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メディア毎の特徴を知る

パフォーマンスマーケティングの概要については、理解していただけたと思います。次に、日常的な運用に必要な、主要な広告メディアや手法について説明します。私が媒体選定に際して注目する特徴は、以下の3点です。

  • メディアが保有しているデータを想像する

  • 自分が獲得したいユーザーをメディアのAIがどう探そうとするか想像する

  • メディアのAIの賢さのレベルを想像する

メディアが保有しているデータを想像する

AIによる広告最適化プロセスは、広告主の要件と目標に基づいて行われます。まず、広告主はキャンペーンの設定条件として、どのようなユーザーをどの程度のコストで獲得したいかを指定します。例えば、「20代の顧客を新規獲得CPA〇〇円で20人獲得したい」というような目標を設定することがあります。

その後、AIは指定された条件に基づいて、広告を表示するためのクリエイティブやターゲティング、表示場所などの組み合わせを試行します。つまり、異なるユーザーセグメントに対して広告を配信し、その結果を収集します。例えば、20代のユーザーに対して異なる広告を表示し、クリック率(CTR)やコンバージョン率(CVR)などのデータを収集します。

AIは収集したデータを分析し、成果に結びついた顧客の共通点や特性を抽出します。これには、広告主が提供した顧客特性データや成功事例を用いることがあります。また、広告メディアが保有するユーザーデータも活用されます。このようにして、AIは成功した顧客のプロファイルを洗練し、それに基づいてターゲティングを最適化していきます。

広告メディアのターゲティングの精度は、広告主が提供するデータと広告メディアが保有するデータの組み合わせに依存します。そして、広告メディア毎のパフォーマンスの違いは当然広告メディアが保有するデータの質量によって差が出てきます。広告メディアが保有するデータは、通常、ユーザーの行動履歴や興味関心などの情報で構成されます。これらのデータを活用することで、より精密なターゲティングが可能となります。

では、広告メディアの特性や活用データについて具体例を挙げて説明したいと思います。ちなみに、これらは私の個人的な経験や見解に基づいており、公式な情報ではありません。広告メディアの内部情報は一部の人しか知らない機密情報であると考えられるため、私の意見として参考にしていただければと思います。

ユーザーが最近興味を持っていることを特定するためには、さまざまなデータが活用されています。特にGoogleでは、検索語句の履歴が重要なデータとして活用されていると考えられます。これは、ユーザーが積極的にテキストで検索語句を入力することから、ユーザーの強い意志を反映したデータとみなされます。

さらに、Googleが提供する様々なコンテンツ(例えばYouTubeやニュースなど)の閲覧履歴も、ユーザーの趣味嗜好を把握するための重要な情報源となりえます。たとえば、私のように野球やスキーの動画をよく視聴しているユーザーは、スポーツ好きとみなされる可能性があります。また、Googleマップで閲覧している地域情報から、ユーザーの居住地域を推測することも可能です。

同様に、FacebookなどのSNSメディアでも、ユーザーがフォローしているアカウントの配信コンテンツや、Likeボタンをタップした投稿の内容などが分析され、ユーザーの趣味嗜好が把握されます。Instagramなどでは、投稿された位置情報から、ユーザーの居住地域や興味のある場所を特定することも可能と思われます。

年代別のターゲティングについて述べられた具体例では、年齢や性別などのデモグラフィックデータがマーケティングのセグメンテーション手法として検討しました。デモグラという古典的なセグメントの特定方法についても
、異なる広告メディアでは推定方法の精度に違いがあります。

例えば、Googleはサービスの利用に際してユーザーから年齢情報を提供することが少ないためか、年齢別のターゲティングはそれほど得意でない印象です。一方、Facebookはアカウント作成時に生年月日を登録することが一般的であり、年齢情報を正確に把握しているようです。

実際に、Googleの広告配信では、年齢が不明なユーザーが比較的多いという傾向が強いと感じています。そのため、Facebookのようにユーザーが生年月日を提供することが一般的なプラットフォームの方が、ターゲティングの精度が高いと考えられます。

Googleが得意でSNSが不得意なターゲティングの一例としては、私の前職の特定職種の転職需要のようなケースが挙げられます。たとえば、「看護師、転職、東京」といった検索語句を入力するユーザーは、看護師で東京近郊で転職を考えている可能性が高いと推測できます。しかし、SNS上では特定職種の転職に関する情報を積極的に検索するケースは少ないため、SNSメディアはこのようなターゲティングに関する情報を持っていないと考えられます。

