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ミックス:「通り町キャンディーズ vol.1」、これは墓場のディガーの逆襲だ。

筒美京平さんが亡くなった。1980年代生まれのわたしは、渋谷系〜和モノ/シティポップレアグルーヴの文脈のなかで知ったクチだ。どの時代のヒット曲にも、恋のはじまりのみずみずしい感じ、いろいろあるけど前を向うよという前向きな感じがあって大好きだった。あ、あと日本語ラップ好きには、ECDの元ネタ、佐東由梨「ロンリーガール」。これも筒美京平さんだ。
さて、本日はミックス。

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■『通り町キャンディーズ vol.1 Japanese World Music』
アーティスト MARCH (通り町キャンディーズ)
レーベル MOTHER MOON MUSIC
発  行 2020年
状  態 2回聴いた

本作は、日本のレアグルーヴいわゆる「和モノ」から選曲しているDJミックスだ。プレスリリースによると、当時売れまくって、いまやレコード屋やリサイクルショップに「ありすぎ」て、レア盤狙いのDJたちは見向きもされていないレコードから、見過ごされている曲を選んでいるという。さしずめ、レアグルーブならぬ、有名盤をディグした「メジャーグルーブ」だろうか。

聴いてみると、サザンに、マッチに、永ちゃん、ユーミンにこんな曲があったの⁈ と新鮮になるものがプレイされている。個人的にジュディオングの曲(インストだけど)がよかった。これ、ジム・ジャームッシュの映画で流れてそう。

本作のタイトル「通り町キャンディーズ 」は、長野県伊那市でひらかれているイベントからとったという。プレスリリースにもあるからこの言葉を書くけど、「田舎」だと、お店も少ないのでレコードをディグするのは大変だ。このあたりの苦労は、田我流の名曲「墓場のDigger」でつぎのようにうたわれているとおりだ。「レコ屋の無い田舎者のDiggerは/自然とやさくれ向かうあるべき場所/Dig作業 考古学発掘作業 普通じゃ満足できない者の荒行/リサイクルショップa.k.aレコードの墓場/時代に見捨てられた音が辿り着く最後の砦」。しかし、これまでの見方を変えてあたらしい価値を見出していくこと、これはヒップホップの根幹をなすアティチュードだ。本作には、その気概を感じる。贅沢をいえば、素材は最高なんだからもっとミックスしていろいろ聞かせてほしい!という気持ちも。

10年代なかばぐらいから、和モノミックスがよくリリースされるようになった。それから選曲コンセプトが細分化していって、男性/女性ボーカル、サントラ、アニメ、アンビエント、カバー、民謡、インスト、自主盤などなど、あらゆる「しばり」をつけた選曲の作品がリリースされた。ここらで、ウォッチャーとしてはそろそろ飽和感があるようにおもう。本作の「メジャーグルーブ」なんてある種、逆張りのコンセプトがでるあたり、そろそろブームも落ち着きそうか。や、こっからアッというコンセプトもあるのか……? まだまだウォッチしていきたい。

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