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萩くんのお仕事 第五話

 うーん、タイトル候補。

 「気になる隣人」渇いた都会風だな。「隣は何してる?」なんか、前期に、そんな問いかけ風があったぞ。女三人のお隣さんにちなみ「隣の花園」・・・うーん、いきなり、露魅さんがそういう路線になりそうだな。「秘密の隣人」サスペンスか?うーん、全く違うので却下。「隣」は止めて・・・うーん、出てくる人絡み・・・なんかさ、このまま行くと、今の俺みたいに、その八尋さん演じる漫画家が、隣に探りを入れつつ、・・・あああ、漫画のネタ探しするのがいいんじゃないかな。って、全く同じだけど・・・「覆面漫画家○○○のお仕事」ああ、バレてるじゃん。覆面漫画家が全面的に。この漫画家の名前だな、まずは。お仕事、っていいかな、なんとなく。ちょっと、媚びてる?まあ、それはそれで・・・で、名前だ。普通の名前がいい。山田太郎みたいなの。普通の人が、びっくりする仕事をしてるのがいいんだ。ペンネームは、ビックネームだけど、本名が、超地味なのがいい。クラスメートで忘れられるような名前。・・・って、だから、覚えてないって・・・。ペンネームは本編中、バンバン出てくる。作品とセットでね。でも、本名は恐ろしく地味なんだ。うーん。なんだあ?ああ、そういえば、こんなのあったな。耶麻雅飛来って、昔、没ネタの、爺さん作家に使ったんだけど、まずこの「やまがひらい」がペンネーム。「平井二郎」ってどうかな?平井が名前にそのままで。案外、灯台下暗しな。それで、地味、暗い、モテない・・・まではいかなくてもいいけど、黒ぶち眼鏡の、要領悪い二郎・・・八尋さん、張り切ってやってくれそうだな・・・「二郎君のお仕事」でどうかと。平板なタイトルが、却って、妄想を掻き立てないかな?

 これで行こう。俺の作品として、題名に人の名前が入るのは、初めてだ。地味だけど、まあ、何でもいい、「おい、羽奈賀、どうした?」みたいに、興味をまず引く、これが大事かも。

 題名が決まった。多分、キャッチーなシーンを15秒ぐらい、で流す、あれから撮るって、神崎さんの手法なんだよね。最近じゃあ、ch18の方針になっちゃってて。っていうか・・・あ、監督さん、誰がつくのかな?月城先生だったら、良かったのにって、つくづく思うんだよな。連動で、言わずもがなのディレクションしてくれるのにさ。その心算で、仕事取ってきたんだよ。あの人。なのに、居なくなっちゃって。全部、俺一人でやらないと・・・。

 とか、ぐすぐず、言ってても、仕方ない。それでも、劇団の方は、公演続行中だから、今は、新ネタの件もないし、あっちは、あっちの部隊で動いていてくれるから、まだ、助かってるんだよ。座長までやれないって、この時期に。なんで、俺はこれで頑張るしかない。月城先生の為にも。

 ・・・って、スマホが光る、神崎さんだ。

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「・・・まあ、それで、羽奈賀はねなが先生、前に、月城先生に聞いてたんだけど、監督デビュー兼ねて、どうかって、今回」
「えー、月城先生が?」
「うん、いなくなる直前かな、僕のとこ来て、羽奈賀にやらせろって」
「えー、聞いてないです。俺はもう、ルナキャッスルの座付き作家でいい、ってことだったんです。それが、CMだの、ラジオだの、小説だのって、裾野拡げさせられて、今回ドラマ脚本だって、今、四苦八苦してるっていうのに、監督までって・・・そんなあ」
「えー、やってみたくないですか?月城テイストで行く予定だったでしょう?羽奈賀さんだって」
「いやあ、先生、居なくなるなんて、思ってなかったから」
「そうだよねえ・・・でも、何か、曰くあり気じゃないですか。いなくなる前に、こんなこと、言って行くなんて・・・遺言みたいな・・・」
「・・・って、もう、まだ、死んだって、決まったわけじゃないのに」
「お願いします。助監に、それなりの面子を、付けますから、段取りとかは、そいつにさせればいいんです。こうしたいんだ、と座って、指示してればいいんですよ。それに、本だって、その場で、変えられる権限もありますしね。話題になりますから、何よりも。上手く行けば、映画化、舞台化とね、シリーズ化とかね」

 あああ、神崎さん・・・。なんか、何十年も続いているような、往年の畑田寿美子大先生の、家族愛シリーズじゃあるまいし、そういうのは狙ってないんだけど。舞台なら舞台、映画なら映画、脚本の経験があるんで、そんな野望はないよ。ただ、俳優さんたちは、それで乗ってってくれれば、嬉しいって所はあるかなあ・・・。得意は、短編とか言っちゃうのも違うんだけどさ。ラブロマンスとかとも言いきりたくもないし。ただでさえ、恋愛バイブルだの、なんだのって。どこをどうやったら、こんな歯の浮く台詞、ってなるわけじゃん。あー、つまりは、そういうのは、生涯一、二度しか訪れないから、って、限定にしてるから、作り話を成り立たせているわけで。そんな、野別幕無しじゃないんだ。来た仕事をしているだけ・・・それ、なんでか、信じられたことがなくて。数打っちゃってるから、まあ、自分で言うのも、なんだけど、それぞれの作品にファンがいるからなぁ・・・っていうか、どうでもいいことに、頭の中で言い訳して。

