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頼まれごとは、生涯一の仕事 その二 艶楽師匠の徒然なる儘~諸国漫遊記篇~第二話

「ちょいとぉ、痛いよっ、ちゃんと歩きますからっ」

 あーあ、どうなっちまうんだい、ほんとに・・・。
 それにしても、庵麝あんじゃ先生ったら、何も言わないし、研之丞けんのすけも大人しくなっちまって、頼りないねえ、男二人して、本当にもう・・・。

 あれ?ここ、奉行所じゃないね、まあ、何したっていうんじゃないんだろうから、すぐになんだってことでもない、・・・っていうか、ここ、碧山の旦那のご自宅じゃないか。

「旦那、つれてきやしたぜ」
「ああ、ご苦労だったな、もう、行っていい」
「わかりやした」

 その後、まあまあの綺麗なお屋敷に上げてもらえたんだけど、これって、咎人の扱いと違うけど・・・。

 そういえば、碧山の旦那って、何回か、街ですれ違って、声掛けられたことがあったお方だねえ。ちょっと、顎が尖ってて、あまり、いけ好かない感じだったから、ああ、この方、与力だったのねえ。

「まあ、茶も団子もないが・・・まずは、久しぶりだな。帳研之丞」
「ああ、ご無沙汰しております・・・で、今日はどういうお取り調べで?」
「うん、まあ待て・・・聖川、これ、返しておく」

 え、あ、これ、さっきの、文書だよ、「畸神譚在界采配地一覧集」だよ。

「あ、ありがとうございます」
「膝の痛みに、あの膏薬、よく効いてる、助かっている」
「それは、ようございました。艶楽、これを」
「え?いいんですかい?頂いても?」

 え、何、これ・・・

「で、御伽屋艶楽。もう一つだ。これを持て」

 え、なんだい?これ。巾着じゃないか、あれ、がしゃんって、なんだい?
 これは・・・

「まあ、ちょっと、世話になったご仁から頼まれたことがあってな。
なあ、聖川」
「ああ、まあ、はい・・・」

 え?

「ちょっとぉ、どういうことなんだい?これ、碧山の旦那」
「今、あんたが、他の同僚に捕まっちまったら、元も子ねえ。いいか。発禁書を手にしてる以上、早く、この城下を出て行った方がいい」
「どういうことですかい?碧山の旦那?」
「研之丞、旅の一座に紛れさせて、この二人を連れていけ」
「え?」

 なんか、なんか、怪しい・・・
 でも、これは、全部、好都合じゃないかぁ・・・

「今日、あたしは、頼まれごとの為に、旅に出ようと決めてたんだよ」
「ほお、それは、すげえな。仙吉の親爺、どんぴしゃりだ」

 碧山の旦那は、ケラケラと笑い飛ばした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「なんだい、グルだったんだねえ。庵麝先生」
「あー、まあ、済まない、艶楽」
「つまりは、艶楽師匠が腰をあげなければ、この仕掛けで、その文書のことを調べるように仕向けようとしてたってことですかい?」

 でも・・・するってぇと、早く、城下を出なきゃならないってことかい?

「ねえ、研之丞、いつ、真菰座、出発するんだい?ねえったら、ねえ」
「わかりました。早く出られるようにしやしょう、・・・師匠、そんなに袖をひっぱらないでくださいって」
「私は、旅支度はできている」
「庵麝先生っ」

 あ、思わず、抱きついちまったよ。そんなに、嬉しそうにしなさんなって・・・、それにしても、上手くいきすぎやしないかい?

 さっき、碧山の旦那から、もらった巾着は、訳ありの金子らしい。旦那は濁していたが、仙吉さんに恩があったらしく、このことを頼まれていたらしい。それは、庵麝先生も一噛みしていたようで・・・。

 これで、正式に城下を出て、文書の事を調べにいくことになりました。
 なんか、いつも、バタバタしてるねえ。
 さて、あたしも、準備しなくちゃね、よいしょっと。

                             🌸つづく🌸


みとぎやの小説 頼まれごとは、生涯一の仕事 その二 
                    ~艶楽の徒然なる儘 第二話

お読み頂きまして、ありがとうございます。
なんか、バタバタしておりますね。みとぎやもバタバタしております💦
まあ、それはこちらのことなのですが・・・。
いよいよ、次回から、どこかに出ていくことになりそうですが、
上手く、いくかなあ・・・。
これまでのお話は、こちらにまとめてありますので、宜しかったら、御覧下さい。 結局は、仙吉さんが、全て見越して、お膳立てしていたってことですね・・・。


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