社 リサイクル会社がつくる循環思考メディア『環境と人』
https://humanatnature.com/

▼寺井正幸さん主催の『ごみの学校』に株式会社newRの中川かおりさんが登壇
https://peatix.com/event/3129939/view

▼『小布施バーチャル町民会議』開催
https://virtual-obuse.com/#schedule

▼2022年1月にOPEN予定!『SUNNYSIDE FIELDS』
https://peraichi.com/landing_pages/view/fields

▼BRIDGE KUMAMOTO「大切な人が被災したときに、自分にできることが見つかる写真展」開催
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000031868.html

執筆:佐藤 伶


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