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映画を観た「せかいのおきく」

2023年4月公開の作品。
主演は黒木華さん。寛一郎さんと池松壮亮さんもほぼ主演。
数年にわたる、季節で区切られたいくつかの章からなるこの作品は、章の終わりのシーンのみがカラーの、基本モノクロの時代劇作品だ。

武家育ちの華さん(→おきく)は今は浪人となった佐藤浩一さん演じる父親と長屋で暮らしている。
少々気が強いところもありながら、それなりに父娘仲良く暮らし、普段は寺で子どもたちに読み書きを教える生活を送っている。

池松さんは今風に言うとトイレの汲み取りを職業にされていて、寛一郎さんもそこに転職する。彼らが長屋へも汲み取りに回っていることからおきくさんとも顔見知りだ。

それにしても華さんは時代劇でも違和感のない数少ない俳優さんのお一人だと思う。
髙田郁さんの「みおつくし料理帖」をドラマ化や映画化で何名か演じておられる主人公は華さんがピカイチだった。違和感ゼロ、原作にぴったり合っていてとても印象に残っている。

さて、寛一郎さんと池松さんのお仕事ぶりが頻繁に出てくるが、この件もあってモノクロで表現されているのか。
ただ、モノクロにしたところで音やその他の作り込みがリアルで、終盤は臭気すら漂う感じがして、その点は鑑賞時の環境に注意されたほうが良いかも。

章の終わりにカラーで表現されるシーンは、モノクロから切り替わるだけでとても印象的だ。

華さんはある出来事により父親を失い、また自身の声も失うが、不幸の底から徐々に回復するさまが良い。
以前の自分に戻るのではなく、新しい自分として再生しているさまが素晴らしい。

華さんが恋をして、独りで感情に悶絶するシーンと、好きな人に食べさせたくておにぎりを握る、はやる思いがすごく伝わってくるそのシーンがお気に入りだ。
モノクロなのにおひつのご飯からたちのぼる湯気が妙にリアルで、熱いご飯をものともせずに握っていく華さんの、恋する気持ちがいじらしかった。

一生懸命演じておられた寛一郎さんは、やっぱりだんだんお父さまの佐藤浩一さんに似てこられたなー、なんて、親戚のオバさんみたいなことを思いながら鑑賞した。

休日の午後、良い作品に会えた。


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