うつ病の原因は何だったのか?

私がうつ病と診断されたのは、45歳のとき。
私のうつの原因は何だったのか?
何をきっかけに発病したのか?
振り返ってみたいと思います。

1 生物的な視点から

うつ病になって、「なんとかこの苦しい状態から抜け出したい」ともがく中、いろいろな本を読みました。その中の1冊、河合隼雄先生の『中年クライシス』に"中年ほど心の危機をはらんだ季節はない"と書かれていました。

中年(男性)は、うつ病のリスクが高い年代です。

当時の私は、平均寿命から計算すると、まさに人生の折り返し点を過ぎたところ。
体の機能や体力面でも、今まで出来たことが出来なくなることが増え、衰えを実感することが多くありました。

昨今、「男性の更年期」という言葉を聞く機会が増えましたが、ホルモンバランスの変化など、自覚できないところでも生物的な変化が起きていたことは大いに考えられるところです。

2 環境の変化

生活環境においても、大きな変化がありました。
うつ病の診断を受ける約1年前から、転勤で単身赴任の生活をしていました。

自宅と赴任先との距離は、約3時間。
微妙な距離でしたので、休日のたびに家族のいる自宅に戻っていましたが、休みが終わるときに家族と別れて赴任先のアパートに戻るのは、いつもつらかったなあ。。。

赴任先での仕事はというと、これも以前と少し変わり、週に1回宿直勤務がある職場でした。今までは日中勤務で土日休みの一般的なサラリーマンでしたが、宿直により勤務は不規則で休みも不定期となりました。

仕事の量については、それほど負担が大きいと感じてはいませんでしたが、宿直の疲れと生活リズムの変化は確かにあったと思います。

また、単身赴任1年目は上司と意見が合わず、仕事が楽しくできていたかと聞かれると、そうではなかったかもしれません。
もちろんそれはストレスでしたが、仕事なのだから当然そういうこともあるだろうと、自分の中では整理できているつもりでした。

2年目から上司が異動で変わり、私にとっては職場環境が良くなってホッとしたのですが、皮肉なことにそれからしばらくして、自分の中で何かがおかしくなっていることに気が付いたのでした。

3 心理的な要因

悩みは常にあります。
だから、それがうつの原因と考えることには抵抗がありますが、その当時の大きな悩みは、実家に住む父親ががんを患い、手術と再発を繰り返した結果、根本的な治療は難しい状態になっていました。

結局、父は私が46歳のとき(私がうつ病による休職から復帰して10か月後)に闘病を終えて他界しました。

あとは、子どもたちのことでしょうか。
私の子どもは、当時高2と小4でした。

高2の娘は反抗期の延長で、当時の親子関係はよくありませんでした。
大学受験も近づく中、親として何もできない不甲斐なさを感じていたのは確かです。

小4の息子は可愛い盛りで、できれはもっと一緒に過ごしたかった!
なぜなら、その2年後には息子も反抗期に突入してしまったから。
ただし、親子関係悪化の原因は反抗期だからというだけではなく、私が父親として多分に問題があることは否めません。

4 結 論

原因をいろいろ振り返ってみましたが、
「このせいでうつ病になった」と特定できる原因はありません。
原因は1つではないと思うのです。

周りは、私が休職した理由を1つの原因に特定して理解したがります。
「新しい職場でパワハラにあったらしいよ。」とか
「単身赴任がつらかったんだろう。」
とかいった理解をすれば、整理しやすいのかもしれません。

でも、実際はそんなに単純ではないと思います。
原因が1つなら、解決するのもより簡単になるはずです。

また、やっかいなことに、環境の変化やつらい出来事の直後や最中ではなく、その後しばらくたってから心身に異常が出ることがあります。
うつは時間差で襲ってくることがあります。

私の場合がそうでした。
単身赴任の生活に慣れ、職場環境も赴任1年目より良くなった頃にうつを発症しました。

息抜きの場所も意識して作っていました。行きつけの飲み屋に通って店主や常連客と話したり、その土地で盛んなスポーツを始めてみたり。

もともと人付き合いを好む性格で、自分では「うつ病にはならないタイプだろう」と根拠なしに思っていました。

20年以上サラリーマンをやっていて、うつ病になった時よりも仕事量や人間関係のストレスが多かった時期もありましたが、そのときは普通にキツイなと思いながらも大きく調子を崩すことなく乗り越えることができました。

うつは誰がなってもおかしくないし、いつなるかも分かりません。

油断していたというわけではないのですが、単身赴任中でも楽しみを作り、息抜きを心掛けていたにもかかわらず、気付いたときには心も体も動かすことができない状態になっていました。

うつ病って手強い病気だな、とつくづく思います。

1つ教訓として言えるのは、
調子の変化に早く気付いて、すぐに手を打つこと。

浅ければ、気晴らしや休養をしっかりとることで持ち直すことができるかもしれません。
進んでしまっていれば、その時点で直ちに、無理せず休んで回復することが大切です。

特に、一度うつを経験している人は、自分の変化を見逃さないことが大事です。

うつ再発のサインに気付くことができるのは、一度この病気を経験している人の強みとなります。

たとえ再発しても慌てずに対処することができれば、
いたずらに恐れることはないと思うのです。

復帰後3年が無事に経過した私も、何度か「危ないな」と感じて意図して無理しないように過ごした時期があります。自分自身の中でそういったコツをつかむことはとても大事だと実感しています。


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