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2月鑑賞映画まとめ

もう3月も半ばを過ぎてしまったけれど、2月に鑑賞した映画感想まとめです。


1  カラオケ行こ! 監督:山下敦弘

2024.2.8鑑賞

原作の漫画は未読。合唱部部長の主人公岡くん(齋藤潤)が、ひょんなことからヤクザの成田狂児(綾野剛)に歌のレッスンを行うことになる。二人のやりとりが楽しい青春コメディ。

フィルマークスの評判が良かったので、軽い気持ちで観に行ったら綾野剛が思いの外良くて心を揺さぶられた。綾野剛はハマり役。今思い返して見ても、成田狂児が生き生きと蘇る。
作品自体も漫画原作らしい笑いが随所に散りばめられていて、とても見やすい。
山下監督作品は久し振りだが、過去作品の中でも上位ではないだろうか(個人的な感想)。

綾野剛と言えば、私は「リップヴァンウィンクルの花嫁」の安室役が大好きで名演技だと思うが、それに次ぐハマり役だったと思う。
岡くんの挙動不審や感じや時折不安定に揺れる視線や声がまた良い。
ラストの岡くんの熱唱はお母さんのような気持ちで見守っていた。
ほとんどの人が楽しく見られるのではないかと思う。

お母さん役の坂井真紀がまた良かった。
岡くん、あの傘を使うなんてお母さん思いだねえ。


2 枯れ葉 監督:アキ・カウリスマキ

2024.2.8鑑賞

独特な世界観と圧倒的なセンスでカリスマ的存在の巨匠、アキ・カウリスマキ。これ楽しみにしてた!期待を裏切らないセンスの良さは相変わらず。

中年男女の王道ラブストーリー。大きな事件は起こらない。
日常の中で出会い、ちょっとすれ違い、ぶつかり、心を通わせていく。
アキ・カウリスマキファンも、初めて監督作品を見る人にもお勧めしたい。
これぞ、カウリスマキ。

スモーキーな水色に深い茶色のコーディネートや、深めの赤が効いている。鑑賞後、古着屋さんに行きたくなった。
懐かしさを感じる世界観に、これいつの時代?と序盤は思ったがちゃんとラジオから流れるニュースや初デートの作品で現代なんだとわかる。
初デートの映画にジム・ジャームッシュの「デッド・ドント・ダイ」を選ぶセンスに笑った!そのデート、私も行きたいよ!
可愛い犬映画でもある。働く女性たちの結束の強さにじんわり感動する。
そして、するすると進むあまりにも都合良すぎる展開もご愛嬌。
監督、まだまだ作品撮ってくださいね。

3 瞳をとじて 監督:ビクトル・エリセ

2024.2.11鑑賞

映画館で予告を見た時から無性に気になっていた作品。

映画撮影中に主演俳優であり親友のフリオが失踪した。作品の監督であり主人公のミゲルは、失踪事件を扱うテレビ番組をきっかけにフリオを思い出し、自らの半生を振り返る。


スペイン人監督と言えば、ペドロ・アルモドバル!の私は、恥ずかしながらビクトル監督作品は初鑑賞。
序盤から重厚感溢れる画面に引き込まれる。開始すぐに静かな会話劇に緊張感があり、そこからゆっくりと進むストーリー展開が素晴らしく良かった。
芳醇なウィスキー(あまり普段飲みませんが)のよう。

「ニューシネマパラダイス」を思い出す終盤の展開と、登場人物たちの表情が切ない。自分の人生が充実していた頃を振り返る時、私はどんな顔をするのだろうと考えさせられた。

4 哀れなるものたち 監督:ヨルゴス・ランティモ

2024.2.16鑑賞

第96回アカデミー賞主演女優賞、衣装デザイン賞、メイクアップ・ヘアスタイリング賞、美術賞おめでとうございます。
割と好きなヨルゴス・ランティモ監督。毎回独特なカメラ使いと個性的な登場人物やストーリーに魅了される。今回はエマ・ストーンが主人公と聞いて、大分前から楽しみにしていた。

天才外科医によって生み出されたエマ・ストーン演じる美しいベラ。外の世界から隔離され成長するが、次第に抗えない強い好奇心から大陸横断の冒険に出発する。無垢な瞳と心が出会う、刺激的で不平等で残酷で美しい外の世界。急速な進化を遂げるベラの成長物語。

女好きで手が早いマーク・ラファロ演じるダンカンが最高。最初は遊び慣れた余裕のある男性のはずが、次第にベラに振り回されどんどんとんでもない方向に進んでいく様子が、滑稽ででも憎めなくて笑いを誘う良いキャラ。マーク・ラファロは元々好きなので、キャスティングは嬉しかった。

