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調子乗った長山青年、悪魔に召される?!

どうもこんにちは。
またお会いしましたね。前回のnoteで簡単な自己紹介を書くはずが思ってた以上に長くなってしまいました。そして今回は「長山元太という人(Part1)」に引き続き「長山元太という人(Part2)」でお送りします。

「お前の昔話や、お前の武勇伝なんてキモいからさっさと制作してろ!」と思われる方も中にはいらっしゃると思いますが、そう思われた方は速やかにこの画面を閉じて速やかにYouTubeを開き、プイプイモルカーでも見てくださいまし。

そんなこんなでウキウキワクワクな長山青年だった何も考えてない当時、忘れもしない展示会最終日の夜…そう…「ガツ!ガツ!」と荒い足音を立てて展示会場に前触れもなく現れた…あの人の足音が…いや、悪魔の足音…とでも言うべきか…(長山元太という人より)

「今の若い子がどんなのを作ってるのかと思って見にきました。」

バイクのヘルメットを被りサングラス、ディッキーズのボロボロになったツナギとボロボロに履きつぶしているチペワのファイヤーマンブーツ、右手首には大きいターコイズの付いたバングル。間違いない、あの人だ。(全身が少し震えていたのをよく覚えてる)

「高蝶さん。。。ですよね。。。?」

「はい、高蝶です。」

丁寧に返して下さったのに何故か怯える長山。。。

こんなに怯えて震え上がってしまったのも仕方ない。何故なら…そう、このドメスティックシルバーブランドの業界で知らない人はほぼいないだろう。
直接金属を削って形を生み出すという唯一無二なテクニックで他に類を見ない世界観を描く、ストレートでパワフル、そこから生み出される造形美、ダイレクトなメッセージ性、パワープレイなプロモーションで業界の反感を買いまくりそして喧嘩を売りまくる事で物議を醸す男。業界のトップブランドに君臨し、「悪魔」と称されたシルバーアクセサリー界のサタン…その名を…

「高蝶智樹(以下BOSS)」

詳細はこちら


あぁ。。。これはとんでも無い事が起きてるぞ長山。
この業界のドンがこの場に来ている。高蝶さんのことは中学生の時から雑誌でよく知っていたし、会ったことある人たちから聞いた話では「あの人は人間を超えている」と言われるくらい有名でかつ超人、とにかく雲の上の人。

冷や汗だらだらにしてその光景を黙って眺める長山。無言でまじまじと俺の作ったアクセサリーを舐めるように見た後に一言。

「うちの店来たことある?良かったら来なよ」

23歳長山青年の人生はここから大きく動き始めた。
展示会が終わり間も無く、知らない番号から電話が鳴る。

「どうもこの間はありがとうございました。高蝶です。いきなりで申し訳ないんだけど、やってもらいたい仕事あるんだけど、やる?」

この人にそう言ってもらえて嬉しい反面、「馬鹿にされないよう良い仕事して見てもらわなきゃ!」なんていう生意気な気持ちがあり、「やらせてください!!」と即返事した。

それからというもの僅かではあれど仕事を振ってもらい、その度にBOSSのお店に通うようになった。
通っていくうちにBOSSの技法に興味を持ったのは自然な流れだった。

「BOSSのやっている技術を教えてもらえないでしょうか?」

24歳になり、なんとか自分のブランドとOEMの仕事をうまくこなしながら、時間ができたら真っ先にBOSSの店に行って技術を教えてもらいに行った。
BOSSが使う技法は今までやってきた技法と全然勝手が違く、やればやるほどBOSSの凄さを身を以て体感するのだった。もちろん、めちゃくちゃド下手な自分も体感する。

新しいのを作ったらすぐにBOSSの店に持っていっては、「雑いな」「これは無いだろ」などなどめっちゃ厳しいこと(過激発言が多い為一部修正しています。。。)を言われ続けては何度も何度も悩み作り直す日々を繰り返した。
あっという間に25歳になり、新作を作ろうと作業台の前に座った。その瞬間頭の中に違和感が出て急に手が止まる。

何も思い浮かばない」

この時から約一年程、頭の中が真っ白になって作業台の上で手を動かそうとしても何にもイメージが思い浮かばない。
技術は以前より高くなったはず、なのになんで何だろう。作りたいイメージがさっぱり分からなくなってきた時期だった。
何とか形にしても何にも手応えが無い。
どうしてなんだろう。

そんなどうしようもない中、振り絞って作った3点のペンダントをBOSSに見せた時、こんなことを言われた

「確かに前よりも技術は上がって左右対称もデザインのバランスも取れるようになって来たが、お前のやりたいデザインが全く伝わってこない。フィロソフィーが無いんだよ。綺麗に作ったこのペンダントは別に間違ってるわけじゃ無い。だけど、こんなの作って売りたいんだったらウチに来て学んでる意味ないんじゃねぇか?」

まさにその通りだった。
自分の中身が空っぽで作られたものがこんなにもツマラナイ物だってことを、この人は分かっていた。
空っぽな自分だってことを、この人には全てお見通しだった。

そんな時、あの人が書いているブログを読み返す。
自分が仕事も全部やめてこれで展示会をしようと決めた、BOSSが綴った言葉を思い出す。

「辿り着けさえすれば、軌道なんて滅茶苦茶でもいいのに、
何かに躓いたり迷ったりしているうちに、
辿り着く事さえ見失って綺麗にならない軌道ばかり気にして、
行き詰まって息詰まって踠く事さえしなくなる。
軌道なんてどうでもいい筈なんだ。
早くても遅くても綺麗でも汚くても真っ直ぐでも歪んでも、
辿り着ける様に修正しながら進んでけばいい。」(SPEED SPECTERより)

