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糖尿病に『寛解』の定義ができた!

▼ 文献情報 と 抄録和訳

コンセンサスレポート:2型糖尿病における寛解の定義と解釈

Riddle, Matthew C., et al. "Consensus report: definition and interpretation of remission in type 2 diabetes." Diabetologia(2021): 1-8.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[レポート概要] 糖尿病患者の中には、自然に、あるいは医学的介入により、血糖値が正常範囲内に改善する場合があり、血糖値を下げる薬物療法を中止した後も持続する場合がある。このような持続的な改善は、新しい治療法により、より頻繁に起こるようになっているかもしれない。しかし、このプロセスを説明するための用語や、それを定義するための客観的な尺度は十分に確立されておらず、その達成による長期的なリスクとベネフィットについても十分に理解されていない。この問題に関する過去の議論を更新するために、米国糖尿病協会によって国際的な専門家グループが招集され、将来の臨床指針を支える情報基盤を確立することを目的として、データ収集と分析のための用語と原則を提案した。このグループは、「寛解」を最も適切な記述用語として提案し、通常の診断基準として、血糖降下剤による薬物療法を中止してから少なくとも3カ月後に測定したHbA1cが6.5%(48mmol/mol)未満であることを示した。また、寛解を経験した人を積極的に観察するための提案を行い、寛解の予測因子や転帰に関するさらなる疑問や満たされていないニーズについて議論した。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

そもそも、治癒と寛解の違いは何だろう?

治癒:病気が完全に治った状態
寛解:病気による症状や検査異常が消失した状態

糖尿病には治癒はないが、寛解はあるという概念になっているようだ。
そして、近年の医学的介入の進歩により、その寛解が増えてきていると。

大事なことは、なぜ「寛解の定義」があった方がいいのかを考えることだ。
その答えの1つは、新たな『分析』を可能にするから、である。
これまで、血糖値という連続変数だったものが、「寛解あり、寛解なし」というコンセンサスの取れた二値データで示すことが可能になる。
すると、何が変わるか?
『カットオフ値』を算出することができるようになるのだ。

たとえば、血糖値と歩数に関して考えてみる(エビデンスに基づいていません)。

【カットオフ値がない世界】
■ 血糖値と歩数に負の相関が確認されていた
■ すなわち、「歩けば歩くほど血糖値が下がる」
運動指導:「とにかく歩いてください。歩けば歩くほどいいんですから」
【カットオフ値がある世界】
■ 糖尿病の寛解に対する歩数のカットオフ値が1500歩だった
■ すなわち1日1500歩以上歩くと、糖尿病の寛解に対して効果的である
運動指導:「1日1500歩、必ず歩くようにしてください」

明らかに、後者の方が切れ味のいい運動指導である。
僕たちはいつだって、具体的なものに支配されるのだ。
カットオフ値には、運動指導を具体的にする威力がある。
そして、SMARTの法則の先頭バッターである『Specific』を遵守することは、履行力を強めるために非常に重要である。

とにかく、寛解のコンセンサスが取れたということは、この二値データを用いた臨床研究のゴングが鳴ったことを意味する。
新たな地平が、また1つ開拓された。

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