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北海道 鉄道残照~失われた鉄道の遺産あれこれ

その24 羽幌炭礦鉄道はぼろたんこうてつどうのはなし(2)


1.ごあいさつ

ご訪問ありがとうございます。

ことしからnoteをはじめ、「北海道の廃線跡探訪」なる、国鉄地方交通線廃線跡を主にした記事を投稿しています。

ここでは車輌や遺構のことなど、つれづれなるまま、書いていこうと思います。個人的主観で、なるべく有名でなさそうなものを・・・

戦時中の苦難の時期から一転、戦後復興の波に乗り、羽幌炭礦鉄道も大きく発展する時期を迎えます。

2.羽幌炭礦鉄道の発展

ふつうは、炭鉱鉄道と炭鉱は同系列でも別会社ですが、羽幌炭礦鉄道の場合は同じ会社でした。羽幌炭礦株式会社築別礦ちくべつこうではなく、羽幌炭礦鉄道株式会社築別礦ということになります。

ほかには天塩鉄道北炭ほくたん(北海道炭礦汽船)天塩てしお礦を引き継ぎ、天塩炭礦鉄道と改称、鉄道・炭鉱の一体経営をしています。雄別ゆうべつ鉄道も1970年4月16日の鉄道廃止直前の2月、雄別炭礦に合併された例があります。

さて、戦後はまず車輌の整備からはじまり、1949(昭和24)~50年に北海道内の私鉄ではおなじみの8100形が2輛入りました。

ついで1955年には三岐鉄道からC11形C11 1号機(←江若鉄道C11 2←宇部油化工業101)が、1958~59年には、8620形8653・58629号機が増備されています。
道内私鉄には8620形は、ほかには北海道拓殖鉄道の自社発注機2輛しかありません。

北海道拓殖鉄道の8622号機は下記をご覧ください。

こうして着々と輸送力を向上させ、C11 1号機と58629号機は最後まで活躍しました

のちには旅客列車はすべてディーゼルカーとなり、最末期には新鋭ディーゼル機DD1301号機(国鉄DD13形の同系機)が入線しています。

3.札幌に自社ビル建設

炭鉱経営においても、羽幌(本)礦・上羽幌礦を開坑、戦前からの築別礦とあわせ3坑体制となり、出炭量も順調に伸びていきました。

粗末だった炭鉱住宅(炭住)も、ブロック造の近代的なものに建て替えられていきました。

1954年8月には、札幌中心部、大通にも近いビジネス街の一角、大通西5丁目に、本社ビル「大五ビルヂング」を建設するまでになります。

三菱・三井・住友といった財閥系の炭鉱会社の本社は、財閥の拠点に置いていました。しかし、非財閥系だった羽幌炭礦鉄道は、自前でなんとかするしかなかったのでしょう。

下記の広告を見ても、どうせ中小炭鉱だから、賃貸ビルの間借りにちがいないと思った(失礼!)のに、自社ビルを建てた、しかも札幌の一等地に! 当時の羽幌炭礦鉄道の勢いがわかります。

羽幌炭礦鉄道本社ビル「大五ビル」完成広告 「大五」の名称は大通西五丁目から
北海タイムスより

開館を告げる新聞広告の両側には、札幌支店・出張所とはいえ、羽幌炭礦鉄道よりはるかに大きい企業、河合楽器製作所、日清製粉、時事通信社、旭化成工業などの店子も広告を出しています。

ほかにも住友商事、第一法規出版、富士製鉄、日動火災海上、日本長期信用銀行、日商など本州の大会社が入居していました。
羽幌炭礦鉄道本社は2階の一部にありました。

4.羽幌炭礦鉄道本社ビルのいま

羽幌炭礦鉄道の本社ビル「大五ビルヂング」は、築70年を経て今なお健在です。新陳代謝の早い札幌中心部で、まさか現存しているとは知らず、調べてみて驚きました。

しかも、1階にある大通美術館には個展を見に来たこともあり、そのときは羽幌炭礦鉄道の元本社だとはまったく知りませんでした。

大五ビルヂング 2024年5月撮影(タイトル写真も同じ)

大五ビルの1階ロビーには小さな石炭塊が飾られています

キャプションには、「留萌炭田瀝青炭れきせいたん 大五ビルヂングは昭和29年に留萌炭田の主力鉱である羽幌炭鉱を経営した羽幌炭礦鉄道(株)が建設いたしました。」とあります。

建築主の会社がなくなってから半世紀以上経つのに、建物の出自をきちんと知らせているのは立派です。会社名も「羽幌炭礦鉄道」と、しっかりと正式な漢字表記をしています。

ロビーに展示されている石炭塊 2024年5月撮影

現在の大五ビルヂングは、新聞広告のイラストと比べると、屋上の塔屋がなくなり6~7階が増築されていますが、1~5階は創建当時とさほど変わってはいないようです。
外観や内部のロビー、階段をみるかぎり、よけいな装飾のない、質実剛健な感じがします。

建築から70年を経たビルが現役なのも、羽幌炭礦鉄道が本社ビルとして一流のもの(上記の新聞広告には「設計監理施工大林組」とある)を造ったともいえそうです。


今回はこのへんで。

おしまいまで読んでくださり、ありがとうございました。

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