正直に言えば、自信なんて無くなっていた。作るのが上手い人なんて沢山いて、自分の作ったものが売れるなんて思えなくなっていた。BOSSと出会って沢山のことを学びながら上達していく反面、自分自身のパーソナルな部分が浮き彫りになっていき、自分の浅はかさを恥じて心底馬鹿だなって思う自分がいた。

底の見えない苦しさに日々襲われながらも、あの人が背中を見せてくれるからなんとか食いついて必死に走った。それでも自分の中で答えが見つけられないまま時間だけがすぎていった。
形になっていない残骸が作業台の上に積み重なって行くのを眺めながら。


一人暮らしの狭く薄暗いワンルームに置かれた、作業台のライトがぼんやりと部屋を照らしていた2019年12月の寒い朝。
25歳だった。朝6時頃電話が鳴る。BOSSからだ。

朝飯食うか?店にいるわ。」

時々早朝に呼ばれて朝飯をBOSSと食べる時があった。いつも何時寝てるんだ?って思いながらもBOSSに呼ばれたら飛んで向かっていた。
店の扉を朝日が照らす眩しい朝だった。
BOSSといつも通り、店の中でタバコを一緒に吸いながら話していた時だった。

「お前、店やるか?隣のテナントが来年空くんだわ。お前のやりたいことは場所があったほうが出来るだろ。」

その時自分でもほぼ無意識に「やります、やりたいです」と柄にもなく大きな声で半分驚いた感じで答えたのを覚えてる。
そして、渡された一枚の紙。
「お前のブランドロゴもこんな感じでやってみるのも良いんじゃない。んじゃこれを立体でおこしてみろ。」

あまりの嬉しさに言葉が出なかった。
「あぁ、本当にこの人には一生頭が上がらない」心底そう思った。

26歳にそれから死に物狂いで働いてお金を貯めた。バイト3個掛け持ちして朝7時から終電まで毎日働いた。
そして遂に、2020年7月17日に「ANTIVIRAL」がオープンした。

この場所は沢山の大切な思いがある。
そしてこれからも沢山の想いが積み重なって行く。

BOSSが言った通りだった。

この場所ができて、自分のお店で自分だけのアトリエを構えて制作し始めた時、もうあの薄暗いアパートで抱えた頭の靄は無くなっていた。頭の中が真っ白では無くなっていた。

お前のやりたいことは場所があったほうが出来るだろ。」

いつだってあの人は俺の考えてる事のもっと先を見ている。
あまりにも遠くてまだ誰も見たことのない世界を。
だから俺もあの人に見てもらいたいと思った。この場所で描く俺の世界を。
だって、この場所はあの人が与えてくれた俺の「居場所」、
俺に残してくれた「SIGN」だから。

まだまだスタートラインに立ったばかりで今でも指摘されることは沢山ある。
それでも、自分の足りない頭で必死に考えて今でも必死に追いかけてる。
きっと、同じ道はきっと歩めない。
けど残したSIGNを頼りに自分の道を歩いていきたい。そこにBOSSの背中は見えないかもしれない。
それでもあの人が感じたように俺もあの人の見据える先を感じてみたいと思った。
あの人が名付けてくれたこの場所で。

ANTIVIRAL=抗ウイルス剤」

現在27歳。長山元太。
江東区森下でセレクトショップ『ANTIVIRAL』のオーナーをしています。
自身のシルバーアクセサリーブランド『SURREALISTE』で活動。
普通のお店とは違って、まるでカフェバーのような雰囲気にクラシックが流れるセレクトショップ。
ここでしか手に入らない流行に流されないアイテムをチョイスし売っています。

ここは、自分にとって大切な居場所であるように、ここに来た誰かにとってもかけがえの無い居場所になってほしい。

BOSSが自分に居場所を与えてくれたように、このANTIVIRALも来てくれた人達の居場所となってくれたらこの上ない喜びです。

長い自己紹介にお付き合いくださりありがとうございます。
今回も全然簡潔に出来なかったわけですが、ここまで読んで頂いた方は、少しでも長山元太について知っていただけたのではないでしょうか。(理解はし難いと思われます)

どんなにここで言葉を綴ても、
「百聞は一見にしかず」と言うように、
気になってくださった方は是非「ANTIVIRAL」に遊びに来てください。

「お店入ったら買わされるのかな…」
「長居したら迷惑かな…」
「気になるけど怖いな…」

などなどたくさん思われる方が想像されますが、

一切気にしなくて結構です!!!!!!

なぜなら、ここでお茶しようが酒を飲もうが本を読もうがこの空間が好きってだけで買い物しなくても、大丈夫です。

もちろん、お買い物して下さる事は嬉しいです。買ってほしい気持ちはもちろんあります。
けれど、買うというアクションだけではなく、ここに来てここで買ったものを身にまとってこの場所で時間を過ごしたい。
それだけでもこの場所の意味は十分にあると思ってるからです。


おっとおっと、これはまた話が長くなってしまいそうですね。
最後まで読んでくれた皆さんありがとうございます。

またここでお会いしましょう。
ANTIVIRALでまたお会いしましょう。

次回のnoteも毒にも薬にもならない内容で「シルバーアクセサリーってのはね…」をお送りします。

ではごきげんよう。

ANTIVIRAL
〒135-0004
東京都江東区森下1-11-8 2F
営業時間14:00〜21:00
都営新宿線 / 大江戸線「森下」駅
A3番出口より徒歩1分



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