積分の計算問題のコツ#5
だんだん暖かくなってきた今日この頃、二匹の猫が談笑していました。
ミケ:よーし。今回も積分するぞ!
マロ:おー!でも前回もしてたよね?
ミケ:やっぱこのコーナーを風化させないようにというか…。いつも継続して投稿できてないから癖をつけようと思って。
マロ:といいつつ本当は?
ミケ:ネタがないだけですすみません。
マロ:正直でよろしい。
ミケ:ま、まぁ気を取り直して!始めます!
マロ:うおー!!
前回の記事はこちらです!!
☆の見方について
コツの紹介に入る前に、☆の見方について説明していくよ。
☆ :今すぐにできる。とても簡単。
☆☆ :すこし演習が必要。コツを掴めばできる。
☆☆☆ :難しい。ある程度の問題の慣れが必要。
※あくまでミケの独断です。
基本的にこの三つに分けて紹介していくよ。慣れないうちは☆1つから意識していくといいと思う!
それじゃあ今からさっそく紹介していくね。
積分のコツ
10.三角関数の性質を利用(☆☆)
これは主に定積分で使えるテクニックだね。$${\sin(\pi-x)=\sin x}$$とか、$${\cos\left(\frac{\pi}{2}-x\right)=\sin x}$$とかの性質と、置換積分とを組み合わせれば、原始関数が求まらなくても定積分の値を求めることができる!
そもそも、原始関数求めるのってむずいし、できるだけ考えたくないよね。
このテクニックを使えば、式変形を駆使して直接原始関数を求めなくても答えが出せるようになるよ!
とりあえず、さっそく例題を見てみよう!
例題:
$${\displaystyle (1)\int_0^\pi\frac{x\sin x}{1+\cos^2 x}dx\quad (2)\int_0^\frac{\pi}{2}\log\sin\theta d\theta}$$
解答:
$${(1)}$$被積分関数をみると、$${x}$$と$${\sin x}$$の有理関数の席の形になってるね。なんとなくだけど、これの原始関数は求められない気がするね。求められても、なかなかすごい計算量になりそう…。
でも、これは原始関数を求めるんじゃなくて定積分を求める問題だから、実はそこまで難しくない!
とりあえず、$${\pi-x\to x}$$の置換をしてみようか。ちなみに置換といいながら$${x}$$以外の変数が出てきてないじゃないかって思うかもしれないけど、これはちょっと省略してるんだよね。
本来だったら$${\pi-x=t}$$という風に書くべきなんだけど、この置換ってただ定数分だけ"ずらした"だけの置換だから、わざわざ$${t}$$で置いてないって感じかな。
そもそも置換で同じ文字使っていいのか?って思う人は、定積分が積分変数によらず一定の値を取ることを思い出そう!積分変数が$${x}$$であっても、$${t}$$であっても変わらないんだから、ずっと$${x}$$を使いまわしても大丈夫!
イメージとしては、$${\pi-x=t}$$と置いて、$${\int_\alpha^\beta f(t)dt}$$の$${t}$$の積分にして、この$${t}$$の文字を(さっきの$${\pi-x}$$の$${x}$$とは全く無関係の)$${x}$$で置いてるみたいな。
もちろん、$${x=\sin\theta}$$みたいな置換のときは別の文字を使うよ!ただ今回の場合はわざわざ文字を置き換えるほどのことでもない(加えて、文字を$${x}$$のまま使いまわすと、後々積分を足すときとかに便利)ってだけだね。
気を取り直して、$${\pi-x\to x}$$の置換を行うと、元の積分は、
$${\displaystyle I = -\int_\pi^0 \frac{(\pi-x)\sin (\pi-x)}{1+\cos^2(\pi-x)}dx=\int_0^\pi \frac{(\pi-x)\sin x}{1+\cos^2 x}dx=\pi\int_0^\pi \frac{\sin x}{1+\cos^2 x}dx-I}$$
と変形できるね!よって、$${I=}$$の形に直せば、
$${\displaystyle I = \frac{\pi}{2}\int_0^\pi \frac{\sin x}{1+\cos^2 x}dx\overset{u=\cos x}{\underset{du=-\sin xdx}{=}}-\frac{\pi}{2}\int^{-1}_1\frac{du}{1+t^2}=\frac{\pi}{2}\cdot\frac{\pi}{2}=\frac{\pi^2}{4}}$$
すなわち、$${\displaystyle I=\frac{\pi^2}{4}}$$だね!
正直これを初見で解くのは難しいよね。いやまあこれに限らず初見で解けないようなやつを基本的に集めてるから当たり前なだけどね(笑)
とりあえず、最初は「イミフ置換だ!!」の気持ちで見ておけばいいと思うよ。いろいろこういうタイプの問題を見て、目が慣れてきたら意外とすんなり解けるようになるから!ぼくもそうだった!
$${(2)}$$ちょ~~~有名問題だね。あの解析概論をはじめ、これが出てこない微積の本は(僕が見た中では)ない!例題だったり演習問題だったり、形式は千差万別だろうけどこの積分自体は絶対見たことあるはず!
