Kyashのデザインマネージャーになって変わったこと
この記事は Kyash Advent Calendar 2021 10日目の記事です。
こんにちは、Kyash Design OfficeでDesign Managerを担当しているsubaruです。
気がついたら、Kyashに入社して1年6ヶ月経っていたので自分自身の振り返りとKyash Design Officeについて書いていこうと思います。
入社直後の感想
自分が入社した2020年6月頃、Kyash社内はめちゃくちゃ忙しい時期でした。
開発もコーポレートも全員修羅場で「資金移動ライセンスの取得」と「銀行口座入金の開発」に一丸となって取り組んでいる最中で、まさに決済サービスからバンキングサービスへと移り変わり始めている最中でした。
そして、無事に銀行口座入金機能をリリースした直後に「ドコモ口座事件」が発生し、一部の銀行口座との連携を一時的に停止せざるを得なくなり、銀行口座接続の本人確認(KYC)周りの要件が大きく変更され社内でも多くの対応を行っていました。
さらに、自分も深く携わっていた「残高利息」のリリースが2020年末に見送りになったりと、個人としては意気揚々と入社したものの思ったような成果をあげることができず「えっ?なんかアウトカムなくない?」と当時はかなり焦っていました。
前述のこともあり、入社数ヶ月の間でHard Thingsを経験しそれでも前に進んでいく「The Startup」だなというのが入社直後の素直な感想でした。
やったこと
自分がやったことを洗い出そうと思いTrelloを覗いてみたら、膨大な数があり全ては書けないので一部抜粋して記載します。
主にプロダクトデザインとマネジメントの2つを担当しているのでそれぞれ分けて書きます。
プロダクトデザインでやったこと
プロダクトデザインといってしまうと幅広いですが、自分はUXの5段階モデルでいうところの戦略-表層まで担当しています。※プロジェクトによって関わる範囲は流動的です。
一例として、共有口座でやったことを紹介します。
共有口座
共有口座では全体設計、リサーチ、企画、要件定義、UIデザイン前までの設計を行いました。
デスクリサーチ
海外の一部プロダクトでは「Joint Account」、「Shared Account」といった名前で先行事例はあるものの国内ではほぼなかったため、0から機能、課題、ターゲット、ニーズ、要件を調査しました。
社内インタビュー
デスクリサーチだけでは机上の空論で自分たちの思い込みでプロダクト開発を進めてしまうため、社内のターゲット属性にアンケートを取った上でユーザーインタビューも行い仮説検証を行っていました。
インタビューで得たインサイトを元に実際のお金の流れを可視化し、どういった属性があり、どういった課題があるのか現状のフローの課題点からソリューションを定義し体験設計を行なっていきます。
プロジェクト概要資料
デザインリサーチによって情報が揃ってきたので、社内で機能の価値がぶれないようにあらためてプロジェクトをやる意義をユーザー目線とビジネス目線で言語化し定義しました。
要件定義
上記のプロセスでKyashの共有口座とは「誰」の「何」を解決するかが見えてきたので、実際にどう実現するか?を決めるためにユーザーストーリーマッピングを使いユーザーの行動と機能をどう繋ぎこむかチームで可視化していきます。
概念設計
当時のKyashは「ウォレットアプリ」であり、「口座」という概念がありませんでした。
そのため、口座という概念をどうやったらユーザーに伝わるだろうか?といった問題がありました。
概念を何度も考え整理した上で、入金→振替→支払いまでのお金の流れのスキーム、法律、ビジネス観点で問題ないかチームで確認し整理と可視化を行いました。
このようにプロジェクトの上流から「デザインの力」を使いプロダクト開発をドライブしています。
ここから先の具体的なUIデザインは@carlos_liuの「Share the future. Together.」(英語)に書いてあります。
結果として、共有口座はビジネス面でも効果があり、ユーザー体験も想定通りの体験を作ることができました。
他にも
・「イマすぐ入金」の設計
・継続的なプロダクトグロース
も同様にプロジェクトの上流から表層まで幅広く関わっています。
様々な事情で公開できないのですが、社内の多くのプロジェクトを担当しています。
マネジメントでやったこと
Kyash入社以前のキャリアを振り返ると「プロダクトデザインリード」や「リードUXデザイナー」といったタイトルで主にデザインにまつわる「アウトプットの質」に責任を持つという業務範囲を担当してきました。しかし、デザインマネージャーになってからは「人」、「組織」、「アウトプット」に責任を持つようになり業務範囲が広くなり抽象度が高い業務が中心になっています。
Design Officeの誕生
デザイン組織を立ち上げるとまず最初に決めました。
「デザインチーム」から「デザイン組織」へ向かうという明確な意思表示を込めてデザイン部門の正式名称を「Design Office」に変更しました。
組織設計
そもそもKyash Design Officeが果たすべき役割はなんだろうか?
