芸術単元 予習
〈課題1〉
自分が好きな作品や思い入れがある作品、あるいは一般的に人気が高い作品を一つ挙げてください。(いわゆる「アート作品」や「芸術作品」のイメージに囚われないよう、自由に挙げてください)
太宰治『斜陽』
〈課題2〉
その作品の「形式上の特徴・独自性は何か」を考えてみてください。
・主人公「かず子」の一人語り
……話し方や態度で、かず子がどういう立場の人間かを明らかにしている。太宰の描く『女言葉』(女性っぽい話し方のこと。書き方の概念が分かりやすく伝わるように、ここではそう表記する)が顕著に出る作品だと言える。
・主人公「かず子」の手紙
……ポエミーな内容ではあるものの、こちらが恥ずかしくならない程度のもの。且つ恋心に揺れるかず子の心情がつぶさに描かれている。
・弟「直治」の遺書
……作品の中でより死を感じるもの。直治の葛藤、自殺に至るまでの心情が描かれる。遺書の内容までは忌避されて描かない作家の方が多いと思うが、ここではかなり鮮明に描かれている。
〈課題3〉
その上で、その作品を評価する(あるいは一般に評価されている)理由を考えてみてください。
一見すれば『没落貴族の女性が妻子持ちの芸術家と浮気する話』だが、そんな下賎な内容だけで終わる話ではなく、この『斜陽』の細部に至るまで、太宰特有の趣向や技術が張り巡らされているのがよく分かる作品であるから評価されているのだと思う。
恋を知り、恋に生きるかず子の姿、直治の頽廃していく様、最期まで美しくおちゃめなお母さま……など。この作品に登場する人物すべてが、まるでそこに息づいているかのように生き生きとしているのも、世間に評価される魅力の一つだと考える。
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