脳卒中患者に対する体幹トレーニングは、歩行中の筋シナジーを増やすかもしれない
▼ 文献情報 と 抄録和訳
脳卒中後の筋活動に対する体幹トレーニングの効果
Van Criekinge T, Saeys W, Hallemans A, Herssens N, Lafosse C, Van Laere K, et al. SWEAT2 study: effectiveness of trunk training on muscle activity after stroke. A randomized controlled trial. Eur J Phys Rehabil Med 2021;57:485-94.
[背景] 脳卒中後の体幹トレーニングは、体幹のコントロール、立位バランス、モビリティの向上に有効な方法である。SWEAT2研究では、体幹トレーニング後に観察された移動性の持ち越し効果の基礎となるメカニズムを発見することを試みた。
[方法] 本研究では、脳卒中後の歩行回復に関する新たな知見を得ることを目的として、体幹トレーニングが体幹と下肢の筋肉の活性化パターン、筋肉の相乗効果、運動単位の動員に及ぼす影響を二次解析により検討した。デザイン:無作為化比較試験。RevArteリハビリテーション病院(ベルギー,アントワープ)で実施された単調な試験。対象:5か月以内に初めて脳卒中と診断された45人の成人、そのうち39人が治療を完了し、解析に含まれた。介入方法:参加者は4週間かけて16時間の体幹トレーニング(N.=19)または認知トレーニング(N.=20)を追加で受けた(1時間、週4回)。参加者は,体幹と下肢の筋肉の筋電図を用いた計測器による歩行分析によって評価された。アウトカム指標は、筋電図信号の線形積分正規化包絡線、非負行列因子分解によって算出された筋シナジーの量と構成、中心ウェーブレット周波数の平均値によって算出された運動単位のリクルートであった。多変量解析によるポストホック解析と、連続曲線の統計的パラメトリックマッピングを行った。
[結果] 筋の活性化パターンと筋の相乗効果の量には、有意な差は認められなかった。被験者の42%では、体幹トレーニングによって、脊柱起立筋の活性化のみを表現する筋シナジー(第7の筋シナジー;図)が追加されたが、対照群では5%であった。体幹筋群の運動単位の動員は、体幹トレーニング後の脊柱起立筋において、麻痺側(t[37]=2.44、P=0.021)と非麻痺側の脊柱起立筋(t[37]=2.36、P=0.024)で、速筋の動員が減少した。
体幹筋活動中心の第7の筋シナジー(N.=9)
HERS:m.脊柱起立筋(片麻痺側)、NHERS:m.脊柱起立筋(非片麻痺側)、HRF:lm.大腿直筋、HVL:m.外側広筋、HMH:内側ハムストリング、HLH:外側ハムストリング、HTA:m.前脛骨筋、HGAS:m.腓腹筋。
[結論] 体幹トレーニングは、亜急性脳卒中後の体幹筋の選択的制御と持久力を改善する。
[臨床意義] 実際の臨床現場でのリハビリテーションの知識としては、体幹トレーニングは筋の活性化パターンや筋の相乗効果の量を経時的に変化させないこと、体幹トレーニング後の歩行時に脊柱起立筋の速筋運動の採用が減少することが認められたこと、体幹トレーニングは背筋の疲労耐性を高め、より単独での活性化を可能にすると思われること、などが新しい点として挙げられる。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
「筋シナジー、・・・?」という方は、以下のnoteを参照いただきたい。わかりやすく解説されている。
脳卒中患者においては、筋シナジーの個数が減ることが報告されている。
つまり、数少ない特定のパターンしか取れなくなってしまう特徴があるのだが、今回のRCTの結果、体幹トレーニングによって、『麻痺側の脊柱起立筋を単独に近い形で動員する筋シナジー(第7の筋シナジー)』が追加される可能性が高い。
筋シナジーが増えるということは、一般に良いこととされている。
ただし、「歩行中の筋シナジーは下肢だけで4個、体幹含めて5個程度という報告(脳卒中患者に至っては2-3個)が多い中で、第7の筋シナジーって多くない?」と思ってしまった。その第7の筋シナジーが「歩行においてどのような貢献をするのか」が知りたい。「筋シナジー」・・・。まだまだ、未開の領域が多く残された分野だ。
その第7の筋シナジーが「歩行においてどのような貢献をするのか」が知りたい。「筋シナジー」・・・。まだまだ、未開の領域が多く残された分野だ。
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