それくらい有名な問題だったらこのシリーズでも扱わないわけにはいかないってことで、例題に入れました!
実際ミケも好きな問題なんだよね。とりあえず解いていきましょう!
$${\displaystyle \frac{\pi}{2}-x\to x }$$の置換を行うと、
$${\displaystyle I =-\int_{\frac{\pi}{2}}^{0}\log\sin\left(\frac{\pi}{2}-x\right)dx=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\log(\cos x)dx}$$
よって、最初の$${\sin}$$の式と合わせれば
$${\displaystyle 2I=\int_0^\frac{\pi}{2}\log\sin xdx+\int_0^\frac{\pi}{2}\log\cos xdx=\int_0^\frac{\pi}{2}\log(\sin x\cos x)dx\\=\int_0^\frac{\pi}{2}\log\left(\frac{1}{2}\sin2x\right)dx=\int_0^\frac{\pi}{2}\log\sin 2x -\log 2dx=-\frac{\pi}{2}\log 2+\int_0^\frac{\pi}{2}\log\sin 2xdx}$$
途中の式変形では対数の性質と倍角の公式を使ったよ!
よって、最後の式の二項目の積分が求まればいいんだね!$${2x\to x}$$の置換をすると…。
$${\displaystyle \int_0^\frac{\pi}{2}\log\sin 2xdx=\frac{1}{2}\int_0^\pi\log\sin xdx=\frac{1}{2}\left\{\int_0^\frac{\pi}{2}\log\sin xdx+\int_\frac{\pi}{2}^\pi\log\sin xdx\right\}=\frac{1}{2}I+\frac{1}{2}\int_\frac{\pi}{2}^\pi\log\sin xdx}$$
二項目の積分は、$${\pi-x\to x}$$の置換を行うと、
$${\displaystyle \int_\frac{\pi}{2}^\pi\log\sin xdx=-\int_\frac{\pi}{2}^0\log\sin(\pi-x)dx=\int_0^\frac{\pi}{2}\log\sin xdx=I}$$
よって、
$${\displaystyle \int_0^\frac{\pi}{2}\log\sin 2xdx=\frac{1}{2}I+\frac{1}{2}\int_\frac{\pi}{2}^\pi\log\sin xdx=I}$$
最初の式に戻ると、
$${\displaystyle 2I=-\frac{\pi}{2}\log 2+\int_0^\frac{\pi}{2}\log\sin 2xdx=-\frac{\pi}{2}\log 2+I}$$
$${I=}$$の式に整理すると、$${\displaystyle I= -\frac{\pi}{2}\log 2}$$と求まった!
これの面白いところは、原始関数を一切求めずに式変形だけで答えが出るところだよね!積分の区間の加法性とか、三角関数の性質、対数関数の性質を知っていれば解けるのがいいよね!
ちなみに、これは広義積分だから収束性とかいろいろ吟味したほうがいいんだろうけどこのシリーズと趣旨がずれるから無視!
今二つの例題を見てみたけど、どちらも積分区間が特徴的($${\pi,\frac{\pi}{2},0}$$できれいな形)になってたよね?
このコツはこういう積分区間のときに効果を発揮しやすい!実際、$${0}$$から$${\frac{\pi}{2},\pi,2\pi}$$までの積分が応用上重要だしね。きれいな答えになりがちだし(笑)
とはいえ、例外もあるからそこは注意してね。もしかしたら$${\frac{\pi}{4}-x\to x}$$みたいな置換をするかもしれないしね。
あと、置換するときは$${\square-x \to x}$$の形が基本だよ。これを逆にして$${x-\square\to x}$$で置換するのは基本ないと思っていいと思う。
11.sin xの有理関数について(☆☆)
10.の内容とも少し関連するんだけど、$${\sin}$$の有理関数$${f(\sin x)}$$について、
$${\displaystyle\int_0^\pi xf(\sin x)dx}$$
は、$${\pi-x\to x}$$の置換を行うと、
$${\displaystyle\frac{\pi}{2}\int_0^\pi f(\sin x)dx}$$
と変形できるよ。これは10.の例題(1)の一般化だね。
あと、
$${\displaystyle \int_0^\pi f(\sin x)dx}$$
は区間を分けて、二項目を$${\pi-x\to x}$$置換すると
$${\displaystyle …=\int_0^\frac{\pi}{2} f(\sin x)dx+\int_\frac{\pi}{2}^\pi f(\sin x)dx=\int_0^\frac{\pi}{2}-\int_\frac{\pi}{2}^0f(\sin(\pi-x))dx=2\int_0^\frac{\pi}{2} f(\sin x)dx}$$
つまり、
$${\displaystyle \displaystyle \int_0^\pi f(\sin x)dx=2\int_0^\frac{\pi}{2} f(\sin x)dx}$$
と変形できる!