という問いから組織の設計を0から考えました。
短期では「デザイン組織のつくりかた」や他社のデザイン組織を参考に、最小限のユニット構成で上記のような体制を前提に進めています。
現状の課題点は3つあります。
上記を解決するために
ということを現在進行系でやっています。
一方で、長期ではプロダクトデザイン部門の強化とコーポレートデザイン部門の新設を考えています。
理由は2つあります。
1,Visionの実現。
Kyashは「金融サービス」でありながら「ライフスタイルサービス」でもあり、会社のVisionでもある「新しいお金の文化を創る」を実現するためには、目先の課題を解決するだけではなく長期的な視点で未来の「お金のあり方」を描いていく必要があります。
上記を実現するためには、「Futurism(未来学)」や「Speculative Design(問いのデザイン)」の力を使って実現していくべきと考えています。
実際に、アメリカの伝統的な銀行である「チェース銀行」でも採用が行われており、近い将来日本にもこの流れがくると予想しています。
米チェース銀行のデザインストラテジストに転職します|Masaki.I 🇺🇸 NYのデザイナー|note
2,会社のMVV(Mission,Value,Vision)の浸透、People Experienceの向上。
世の中には多くの会社があるなかで、あらためてKyashという会社で働く意味はなんだろうと考えました。
結論からいうと、Kyashで働く意味は「価値移動のインフラを創る」というMissionを実現しVisionとなる「新しいお金の文化を創る」ためと思っています。
よくあるようなスライドやサイトにMVV(Mission,Value,Vision)を載せるだけでは浸透はしません。なぜならば、それはただの「情報の羅列」だからです。
人は感情の動きと記憶をセットで覚えます。例えば、こんなことはないでしょうか?
なぜ上記のようなことが発生するかというとストーリーの力で感情が動かされたからです。
MVVを浸透させるには、情報の羅列を一方的に提示させるのではなく、人の心を動かす強力なストーリーテリングとMVVを想起させるための手段(オフィスのあり方、スライド、グッズ、動画etc..)と仕組み(オンボーディングや評価制度etc…)が必要です。
デザイナーはデザインの力を使い、人々に共感、複雑なものを理解、人の心を動かし、行動を変化させるアウトプットを設計するプロフェッショナルです。
デザインの力を使いKyashで働く人々の体験(People Experience)を向上させていきたいと思っています。
上記の理由からコーポレートデザイン部門が必要と考えており長期的に実現させていきたいです。と言っても、この中長期的展望はまだ自分が考えている段階で、会社として確定しているわけではないので、CXOとも話しながら進めていきたいと考えています。
採用
採用では前項目で描いた体制を実現するためにHiring Managerとしてヘッドカウントの算出、予算策定から採用要件やJob descriptionの作成。
実務では、採用媒体の担当者の方との情報交換や人事と協力しながら日々母集団形成からスカウト活動や面談・面接を行っています。
組織カルチャー作り
人、組織、役割が大きく変わったので、会社のMVV(Mission,Value,Vision)を基に自分たちの役割やどうあるべきかといった姿を言語化するためにFigJamでワークショップを数回開催しKyash Design Officeのカルチャーデックとして資料に落とし込み発信しています
事業戦略資料のデザインディレクション
Kyashでは四半期ごとに経営陣が全社員に向けて事業戦略を共有する場があります。その際に資料のデザインディレクションを2021年の6月から担当し始めました。
理由は2つあります。
まだまだ表層的なデザインにしか取り組めていないですが、今後はストーリーテリングなども含めて経営陣の考えを従業員により伝わるように翻訳していきたいと思っています。
Design Program Management
四半期毎のデザイン計画やリソースの管理を行っています。
日々の業務ではメンバーのアサインや各所との業務の調整を行っています。現時点では、Design Officeが起因してプロジェクト全体が遅延したことはないのである程度ワークしていると思います。
タスク管理
ツールをTrelloに変更してカンバンライクの運用をしています。
前に進んでいる感覚が人間のモチベーションを高めるというデータがあるため、1つのチケットをできるだけ細かく切り、カードを流動的に動かすことで進捗感を演出しています。
参考 : テレサ・アマビール「マネジャーの最も大切な仕事」
会議体の変更
定例があったりなかったりアジェンダがなかったり完全に形骸化していたので、毎週金曜開催+アジェンダを明確に決めて実施するようにしました。
リモートワークになり雑談する機会がなくなったので意図的にアジェンダに雑談コーナーを設けています。
人事評価
チームメンバーの人事評価も行っています。事業貢献や定量的に測定できる部分は誰でもできます。
デザインマネージャーとして日々現場をみている自分は定性的なデザインのクオリティやデザインプロセスにおける工夫やコンフォートゾーンを抜けた挑戦をしているか注意深く見るようにしています。
しかし、デザイナーの評価制度は課題感しかないと思っており、他社の事例を参考にしながらアップデートしていこうと考えています。
予算管理
Design Officeの年間予算の計画や管理を行っています。
経理業務や書類業務は得意ではないので月末月初に憂鬱になりながら頑張っています。笑
デザインマネージャーになって変わったこと
「デザインの力を使い会社のイシューを解決することが自分の最も重要な仕事であり、その方法はなんでもいい」
プレイヤー時代は責任を持っている範囲が限定されていたため「自分が死ぬほど頑張ればなんとかなる」と信じていました。(今思うとただの過信ですね...)
しかし、デザインマネージャーになってからは解くべきイシューの難易度や不確実性が高く、自分のケイパビリティだけではイシューを解決できないことが当たり前のようになりました。
そのため、社内社外問わず専門家に相談したり、時には手伝っていただいたり、採用で足りないスキルを補ったり「多くの人の力を借りてイシューを解決し、大きなことを成していくことが重要」
というマインドに変わったのが一番の変化で成長したところだと思います。
デザイナーという職種はマネジメントロールをやりたがらない人が多いですが、やってみると案外楽しいもんですよ!笑
最後に
Kyash Design Officeはまだ立ち上がったばかり、発展途上で多くのイシューがあります。デザインの力を信じて一緒にイシューを解決する仲間を求めています。
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