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はじめての・・・#7

あれはある日の午後だった。

体調が良くなかったり、だんだんと体力が落ちてくる方は、日中もお部屋のベッドの上で過ごされていた。


その方達のおむつ交換でお部屋へ行ったときのことである。

ドアをノックして入る。

「〇〇さん、しつれ・・・い・・・・・。」

そこから言葉が出なかった。

目の前でベッドがギャッチアップされた状態で〇〇さんが固まっている。

いや、見てすぐに分かった。

亡くなっていたのである。

パニックになる前にもう固まった。

目の前で人が死んでいる。その現実を受け入れるのに精一杯であった。

一緒にいた先輩が他の職員を呼んで来て対応していくことになった。

亡くなった方を発見する初体験、この施設で亡くなった方を見た初体験であった。


そう。特別養護老人ホームは終の住処といわれる。その場所で亡くなる方も多いし、入居されている段階でいつそうなってもおかしくないと言ってもよい。


この先、年間で約15人前後の方が亡くなった。

1日で2人の方が亡くなることもあった。

悲しくて涙を流すこともあったが、死が身近になりすぎてだんだんと麻痺してくるのである。

悲しいけど涙は流れなくなった。

亡くなったときに死後の処置をさせてもらうのだが、その数分後には他の婆様の便の処理をすることもあり、この気持ちの切り替えができている自分に対してなんともいえない感情が出てきたのである。


つづく・・・

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