これは、コツっていうよりは一つの事実として知っておくといいと思うね。正直10.の延長だから10.の中に入れようと思ったんだけど、一応分けてみた!
演習問題
おなじみの演習問題だよ!上級問題は今回もなし!(これも最近恒例になってる気がするね(笑))
ー基本問題ー
$${\displaystyle [1]\int_0^\frac{\pi}{2}\frac{\sin x}{\sin x+\cos x}dx\quad[2]\int_0^\frac{\pi}{2}\left(\frac{\pi}{2}-\theta\right)\tan\theta d\theta}$$
ー上級問題ー
なし
解答
[1]とりあえず$${\frac{\pi}{2}-x\to x}$$の置換をしてみると
$${\displaystyle I =-\int_\frac{\pi}{2}^0\frac{\sin(\frac{\pi}{2}-x)}{\sin(\frac{\pi}{2}-x)+\cos (\frac{\pi}{2}-x)}dx =\int_0^\frac{\pi}{2}\frac{\cos x}{\cos x+\sin x}dx=\int_0^\frac{\pi}{2}\frac{\cos x}{\sin x+\cos x}dx}$$
となるね。よって、最初の積分と足し合わせて
$${\displaystyle 2I=\int_0^\frac{\pi}{2}\frac{\sin x}{\sin x+\cos x}dx+\int_0^\frac{\pi}{2}\frac{\cos x}{\sin x+\cos x}dx=\int_0^\frac{\pi}{2}\frac{\sin x+\cos x}{\sin x+\cos x}dx=\int_0^\frac{\pi}{2}dx=\frac{\pi}{2}}$$
すなわち、答えは$${I=\frac{\pi}{2}}$$と求まる。
[2]これもとりあえず$${\frac{\pi}{2}-\theta \to \theta}$$の置換をすると
$${\displaystyle I=-\int_\frac{\pi}{2}^0x\tan\left(\frac{\pi}{2}-x\right)dx=\int_0^\frac{\pi}{2}\frac{x}{\tan x}dx}$$
だね。あとは$${\displaystyle \left(\log\sin x\right)'=\frac{1}{\tan x}}$$
として、部分積分すれば
$${\displaystyle I=\int_0^\frac{\pi}{2}\frac{x}{\tan x}dx=\left[x\log\sin x\right]_0^\frac{\pi}{2}-\int_0^\frac{\pi}{2}\log\sin xdx}$$
ここで、最後の積分は10.例題(2)そのままだから、
$${\displaystyle I=\left[x\log\sin x\right]_0^\frac{\pi}{2}+\frac{\pi}{2}\log x=\lim_{\varepsilon\to+0}\varepsilon\log\sin\varepsilon + \frac{\pi}{2}\log2}$$
問題はこの極限が収束するかどうかだけど…。ロピタルの定理を用いれば
$${\displaystyle \lim_{\varepsilon\to+0}\varepsilon\log\sin\varepsilon=\lim \frac{\log\sin\varepsilon}{1/\varepsilon}=\lim\frac{1/\tan\varepsilon}{-1/\varepsilon^2}=-\lim\frac{\varepsilon^2}{\tan\varepsilon}=-2\lim_{\varepsilon\to+0}\varepsilon\cos^2\varepsilon=0}$$
となる。よって、答えは$${I=\frac{\pi}{2}\log 2}$$だとわかる!
おわりに
空が茜色に染まっています。いつの間にかもう夕方のようです。
ミケ:…って感じなんだけど。今日の積分はどうだった?
マロ:んー。なんか置換がいつもするようなのと違うからさいしょはちょっと戸惑ったけど…。
ミケ:戸惑ったけど…?
ミケ:なんか問題を解いていく内に、ちょっと感覚が身についてきたかも!?
ミケ:おおおお~!さすがだね~!
マロ:でしょー。
ミケ:ちなみに今回のテクニックはもっと一般的なものがあるよ!
マロ:え!?そうなの?
ミケ:うん(笑)
ミケ:しかも公式としてちゃんと定式化されてるから置換をわざわざ悩まなくてもいいっていう…。
マロ:えぇー。そういうのはやくいってよ!!
ミケ:ごめんごめん。でも公式をまる覚えするよりなんとなく置換の感覚を身につけたほうが積分のコツがつかめると思うんだよね。
ミケ:実際ミケも公式を意識せずに置換してるし、たいていの微積分の本でも公式は紹介されずに今回の「$${\pi-x\to x}$$と置換する」のように書かれることがほとんどだよ。
ミケ:だから最初は公式を下手に意識してほしくなかったんだよね。
マロ:そういうことなら…納得かも。
ミケ:まぁでも、積分のコツなんかをまとめてる僕が言うのもちょっとどうかとおもうけどね(笑)
ミケ:まぁ、その公式はまた近いうちに紹介するってことで楽しみにしてて!
マロ:おおー!じゃあ楽しみにしとくね!
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ーミケー
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