迷信深い男

映画館、コンサートホール、酒場、書棚、etc.

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最近の記事

『カレーライスを一から作る』@シアターセブン

「いつも食べているのと同じ鶏肉の味がした」 男子学生の正直な感想が印象的だった。 一年かけて一から作ったカレーライス、愛着が湧いてきた鶏を屠って作ったカレーライス。実際食べてみると、様々な思い入れとは裏腹に、それだけの特別な味ではなかったのかもしれない。でもその変わらなさこそが、毎日繰り返している日常の食事がその度にどれだけ特別なものであるかを教えてくれている。 学生たちを最も悩ませたのが、カレーライスを作る過程で持ち上がってくるの命の選択という重いテーマ。ペットだから可愛い

    • 『酔わせる映画 ヴァカンスの朝はシードルで始まる』 月永理絵 著

      映画と酒。まるで僕のために書かれたような書籍。 それにしても酒というひとつの切り口で語るだけで、これほど映画の見通しが良くなるものか。輪郭がくっきりしたり、見えていなかったところに気づかされたり。知っている映画が今までとは違って見える瞬間が次々にやって来る。新鮮で面白い体験の連続だった。 酒に続く切り口はなんとりんご、さらには食全般へと移っていく。それでもこの本の面白さは全く衰えない。特にりんごの章を読んでいる時に観た映画で、そのりんごが立て続けに登場してくるのには驚いた。

      • 『左手に気をつけろ』『だれかが歌ってる』@シネ・ヌーヴォ

        求めた人とすれ違ったその先には、新しい人との出会いが待っている。胸を締め付ける切なさも、別の希望に繋がっていく。そうやって世界はできている。そうやって街は息づいている。世界の真実のかけらのようなものがチラチラと顔を覗かせる素敵な映画。 コロナ前後で、街や世界は確かに変わってしまったけれど、それでもそこにはまた新しい発見と輝きがあるはず。 道を歩く傘の鮮烈な青、ちょっと気になるくらい大きいスイングドアの音など、色や音に敏感な映画でもある。『誰かが歌ってる』に登場するりんごが青

        • 『山椒大夫』@シネ・ヌーヴォ

          人身売買や奴隷制度に対する怒りと身分制度への批判、さらには人間の生まれながらの平等を強く訴える社会派的内容だが、最も印象的なのはやっぱり映像美。特に水を描いた宮川一夫の撮影が、深い奥行きを感じさせるモノクロ映像で、香川京子の入水自殺のシーンは息を飲むほどの美しさだった。 もちろんドラマとしても面白かった。よく知られた「安寿と厨子王」の物語でこれほど感情が動かされるとは思わなかった。親子の別れは悲しかったし、逗子王の逃亡はハラハラしたし、山椒太夫が縛り上げられるシーンでは大いに

        『カレーライスを一から作る』@シアターセブン

          『浪華悲歌』@シネ・ヌーヴォ

          金と地位と権力で他人の人生を思い通りに搾取しようとする男たちの醜悪な欲望は、意外なことに、憎悪の対象としては描かれていない。その男たちの卑小さは、糾弾されるというよりもコミカルに笑いものにされている。 一方で男たちに翻弄される山田五十鈴の人生も、ことさら悲劇的には描かれない。甲斐性のない身勝手な父と兄、煮え切らない恋人、そして醜悪な社長や株屋たち。周囲の男たちに強いられたものであったことは無視できないが、その度ごとに自分の決断で人生を選び取っている自立した女性にも見えてくる。

          『浪華悲歌』@シネ・ヌーヴォ

          F.C.Barcelonaの凋落

          ホームサポーターの温かい大歓声に迎えられてエティハド・スタジアムに帰ってきたギュンドアン。選手登録もままならない状況下で寂しそうにスタンドで試合観戦するだけのダニ・オルモ。 かつては毎試合感情移入して試合観戦していたあのF.C.Barcelonaは、ピッチ上以前の問題として、もう世界のトップ・オブ・トップに太刀打ちできなくなっているのか。…切ない。

          F.C.Barcelonaの凋落

          コンロの熱を感じながら食べる焼きトン@乃ノ家 バルチカ03

          本日のバルチカ03一件目は、大正駅前の人気居酒屋が初めて梅田に出店したという「乃ノ家」。ホルモン、煮込み、焼きトンなどがおすすめという前情報を確認しつつ入店。奥のテーブル席も空いているようだったが、強い日差しでかなり暑いというスタッフの忠告を聞いて手前の立ち吞みカウンターを選択。調理場を囲んだコの字カウンターは、三船敏郎やサミー・デイビス・JRのレトロなポスターと相まって気の置けない酒場の雰囲気を演出している。 まずは、あったらうれしいサッポロラガービール「赤星」で喉の渇きを

          コンロの熱を感じながら食べる焼きトン@乃ノ家 バルチカ03

          豪快カルパッチョで本日初めての生鮮魚@ビストロ酒場 ウオスケ

          リンクス梅田のオイシイもの横丁で本日四件目。今日はまだ生鮮魚を食べていないということで、豪快カルパッチョをいただくことに。 いつもながらの人気店だがどうにか空席を確保。豪快すぎる盛り付けにつられて、大きな切り身を野菜と共にこちらも豪快に口に運ぶ。 世界中で食べられている生鮮魚なんだから、わさび醤油だけに限定するのはいかにももったいないと痛感する瞬間。 二品目の太刀魚のムニエルもおいしくいただきました。

