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実話怪談 花筐

来る9月28日に竹書房より、『実話怪談 花筐』という本を出します。

「ようやく、来たんだねえ」
ある日、祖母に届いた謎の花。
漢字五文字の見知らぬ送り主は…(「花筐」より)

不可解で、不穏。奇抜で、リアル。魅惑の全37話収録!

公募実話怪談大会「怪談マンスリーコンテスト」より新たな才能が発掘された。
一風変わった怪を独自の目線でじっくりと観察し、飄々とそれを綴る…そんな鈴木捧の単著デビュー作。
●廃墟マンションに残されていた仏壇の花瓶。瓶の底を覗き込むと何かが…「花瓶の中の世界」
●クラスの暴君からいじりにあっていたU君。宇宙人と揶揄されてから彼の様子が一変する…「宇宙人の涙」
●公園の林で見つけたアリジゴクの巣に似たもの。中心の穴に指を入れると…「指の話」
●繰り返し見る絶滅動物の展示室の夢。実在する博物館だが、実際にはない展示が一つあって…「百年後の未来」
…ほか、魅惑の37話収録!

とのこと。

同じ発売日に本を出される響洋平さんという方がいて、DJと怪談の二足の草鞋でやってらっしゃるのだが、この方が前回の本のあとがきで「この本は自分にとってのファーストアルバム」というようなことを書いていた。
なるほどと思う。
特にロックの世界では昔から「ファーストアルバムはベストアルバム」なんて言って、それは「デビューまでの活動で書きためた曲の中から最良の部分を集めて作るのがファーストアルバムだから」という意味だと思うんだけど。
そういうことなら、別のやり方もあるかもなと思っていて、何かというと、ファーストアルバムをコンセプトアルバムにする。世界観を濃縮するような形でつくる方法。
今回の自分の本はそれでやっている。
ある特定のムードを意図して醸成するような話を束ねて、構成にも露骨に方向性を持たせている。

縁起でもない話をすると、これが最初で最後の機会だったら自分はどういうものを作るんだろう?ってことを思いながら書いていて。そのときに思っていたのは、「自分がこの世界にあってほしいと思っている本を作る」ってことですよね。
それはたぶん「普通に優れた怪談本」ではないんですよ。
怪談マニア、というか怪談本マニアとしての自分は、勿論そういう本も読みたいと思うけど、その中に新しいものを一冊入れていいよって言われたら、だったら今までないものを作ろうって思った。
幽霊はほとんどいないかもしれないし、怖い本を作ろうという気持ちで書いてもいないし、そもそも従来的な「怪談」の枠組みはあえて考えないようにしていた。

否定神学って言葉がある。
「神は人間には及びもつかない存在なんだから、『神とは~だ』みたいな定義で語られるのはおかしい。神とは『~ではない』という否定形の修辞によってしか定義できない存在なんじゃないか」みたいな、単純に言うと。
自分は、ある意味で怪談は否定神学の物語なんじゃないかと思っている。
というか、そういう怪談を好んでいる、という言い方が適切かな。
いつも物語から除外されてしまうもの、語りの残余、だから語りえない物語のようなもの、そういう話が好きだ。
上でアマゾンの商品紹介を引用してみたけど、まああのような感じの話が37入っている。一言で、どういう話?って言われたら自分でも本当に困ってしまうような話ばかり。
それを怪談って呼ぶために、この本を書いたようなところがあるかもしれない。

あともしかしたらこういうことを書くのはダサいかもしれないけど、だから何って感じではあるんで書くと、この本は私の夢です。
でもやっぱ、本が完成するっていうのは読まれてこそって部分はある。
なので、いまさら苦労話なんかするつもりはないけど、真剣に作ってここまで持ってきたんで、あとは読んでもらいたいっていうことだけ。
「もし良かったら手に取って頂けると嬉しいです」とか言ってる余裕ないので、普通に、お願いします、読んで下さい。

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