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絵になる美しい街並みを創造する為の粉本/仁尾(にお)/香川県三豊市/木造の酢醸造所により形成された街並み


 香川県の丸亀から車で景色の良い多度津の海岸線を西に走り、先にある荘内半島の付け根を更に西に抜ければ仁尾に着く。伝統的建築群保存地区の指定を受けるほどメジャーで無い仁尾の街並みを訪ねたのは、青地に白の文字で一字ずつ書かれた大きな看板が何個も黒い壁に飾られたインパクトの強い建物の写真が妙に記憶に残り、何時かそれを絵にしたいと思っていたからだ。事前の情報収集もせず、訪ねたものだから、建物の位置が分からず、四苦八苦。
 看板に書かれていた中橋造酢を頼りに漸く辿り着いたのは名産「仁尾酢」を商う店舗兼母屋。それらは蔵造り風に設えられ、外壁の仕上げは漆喰塗りと焼き杉の板張り、屋根は切り妻の瓦葺きで、2階腰部のなまこ壁が景観形成上のアクセントになっていた。
 周辺を散策すれば、あに図らんや伝統的な設えの規模の大きなかなり古い町家が街路に沿って建ち並び、この当たりも見応え十分。目的の建物はこれらの場所から南に2,3百mほど南に行ったところで偶然発見。
 探索すると、それは看板通り、中橋造酢株式会社の醸造所を構成する建物で、敷地を囲む四方の街路に沿って建ち並ぶ他の建物群と相俟って、仁尾を代表する趣のある街並景観を形作っていた。この趣は、切り妻の瓦葺き屋根や焼き杉の黒い壁、所々に配された白い漆喰や土色の壁、煉瓦造りの煙突、レトロな看板等から醸し出されているのだと思われる。これら一連の街並は海上交通の便が良く、良水に恵まれた仁尾が寛保元年(1741年)から始まったと言われている酢醸造業等により繁栄した証。町ぐるみで後世に引き継ぐことが望まれる。

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