見出し画像

はじめての心療内科

診察の予約をするまで

うつの症状を感じながら働いていた頃、自分から心療内科に行ってみようという考えと行動は起きませんでした。

まず、クリニックや病院を調べて予約することがおっくうでした。

そして、メンタルの治療を必要とする自分自身を受け入れられませんでした

治療につながるまでの最初の壁は意外に厚かったです。

結局、妻に何度も勧められ、最後は強く促されてようやくインターネットで検索した自宅近くのクリニックに連絡しました。

そのときは、妻に対する義務感70%、治療への期待30%ぐらいの気持ちでした。

診察を受けてみた

診察を受けるからには医師に自分の症状をしっかり分かってほしい。
だから私は、いつ頃からどんな変化や症状が出たかを振り返り、ノートにまとめ、どのように伝えるかシミュレーションしました。

マジメか!?

今思うと、自分のこういうところは、うつになりやすい性格傾向といえるかもしれません。

でも、当時は全然気づいていませんでした。
むしろ自分はうつにならないタイプの人間だと、この期に及んでなお思っていました。

診察前にシミュレーションしたとおり、環境の変化、気持ちの変化、そして身体に起きた変化の3点から、1年前ぐらいから遡って医師に伝えました。

医師の方からもいくつか質問され(内容はあまり覚えていません)、すぐに診断が下されました。

「あなたは、うつ病にかかっています。」

うつ病と診断されて

『まさか、僕がうつ病になるなんて。』
『あぁ、やっぱりうつ病だったのか。』
そんな相反する思いが浮かんできました。

うつ病と診断されてショックな気持ちが半分。
もう半分は、どこかスッキリした気持ちでした。

この辛さは、やっぱり病気だったんだ。
病気なら仕方ないか。
先生が治してくれるかな。

そんな考えからか、少し晴れやかな気分になったのを覚えています。
もちろん、そんな簡単に治るものではありませんでしたが。
でも、それまで自分だけで抱えていたものを、医師という専門家に共有してもらえた安心感は決して小さくありませんでした。

初診では、仕事を続けながら治療していきたいという私の希望を尊重してもらいつつ、抗うつ剤と眠剤を処方してもらいました。

服薬についてはある程度予測していたので、抵抗はありませんでした。
むしろ、抗うつ薬の効果に期待する気持ちが大きかったです。

決して長い診察ではありませんでしたが、精神科医が問診と助言をしてくれて、薬を出してくれる。
あのときの私は、それだけでけっこう安心を感じました。
なかなか動き出さなかったくせに、藁にもすがる思いだったのでしょう。

初診のあと、職場の上司に報告しました。
メンタルの不調で心療内科の診察を受け、うつ病と言われたこと。
治療を受けながら今までどおり仕事をしたいと考えていること。
言い出すタイミングは少し考えましたが、悩むエネルギーもなくなっていたのか、思ったよりスムーズに言い出せました。

そ の 後
初診で処方されたNaSSA抗うつ薬の用量を、所定の方針にしたがって徐々に増やしていきましたが、残念ながら私のトンネルの出口はまだまだ先でした。

通院から2か月、通院して薬を飲んでも症状は重くなっていきました。
食事や睡眠が十分にとれない中で、なんとか現状のまま乗り切ろうと、無理して仕事にしがみついていました。

そんなタイミングで医師は、
「思い切って仕事を休みましょう。最低でも3か月間。」
「診断書、出しますから。」

ときっぱり言いました。

医師は私の職場宛てに書面を作成し、私はついに職場の上司に休職を申し出ました。
そして、あっけないほど速やかに受理され、上司と話し合って約2週間後から休職に入ることが決まりました。

当時の私の職場は少ない職員で施設を運営する仕事で、宿直勤務が週に1度回ってくる特殊な勤務環境でした。

この職場で職員が1人欠けるということは、とても重大なこと。仲間に大きなしわ寄せが行くことは必至です。

施設が開所されて以来、休職者は出たことがありませんでした。
つまり、休職者が出ることは前代未聞の事態なのです。
私だけでなく、たぶん同僚も同じ認識だったと思います。

だから、もしも心療内科に行かず、自分だけで治そうとがんばっていたら、あの時期に休職に入れていなかったことは間違いありません。

そして、あのとき医師のリードに従って思い切って休職したからこそ、3か月後に復職できたのだと確信しています。

通院することの意味

人によって違いはありますが、私には処方薬の効果はあったと思います。
そして、頼れる専門家として主治医がいることの意味はとても大きいです。

うつ病という病気は、正しく考える力を低下させます。
そのため、とてもネガティブな思考に偏ってしまいます

その結果、正しく治療を受けたり必要な休職に踏み切ったりするのに必要な判断力と行動力が奪われます。

そして、新しい行動を起こす力がなかなか出ないことも、うつ病治療を遅らせる要因だと思います。

慣れた行動さえできなくなるエネルギー不足の状態ですから、今まで行ったことのない精神科や心療内科に行くという新しい行動を起こすハードルはとても高いのです。無理して仕事を続けるより、休職を決意して職場に申し出る方が、その時の当事者にとっては辛いのです。KO寸前のボクサーにタオルを投げ込むセコンドが必要な場合もあると思うのです。

私の場合、妻が背中を押さなければ心療内科に行くのがいつになっていたか分かりません。そうなれば、休職に入るのもかなり後になっていたと思います。

私もそうであったように、適切な治療につながる最初のきっかけは、家族や友人など、身近にいる信頼できる人であることが多いと思います。

判断力や行動力が弱くなっている分、信頼できる人の意見に耳を傾け、時には身をゆだねることも大事ではないでしょうか。

私は医師とつながって、休職への道が開けました
医師から他の支援者につながる可能性も広がります
理解者や支援者、特に良い専門家とのつながりは多い方がいいと実感しています。

薬の処方等、医師にしかできないことがある一方で、
診察時間の制約等から十分な心理的支援が受けられなかったり、処方される抗うつ薬や眠剤そのものに漫然と頼ってしまったりといったリスクもあります。

そうならないためには、自分に合った支援者一人ではなく、できるだけ多く持つことが大切だと私は考えています。

特定の支援者だけに頼ると、たとえば何らかの誤解や一時の対応ミスなどが原因で唯一の支えを失い、孤立したり絶望してしまったりしかねません。
家族や友人だけに頼ると、双方の気分や関係性によって、互いに傷付け合ってしまうおそれもあります。

病気に対する知識があり、じっくり接してくれて、安定した関係を維持できる専門家が、できれば複数いてくれることが理想的だったなと今改めて思います。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?