見出し画像

走ると脛骨応力が歩きの2倍に!圧縮・伸張・剪断方向の分析

▼ 文献情報 と 抄録和訳

女性および男性レクリエーショナル・ランナーのウォーキングおよびランニング中のピークおよびステップごとの脛骨骨応力

Meardon, Stacey A., et al. "Peak and Per-Step Tibial Bone Stress During Walking and Running in Female and Male Recreational Runners." The American Journal of Sports Medicine (2021): 03635465211014854.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] アスリート、特に女性アスリートは、高い確率で脛骨の骨ストレス傷害(BSI)を経験している。怪我のメカニズムを理解し、安全なランニング上達プログラムを設計するためには、ウォーキングやランニング時の脛骨の負荷に関する知識が必要である。

[目的] 男性および女性のランナーにおける歩行速度の関数としての脛骨荷重を調べること。

[方法] 研究デザイン→コントロールされた実験室での研究。方法40名のレクリエーションランナー(女性20名、男性20名)を対象に、トレッドミル上で4つの歩行速度条件(歩行、優先走行、低速走行、高速走行)での運動学的および動力学的データを収集した。脛骨応力の推定には、参加者固有の磁気共鳴画像と運動データを用いた筋骨格モデルを使用した。ピーク脛骨応力と応力-時間インパルスは、2因子多変量分散分析(速度*性別)と事後比較(α=0.05)を用いて分析した。骨の形状と脛骨の力とモーメントを調べた。

▶︎歩行・走行の立脚相での骨ストレスを推定するためのワークフロー
①モーションキャプチャで三次元動作分析
②筋骨格モデリングを用いて内的な筋張力と外的な反力を推測
③MRIを用いて骨モデルを作成
④②③からFinite Elementモデルを用いて骨ストレスを計算

[結果] ピーク圧縮量は速度に影響され(P < 0.001)、速度を上げると男女ともに脛骨の圧縮量が増加した。ウォーキングからランニングに移行する際、女性は男性よりもピーク張力(P = 0.001)とせん断力(P < 0.001)の増加が大きかった。さらに、女性は全体的に脛骨のピークストレスが大きかった(P < 0.001)。圧縮および引張応力-時間インパルスは、速度(P < 0.001)および性別(P = 0.006)によって変化し、インパルスはウォーキングよりもランニングの方が低く、女性の方が大きかった。せん断応力-時間インパルスの交互作用(P < 0.001)は、女性は男性に比べて、歩行から走行に移る際に大きなインパルスを示すことを示した。男性と比較して、女性は脛骨が小さく(P < 0.001)、脛骨の力が不均衡に小さかった(P≤ 0.001-.035)。

画像1

Tension:伸張、Compression:圧縮、Shear:剪断

[結論] 脛骨応力のピーク値は歩行速度に応じて増加し、歩行時に比べて走行時には2倍に増加した。女性の方が男性よりも脛骨応力が大きく、歩行から走行に移行する際の応力の増加も大きかった。性差は、女性の骨の形状が小さいことと、男性に比べて女性の身長と体重が低いことから、脛骨の力が比例して小さくならないことに起因すると考えられる。

[臨床的関連性] これらの結果は、ランニング関連のトレーニング負荷を調整するための介入に役立つ可能性があり、女性の骨強度を高める必要性を強調するものである。女性の相対的な骨強度の低さが、脛骨BSIの性差に寄与している可能性があり、女性ランナーはランニングプログラムを開始する際に、ゆっくりとした進行が有益であると考えられる。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

走るとこの筋に○倍の、とか
走るとこの関節へのストレスが○倍に、とかの情報に触れる機会はあったと思う。
けれども、骨のストレスが○倍、にはお目にかかったことがなかった。
その理由は、方法上の難解さがあると思う。
今回の研究にしても方法論はいくつもの段階を踏み、組み合わせた精密なものだ。
一方、結論としてはシンプルで、「走ると2倍の骨ストレスになります」だ。
これは、患者さんに説明しやすいし、理学療法プログラムを立てる際のイメージもつきやすい。
有用である。

完全なOpen accessではないが、アイオワ大学からfreeでpdfがダウンロードできる(2021.9.5時点)。ワークフローの図や結果のグラフが非常にわかりやすいので、ぜひご覧いただきたい。

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓

【あり】最後のイラスト

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●○