前述のように、メディア毎にどのような情報を保有し、活用可能かという情報は公表されることはまれで、想像するしかありません。このため精度高く想像できるようになる必要がありますが、そのためには、広告メディアをユーザーとして積極的に利用することが重要です。自身の提供しているデータを考えか、広告がどのようなターゲティングで配信されているかを考えることで、メディアの特性や情報の利用方法が想像できます。また、自分に配信される広告の内容が、なぜ自分に配信されているかを考えることでもターゲティングの方法を推測する参考になります。

最後に、どんなに賢いAIでも持っていない情報は利用できません。メディアごとの特徴を理解し、それぞれがどのような情報を蓄積・活用しているかを予測しながら、適切なターゲティングを行うことが重要です。

自分が獲得したいユーザーをメディアのAIがどのように探そうとするのかを想像する

次に、看護師の転職ユーザーを探すというターゲティング例にもどり、今度はメディアがどのようにこのターゲットユーザーを特定するのかを想像してみましょう。まずは検索機能を持つGoogleやYahooなどのメディアで、「看護師 転職 東京」といったキーワードを検索したユーザーが有力なターゲットとなるのは前述のとおりです。また、看護師専門の転職サイトを閲覧した履歴も重要な情報となります。一方、一般的な転職サイトや看護師用品通販サイトの閲覧履歴も興味の目安となりますが、転職に興味があることや、看護師であることを特定する手掛かりにはなりますが、両方の条件を満たすかどうかの確率は前記2例よりは低くなります。。しかし、両方の閲覧履歴があれば、同様の精度が得られるかもしれません。また、看護師は女性が多いため、コスメ系のサイトの閲覧履歴も参考になるかもしれませんが、看護師である可能性も転職を検討している可能性もこれまで上げた例よりは確実に低いので、ターゲティングとしては弱いと考えざるを得ません。

SNSサイトなど自社メディア内の情報を中心にターゲットを絞り込む場合、前に挙げたGoogleの例とは異なるアプローチが必要です。これらのメディアは外部媒体の閲覧履歴の組み合わせを活用するのは難しい気がします。代わりに、自社に蓄積されている大量の投稿データやアカウントデータを詳細に分析し、コンテンツ毎やアカウント毎にラベリングするなどの手法が考えられます。例えば、特定の投稿やアカウントが特定の興味や関心を持つユーザーに関連している場合、その情報を活用してターゲティングを行うことができます。

それぞれの広告メディアは、メディアが提供するサービス内容によって取得可能なデータに違いが生まれます。それによって、ターゲットを特定し、自社が欲しいユーザーを特定する方法にも違いが出てきます。自分がターゲットとするユーザーを獲得しやすい媒体を考える際には、各メディアの保有データを検討し、そのデータをどう活用してターゲティングするかを考えることが重要です。これにより、メディアのポテンシャルを想像する手助けになるでしょう。

メディアのAIの賢さのレベルを想像する

自分で提案していて言うのもどうかと思いますが、メディア毎のAIの賢さを比較することは難しいのは事実です。広告運用のパフォーマンスに影響を与える要素は多岐にわたり、AIの精度以外にも様々な要素が関与しています。また、AIの内部機能が一般的にブラックボックスであるため、実際に何を行っているのかを正確に把握することも困難です。

ただ、個人的な印象としては、日系メディアよりもGAFAといったグローバルメディアの方がAIの精度が高いと感じます。これは、エンジニアの質や量の差や、データの量と品質の違いによるな気がしています。グローバル企業の方が多くの国でサービスを提供し、大量のデータを保有しているため、AIの学習量が日系企業と比較して圧倒的に多いのではないかと思います。

なぜこのような曖昧な話をするかというと、日系メディアでのAIによる最適化を試みる際に、条件が複雑すぎないかどうかを常に考慮する必要があるからです。AIの学習精度はアルゴリズムの精度やデータの量と質に依存しますが、それぞれの要素で劣っているメディアに複雑なターゲティングを行わせることはリスクが伴います。小規模な試行は問題ありませんが、深追いする際にはリスクを考慮することが重要です。

このように、デジタル広告のメディアごとに得意不得意があり、AIがすべての問題を解決してくれるという期待は過剰です。現実的には、各メディアが適正をテストマーケティングを通じて確認し、改善を進めていく必要があります。もちろん、論理的にはうまくいかなさそうでも、実際には良い結果が得られることもあります。

改善スピードを上げるためには、優先順位付けやPDCAサイクルの適切な運用が必要です。そのためには、今回のようなメディアやAIの運用に関する議論を理解し、適切な方針を立てることが重要です。


【この文章は以下の文章のライトバージョンです。より詳細な議論はこちらでご確認ください】


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