垂珠
『すみません、これ調べてもらえますか?』
『いらっしゃいませ、お預かりします』
恰幅の良い男性。
『いやぁ、やっぱり都会はオシャレな人が多いなぁ』
『どちらからいらっしゃったんですか?
あら?このクジ、どちらで買われたんですか?初めて見ます!』
『あーぁ、それはね、長崎と三重で買ったやつ。
家は北海道なんだけどね、営業で日本中あちこち回ってて、自宅に帰るのは、月に数日なんですよ。最近しんどくなってきました。
60越えると一気にしんどいですわぁ』
宝くじは、全国で売られてるものと、日本をブロック分けにして、ブロックごとで売られているものがある。
当選を調べるのはどこの売店でもできるのだ。
『大変なお仕事なんですね〜』
『一年のほとんどがビジネスホテル暮らしです。もう慣れました!あっはっはっは〜』
『わっ!3万円当たってますよ!おめでとうございます!』
『ホント!? うゎーー、ラッキーラッキー!』
『宝くじ買うの趣味なんだよね〜 行った先々でちょっとずつ買うの。
少額だけどわりと当たるんだよ』
『へぇ〜 いいですね〜』
『見てここ!』
男性は自分の耳たぶを引っ張っている。
『垂珠ね、これ、いい形らしいのよ、そう言われてからいろいろ勉強するようになってさ、専門家にも見てもらったんだけど、褒められるんだよね〜』
耳たぶのことを、垂珠(すいじゅ)というらしい。
そのお客さんの耳をまじまじ見ると、大きめで厚みがあって、耳たぶもふっくらしている。
『お姉さんの耳は?』
私は仕事のとき、髪を束ねている。
横を向いて耳を見せると…
お客さんは、わ〜はっはっはっは〜
『なんでそんなに笑うんですか〜 私の耳はどうですか?』
お客さんは手で、バツを作って笑ってる。
『失礼失礼、お姉さんの耳はねぇ、金運とは縁がなさそうだなぁ』
ガーン。やっぱりな。
福耳…
片方の耳たぶが蚊かなにかに刺されて腫れたとき、これくらいの大きさだったら福耳なんだけどな〜
なんて、ポリポリ掻きながら鏡を見た記憶がある。
私の耳たぶは小さすぎて、イヤリングがすぐに落ちてしまうから、ピアスの穴を開けたのだ。
福耳に憧れて(重たいピアスをずっとぶら下げたら耳たぶ大きくなるかも!!
大発見かも!!
あーぁ、それだとピアスの穴が広がるだけか…)
なんて馬鹿げた想像をしたこともある。
『おっ!でも耳輪にホクロがあるな!頭いいでしょ?賢いんじゃない?ね?』
耳輪(じりん)とは、耳の外側のことだそうな。
頭がいいでしょ?賢いでしょ?と言われて
『はい!頭よくて賢いんです、私』なんて返事するわけないでしょー!
実際、頭もよくないし、賢くもない私は
『そんな自覚はまったくないけど、耳たぶが大きい方がよかったなぁ』と答えた。
垂珠に、耳輪ね!新しい言葉を教えてもらった。
勉強になりました〜
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