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 そんなこと、考えつつ、チャンネル18に萩は赴く。神崎プロデューサーと打ち合わせ中、偶然、別の仕事で来ていた、女優の江川露魅ろみが通りかかる。彼らを見つけると、すかさず、近づいてきて、会話に入ってきた。

「ああ、露魅さんじゃないですか。相変わらず、お綺麗で・・・」
「あらあ、こんにちは、神崎さん。ご無沙汰しております。羽奈賀先生」
「あ、この度は、ドラマの出演、お受け頂いて、ありがとうございます」
「こちらこそ。ああ、羽奈賀先生、あれね、第二皇妃は、私の当たり役になったのよ」
「ああ、嬉しいです。イメージ、ぴったしだったんで」
「あれから、ああいうお仕事の依頼が、増えちゃってね。これから、また、エステ行くのだけれども・・・」
「はあ、・・・」

 露魅さん、お会いすると、やはり、女優の貫禄・・・至近距離だと、すごい、スタイル良いの、解るんだよなあ・・・月城先生とも何度も共演してきてて、恋人役やってたんだったよな。

「やっぱり、そういう系なのかしらね?今回も」
「あー、ホームコメディですから、ちょっと、控え目ですねえ、残念ですが」
「また、神崎さん、羽奈賀先生に無理難題、言ってない?」

 言ってます。

「でも、未亡人よね、うん、イメージ作っておくわね。ちょっと、抑えめな感じ?ああ、ギャップも、大丈夫よ、羽奈賀先生」
「あ、はい、出来次第、本が行くと思います。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「じゃあねえ、楽しみだわ」

「ノリノリじゃあないか。露魅さん」
「ありがたい限りですが・・・」

 地味だぞ、あのお母さんやるんだよ。女優の幅を拡げて頂くのも、一つなんですよ。イメージを裏切るのも、いいのではと・・・。

波多野朱璃はたのじゅり、ブッキング上手くいきましたよ。しかも、あれでしょう?彼女と、志芸野しぎのさんが絡むってことでいいんだよね?」
「ああ、今の所、そんな感じですね」
「思うに・・・、まあ、前も言いましたが、その家族の女性に、それぞれの年齢の恋愛模様があって、それを、いい感じの羽奈賀テイストで、いつも通りに、木曜夜22時に耐え得る感じので、やってもらえれば、対象年齢のそれぞれの女性が盛り上がりますからね、視聴率が上がります」
「そんな、簡単じゃないと思いますよ」
「それに、八尋靜一やひろせいいちですよ。間違えありません。八尋さんなら、露魅さんでも、朱璃ちゃんでも、絡んで、いい感じになるじゃあないですか。ドキドキの展開を、次回に引きずる形で、お願いします。あと、10代の子でしたよね。高校生の妹役は、新人でどうかな、と話が出ています。写真を何枚か、どうでしょうかね?」
「ふーん、これだけじゃ、解んないなぁ。動きとか、声とかないとね」
「ですよね。もう少し、各プロダクションに照会かけて、候補リストアップしますんで、本の方、進めてください。イメージ15秒、先にできたら、絵コンテまで・・・」
「はいはい、いつも通り、できますんで、それも」
「すごいなあ。羽奈賀さん、マルチだからな、じゃ、よろしくお願いしますよ」

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 まあね、決まったから、ストーリー出てくることは出てくる。初回分は、カレーと煮物とマッサージチェアと、社長も出てきたし、二話で、長女の不倫発覚。まではいいよね。15秒スポットは、もうコンテから入って解説する感じでいこう。端折るよ。覗く平井の姿から、

「さえない30男、独身、彼はいつも追われていた・・・ああっ、次の話、どうしよう、ネタを探し続ける毎日」

 登場人物のキャッチ入りのアップ、料理を綺麗に盛り付けている露魅さんママと、スーツをかっちり、真面目眼鏡の朱璃さん長女、そして、決まってないけど、次女は、名門女子校の制服でちらりと、イケメン彼氏と登校シーン。ドタバタな感じで、近所の社長さんが入ってきて・・・こちらは往年のバイプレイヤーの川原仁かわらじんさんになったそうだ。いい味だ。露魅ママに岡惚れしている様子。八尋さんの平井が、上手い料理にぱくつく連続シーン。最後に、足元舐めの、志芸野しぎのさん。彼の立場は、まだ、明かさない。この男女7人が織りなす、ホームコメディ「二郎君のお仕事」木曜22時。・・・って感じかな。

 これは、その後、オッケーが出たので、近々、1、2話の本読みの日に、この番宣ショットのアップ中心での撮影になるみたい。その前に、芽実ちゃん役のオーディションだな。はあ、速い、速い。数日前には、想像つかないことが、展開しているんだから。はあ、持つかな、俺?

                             ~つづく~


みとぎやの小説・連載中 萩くんのお仕事 第五話

 お読み頂きまして、ありがとうございます。
 萩くん、追われていますね。まだまだ、バタバタが続いておりますが。
 次回辺りから、少し、萩の仕事のことだけでなく、周辺が動いてくるようですね。仕事とプライベートが、ドラマ脚本の制作で混載していく感が否めず・・・そんな、次回、第六話をお楽しみになさってください。

 ちなみに、今回の扉絵、本文編集より、時間を掛けました。
 テレビ局内の一室にしようと、背景を壁にして、掲示物をつけてみました。作っていて、とても、楽しかったです🍀
 もう一つ、ちなみにですが、今宵は満月です。身体が怠い、今一つ、体調の悪かった方、貴方の所為ではありません。満月の所為です👍

「萩くんのお仕事」は、このマガジンから、纏めて読むことができます。



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