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『カレーライスを一から作る』@シアターセブン

「いつも食べているのと同じ鶏肉の味がした」
男子学生の正直な感想が印象的だった。
一年かけて一から作ったカレーライス、愛着が湧いてきた鶏を屠って作ったカレーライス。実際食べてみると、様々な思い入れとは裏腹に、それだけの特別な味ではなかったのかもしれない。でもその変わらなさこそが、毎日繰り返している日常の食事がその度にどれだけ特別なものであるかを教えてくれている。
学生たちを最も悩ませたのが、カレーライスを作る過程で持ち上がってくるの命の選択という重いテーマ。ペットだから可愛いがろう、食べるために飼ったのだから躊躇わずに殺してしまおう。全て人間の身勝手な選択。飢えているわけでもなければ、食材を購入するお金がないわけでもないのに、単なるゼミの教材として都合良く命を育て、取捨選択し、殺し、食す。見方を変えればこれほどの贅沢はない。
前田監督がパンフレットに書いているように、この身勝手さを捨てることができないなら、せめて自覚的でいたいと思った。このことが頭の片隅にあるだけで、もしかするとちょっとだけ、いつも食べているカレーライスとは違う味がするかもしれないから。

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