見出し画像

良いクリエイティブを創るには?

クリエイティブ制作の8割はロジックで決まる

私はアーティストでもコピーライターでもないので自分でクリエイティブを作ることはできません。しかし、マーケティングにおいてクリエイティブを理解する能力は重要であると考えています。私の経験から、クリエイティブに関わる能力は一定の割合でセンスに依存していますが、その割合が重要です。私の見解では、センスがないとできないことは2割程度であり、残りの8割はクリエイティブなセンスがなくても理解できるロジックの世界であると考えています。

私がアーティストでもコピーライターでもなのに、マーケティングのクリエイティブについて話す理由は、佐藤可士和さんという恩人がいるからです。可士和さんは日本のマーケティングクリエイティブの世界の代表的なクリエイターで、楽天グループのコーポレートブランドの管理責任者をしているときに彼と一緒に働く機会を得た経験があります。約7年くらい、可士和さんとご一緒させていただき、月に数回の議論を通じて彼のクリエイティブ制作のプロセスに触れ、トップクリエイターがどのようにクリエイティブを作り上げていくのかを理解することが出来ました。その経験が、今でも私がマーケティングのクリエイティブについて考える基盤となっています。このように、これから述べる考えは、可士和さんの影響を強く受けたものなので、より詳しく理解したいということであれば、是非可士和さんの著書を読んでみることをお勧めします。

クリエイティブのロジック=マーケティングの基礎体力

私が長期間にわたって佐藤可士和さんと共に仕事ができた主な理由は、可士和さんがクリエイティブ制作においてロジックを重視し、センスやクリエイティビティはその後に発揮されるべきものという考え方を持っていたからだと語っています。この考え方により、ロジックの世界で生きている私でも、長期間にわたって一緒にお仕事をさせてもらうことが出来たのだと考えています。。具体的には、マーケティングのクリエイティブは「誰に、何を、何時伝えるか」というマーケティングの基礎体力に基づいたロジックを表現するものであり、この基本的な枠組みがクリエイティブの方向性を決定づけるという教えを受けました。このロジックが明確でなければ、クリエイティブは効果的に機能せず、成果を上げることができないということです。

私はクリエイターではないマーケターとして、仕事の大部分は8割のロジックを徹底的に追求することでほぼ完了すると考えています。残りの2割はクリエイターのセンスに依存する部分であり、クリエイティブ制作においてそのセンスを信頼し、彼らに任せるべきだと思っています。クリエイターと合意したロジックに基づいてクリエイティブが制作された場合、そこに素人が口を出してしまっては、そもそもクリエイターを高いお金を払って雇っている意味がないからです。もちろん、合意したロジックに沿っていない場合や手抜きが明らかな場合は別ですが。

マネジメントはロジックの合意までが基本

このような考えを理解出来れば、クリエイティブの評価方法も自然と明確になってきます。まず、8割のロジック通りに表現が作られているかを確認し、その後はブランド全体のトーン&マナーやクリエイティブの整合性を評価すれば良いと思います。特にマネジメント的な意思決定の上位レイヤーの立場の人は、クリエイティブの評価において表現の良し悪しについて中途半端に口を出さず、特に個人の好みに左右されないよう注意すべきです。例外としては、BtoB向けのクリエイティブなど、上位者がターゲットユーザーをより理解している場合には異なるかもしれませんが、一般的には好みの判断は主観的なので、ターゲットユーザーの評価を妨げないよう配慮すべきです。特に同調圧力が強い社風では、上位者の意見が支配的になりがちなので、意見を引き出すためには注意が必要です。

経営者の中には自分の意見を表明したいと考える方もいることを理解しています。成功した経営者は独自の商売センスを持っており、自分が納得できないと決裁できないし、失敗したときに公開すると思うのだと思います。また、結果的にその意見が正しいことも否定しません。そのような場合は、最終的な決定権を自分が持つことを事前に明確にしておくことをお勧めします。また、その際には現場の責任を重くすることを避けるべきです。なぜなら、現場の意見やリサーチ結果よりも自分の意見を優先して決めた方針の結果を部下に押し付けるのはあってはならないことだからです。これを守らないと、現場のモチベーションが下がり、外部のクリエーターとの協力が難しくなる可能性があります。クリエイティブの最後の2割は主観的な要素が強いため、クリエイターのモチベーションがプロジェクトのクオリティに大きく影響すると感じています。能力だけでなく、モチベーションも重視することが重要です。この点については、配慮を怠らずに対応することが大切だと考えます。

これまで述べてきたように、私がこの場で話クリエイティブの話は佐藤可士和さんから学んだ8割のロジックに関する話です。残りの2割については私にはアドバイスする能力がありません。その点についてアドバイスを求める場合は専門家に相談することをお勧めします。

クリエータータイプのマーケターへのアドバイス

最後に、ロジックよりも先にアイディアが浮かぶクリエイタータイプのマーケターに対するアドバイスをさせていただきます。まず、自分がアイディア先行型であることを自覚することが重要です。またそのような部下がいた場合は上司の方は、その部下に対してこの点を指摘することが助けになります。
また、アイディアが先行した場合は、後からなぜそのアイディアが良いのかをロジックで説明できるように練習することが大切です。良いアイディアは多くありますが、データに基づく説得力がなければ周りを納得させるのは難しいです。また、それを自分でやるのが難しいと感じる場合は、アイディアだけで企画を進めるのではなく、サポート役を見つけてロジックを補完することも有効です。最後に、熱が冷める前に冷静に考える習慣をつけることが重要です

クリエイティブは最終的な顧客との接点である!

マーケティングにおいてクリエイティブは顧客との重要な接点をコントロールする手段であり、失敗するとロジックも台無しになります。以前、Googleが行った調査では、デジタルマーケティングのパフォーマンスの80%はクリエイティブの質で決まるという結果もありました。ただし、クリエイティブを単に「センス」で片付けるとスキルアップの機会が失われます。次回以降は、クリエイティブをロジックで考える際のポイントについて議論していきたいと考えています。


【この文章は以下の文章のライトバージョンです。より詳細な議論はこちらでご確認ください】


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?