とことん好きな世界観。衣装も美術も見事。大きな袖に凛々しい眉、厚みがあって野暮ったいロングヘアに美しく長い足。音楽もなんとも言えぬ癖になるメロディで、ハープのような楽器が奏でる不協和音が流れるたびにうっとりした。
正直、私はストーリーにそこまでハマれなかったが、衣装・美術・そしてダンスシーンにベラの表情や仕草などの世界観が大好きだった。
ここまで強く逞しく進む姿って、逆に悩み苦しむ渦中の人は見ていてしんどいかも。これはファンタジーと思ってみるのがちょうど良い。こんなにぐんぐん前には進めないよ。痛みを知る人なら余計にそう思うはず。
学校に通うベラのスタイリングが好き。後ろに三つ編み一本の黒いシックな装い。
アートを見る感覚で見に行ってもらいたい。
これはぜひ劇場で。

5 ストップ・メイキング・センス4Kレストア 監督:ジョナサン・デミ

2024.2.24鑑賞

忘れもしない2021年8月末。デヴィッド・バーンのアルバム「アメリカン・ユートピア」を基にしたブロードウェイ・ショーをまとめた映画を観た。デヴィッド・バーンもトーキング・ヘッズもほとんど知らなかった私。
デヴィッド・バーンの歌って踊る姿に圧倒され大好きになった。
がんの治療がしんどくてメンタルも疲弊していて感情が大きく波打っていた時、
作品を通して彼に出会い大きな力をもらった。

そんなトーキング・ヘッズの1983年のライブ映像作品が4Kリマスタで観られると知り、ワクワクしながら劇場へ。
ライブ登場シーンからめちゃくちゃかっこいい。
ギター一本、ラジカセ持参で登場し
「やあ、テープを持ってきた」と一言。
ギターの音で始まる。

「アメリカン・ユートピア」でかっこいい大人の男性ってこの人だ!と思ったデヴィッド・バーンの若かりし頃。熱量がすごい。エネルギーの放出が途切れることなく続く。なんだこれは!とビリビリ痺れっぱなし。目力の強さに圧倒される。

個人的には「アメリカン・ユートピア」を観る前に「ストップ・メイキング・センス」を観たかったなあ。
かっこいいとはこういうことさ!という感じ。センスってお金じゃ買えないし、その人独自のものですよって心底思った。
改めて「アメリカン・ユートピア」を再鑑賞したい。

6 笑いのカイブツ 監督:滝本憲吾

2024.2.28鑑賞

最初に言います。これ、めちゃくちゃ良かった。
これを観る前は、2月鑑賞作品は「哀れなるものたち」がダントツだったなあと思っていた。
気になっていたこちらを駆け込みで2月末に鑑賞。
ものすごく良かった。
鑑賞後、呆然として興奮して帰りの時間があっという間。
気づいたら最寄駅だった。
もっともっとたくさんの人の目に触れてもらいたい作品。本当に良かったのです。

伝説のハガキ職人、ツチヤタカユキさんの自伝小説が原作。寝ても覚めても四六時中お笑いのことを考えて生きる主人公ツチヤ。地道に愚直に純粋に、我が道をただひたすら進んでいく。人間関係不得意で不器用すぎる主人公のお笑いへの想いに、どんどん引き込まれ引っ張られるようにして観ていた。

主人公ツチヤを演じる岡山天音の怪演っぷりが素晴らしく、もうツチヤにしか見えない(ツチヤさんに会ったことは無いのだけれど)。不器用すぎる彼の人柄は、愛おしくも切なくも苦しくもなり、目頭が何度も熱くなった。


菅田将暉に仲野太賀と脇を固める役者陣も豪華。彼らはいつも良くて当たり前の演技で、自然とハードルが上がるがどちらも期待を超えてくる素晴らしい演技。なんなの、あの説得力は。暴走する、お笑いマシーンを演じる岡山天音の体当たりを、どっしり演技で受け止める様を目の当たりにして、それにも泣いた。
ああ、この子たち、過去作品のあれこれも良かったけれど、またこんな良い演技しちゃってなんなのよもう・・・と私はお母さんのような気持ちになってしまった。
若い人たちの成長ぶりを見て、ストーリーとは別の意味でも感動。

血尿やら血便やら、体調ヤバそうなエピソードに心配になってオロオロしたが、鑑賞後本人について調べたらご健在のようで一安心。
体は大事やで。きぃつけなはれ。

笑いに対して、好きを超えていた。これはまさに笑いのカイブツ。
好きだけど、しんどい。でも、その世界にいてほしいよ。
あんたがそこで輝く様子を見ていたいよ。
そんなふうに気持ちが熱くなる映画だった。
これ、激しくお勧めします。

2月は劇場で結構鑑賞したなあ。楽しかった!
勢いで一気に書いたので、頭から湯気が出ている状態です。
こうして、鑑賞して少し経ってからまとめると、印象に残った部分がより強く強調される。面白いなあ。

3月もちょこちょこ観ているので、またまとめます。


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