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60分ごとに6分間の運動が食後血糖値の急激な上昇を防ぐ

▼ 文献情報 と 抄録和訳

座位時間の中断頻度:2型糖尿病患者の食後の代謝に及ぼす影響

Homer, Ashleigh R., et al. "Frequency of Interruptions to Sitting Time: Benefits for Postprandial Metabolism in Type 2 Diabetes." Diabetes Care 44.6 (2021): 1254-1263.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[目的] 薬物療法でコントロールされている成人2型糖尿病患者を対象に、座位での簡単なレジスタンス活動(SRA)を異なる頻度で行うことで、食後の血糖値、インスリン、トリグリセリドが改善されるかどうかを検討する。

[方法] 参加者(n=23、うち10名が女性、平均±SD年齢62±8歳、BMI 32.7±3.5kg・m-2)は、7時間座ったままの状態(SIT)、30分ごとに3分間のSRA(ハーフスクワット、カーフレイズ、臀部収縮、ニーレイズ)を行う状態(SRA3)、60分ごとに6分間のSRAを行う状態(SRA6)の3つのarmed randomized crossover trial(6~14日間のウォッシュアウト)を行った。グルコース、インスリン、トリグリセリドの曲線下面積の純増分(iAUCnet)を条件間で比較した。

[結果] グルコースとインスリンの7時間IAUCnetは、SRA6(グルコース 17.0 mmol - h - L-1, 95% CI 12.5, 21.4; インスリン 1,229 pmol - h - L-1, 95% CI 982, 1,538)では、SIT(グルコース 21.4 mmol - h - L-1, 95% CI 16.9, 25. 8; インスリン 1,411 pmol - h - L-1, 95% CI 1,128, 1,767; P < 0.05)、SRA3(グルコースのみ)との比較では(22.1 mmol - h - L-1, 95% CI 17.7, 26.6; P = 0.01)SRA3とSITの比較では、グルコースおよびインスリンのiAUCnetに有意な差は見られなかった。トリグリセリドのiAUCnetには、条件による統計的に有意な影響は見られなかった。

[結論] 薬物治療を受けている成人のT2D患者において、60分ごとに6分間のSRAを行うことで長時間の座位を中断すると、食後のグルコースとインスリンの反応が低下した。他の頻度での中断や、より長期的な効果の可能性については、臨床的な妥当性を明らかにするための検討が必要である。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

糖尿病患者に対する短時間運動が血糖値の急激な上昇を防ぐ効果があるという報告は多いが、「具体的にどのくらい?」という部分に解を与える研究に出会ったことがなかった。この研究は、頻度・量を調整した2条件を比較することで、「3分間より6分間の方が効果的」であることを明らかにした。

恥ずかしながら、著者はこれまで、糖尿病を合併している運動器疾患患者の退院支援として、「3分間細切れ運動」なるものを推奨していた。座り続けることを断つことに意義があって、運動の量的な部分に頓着がなかった。

さて、今日から、「6分間細切れ運動」を退院時の自主トレーニング指導に応用してみよう!また一歩、進みそうである。