          豪快カルパッチョで本日初めての生鮮魚@ビストロ酒場 ウオスケ

          白桃のカプレーゼのシンプルな美味しさ@コロッセオ バル うめよこ KITTE大阪

          KITTE大阪に移動しての本日三軒目。そろそろワインが飲みたくなってきた。立て看板の白桃のカプレーゼに惹かれてイタリアン・バルへ。バジルの葉を散らし、ほぼオリーブオイルをかけただけの味付けで、モッツァレラチーズと白桃の甘さを味わう。合わせるのは、メニューの解説に”クリスピー”というあまり耳慣れない解説があった白ワイン。特にイタリアンやワインに詳しいわけではないが、なるほどこれがシンプルに美味しいということかと納得させられた。

          白桃のカプレーゼのシンプルな美味しさ@コロッセオ バル うめよこ KITTE大阪

          外はカリカリ、中はふわふわ@おでんと、アジフライ。バルチカ03

          本日のバルチカ03二軒目。おすすめメニューをそのまま店舗名にしているのは自信の表れか。 もともと大好きなアジフライは、外側の衣はカリカリ、肉厚のアジはふわふわで、期待通りの出来映え。骨せんべいもついてきてお酒にはぴったり。今日はタルタルソースを選択したが次回は塩レモンでも食べてみたい。 おでんで美味しかったのが豚しゃぶ春菊。あっさりした豚肉の薄切りと春菊の苦みが絶妙にマッチしていて感心した。おでんでなくても、白だし煮などの豚肉の煮物に春菊を合わせるのも美味しそう。 こんなふう

          外はカリカリ、中はふわふわ@おでんと、アジフライ。バルチカ03

          出汁の効いた肉豆腐@和ル一誠 バルチカ03の今日の一件目。バルのような形式で手軽に美味しい日本食と日本酒を提供してくれる。和ルというネーミングがまさにぴったり。手軽ではあるが、席もゆったりとしていて落ち着いて料理とお酒を楽しめる。

          出汁の効いた肉豆腐@和ル一誠 バルチカ03の今日の一件目。バルのような形式で手軽に美味しい日本食と日本酒を提供してくれる。和ルというネーミングがまさにぴったり。手軽ではあるが、席もゆったりとしていて落ち着いて料理とお酒を楽しめる。

          オッペンハイマー@第七藝術劇場

          時系列をバラバラにして再構成するクリストファー・ノーランのいつもの試みによって、この映画は、順序立てて理解しながら上映時間の流れに身を任せることを許してくれない。身体の中を心地よく通り過ぎてくれることもない。超重量級の多面体として全体を一気に捉えるしかなくなっている。 鑑賞中には、描かれている様々な事象やテーマが原爆の閃光と爆音と爆風のように押し寄せてくる感覚。そして観終わった今は、腹の底に残ったその多面体を、何度も何度もまさぐりながら、様々な角度から見つめ直す作業をやめるこ

          オッペンハイマー@第七藝術劇場

          自家製ミントのモヒートが夏の楽しみ@Bar Speranza

          この季節に欠かせないのがBar Speranzaでのモヒート。タイミングによってはマスターが屋上までミントを摘みに行くこともあるほどで、これ以上ないほどの臨場感を味わえる。 2杯目のベンリネス15年はモヒートのグラスに注がれたミネラルウォーターをチェイサーにして。一番落ち着けるバーで今夜も極上の時間。

          自家製ミントのモヒートが夏の楽しみ@Bar Speranza

          戦雲-いくさふむ-@シアターセブン

          米兵少女暴行事件を重大事案だと認識しない日本政府とその対応を擁護する保守勢力やネトウヨは、沖縄の人たちを日本人だとは思っていない。だから彼らの暮らしを無視して基地を増設し、ミサイルを配備する。 しかし本土に暮らす日本人として思う。守られていないのは沖縄の人たちだけだろうか。本土に住む僕ら一人一人の暮らしも、大切に扱われているという気がまるでしない。 国民を守らないミサイル基地、国民を守らない自衛隊、国民を守らない国家。権力者たちはいったい何を守ろうとしているのか。かつてはそ

          戦雲-いくさふむ-@シアターセブン

          ブラジル風肉料理シュラスコを初体験@バルバッコア 心斎橋店

          チキン、ソーセージから始まって、次々に肉が提供される。ガーリックステーキ、ペッパーステーキ、ラムランプ、イチボ、ランプ、サーロイン、その間に、焼きチーズ、焼きパイナップルなどの付け合わせも。 時間制の食べ放題飲み放題など数十年ぶりだったので気が焦ってしまって、最初からペースを上げてしまった。写真も全く撮れなかった。ちょうど食べ始めて1時間30分くらいでオーダーストップ。量的な満腹感よりも肉の脂をもう受け付けなくなっていた。それでもサラダはおかわり。さっぱりとした白ワインとなら

          ブラジル風肉料理シュラスコを初体験@バルバッコア 心斎橋店

          犠牲者の方々の心情に思いを馳せることが慰霊の日の始めの第一歩

          長崎市が今年の平和式典へイスラエルを招待しなかったことがようやく大きなニュースとして取り上げられ、ガザで行われているジェノサイドを後ろで支えている勢力の正体が明らかになった。これは決して悲観すべきことではない。 あの日原爆の犠牲になった方々が、現在のガザの状況を穏やかな心持ちで静観できているとはとて思えない。 犠牲者の方々の心情に思いを馳せることが慰霊の日の始めの第一歩。 さあ明日は、厳粛な気持ちと共に、恫喝すれば皆が権力にひれ伏すとたかをくくっている連中に毅然と抗議の声をあ

          犠牲者の方々の心情に思いを馳せることが慰霊の日の始めの第一歩