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N30体性感覚誘発電位:痙縮発生を予測するバイオマーカーとして期待

▼ 文献情報 と 抄録和訳

脳卒中後のN30体性感覚誘発電位と痙性および神経機能との相関関係;横断的研究

Chen, Lilin, et al. "Correlation of N30 somatosensory evoked potentials with spasticity and neurological function after stroke: A cross-sectional study." Journal of Rehabilitation Medicine 53.9 (September) (2021): jrm00223-jrm00223.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 補足運動野と運動前野から発生するN30体性感覚誘発電位の存在が,脳卒中後の痙縮や運動障害,運動回復段階と相関するかどうかを検証する。

[方法] デザインは、横断的研究。対象とした患者 中国・茂名市の茂名人民病院に入院していた脳卒中患者43名を対象とした。方法 43名の脳卒中患者を対象に、Modified Ashworth Scale(MAS)、Brunnstrom stage、徒手筋力検査などの神経機能検査と、N30体性感覚誘発電位、N20体性感覚誘発電位、運動誘発電位、H反射などの神経生理学的検査を実施した。その結果をグループ間で比較した。相関分析と回帰分析も行った。

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✅ 図1. (A)体性感覚誘発電位(SEP)成分を記録した部位、(B)赤枠は正中神経を刺激した部位、黄枠は尺骨神経を刺激した部位、針は屈筋橈骨筋の記録部位を示す。

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✅ 図2. (A)N30あり:赤枠はF'3/F'4領域から採取したN30体性感覚誘発電位(N30 SEP)とP22、青枠はC3'/C4'領域から採取したSEP P15、N20、P25を示し、緑線は病変側から採取したSEP、灰色線は非病変側から採取したSEPを示す。(B)N30不在、赤枠はF'3/F'4領域から記録されたN30のSEPとP22、青枠はC3'/C4'領域から採取されたSEP P15、N20、P25、灰色の線は病変部側から記録されたSEP、緑色の線は非病変部側から記録されたSEPを示す。

[結果] N30体性感覚誘発電位が存在しない患者は、N30体性感覚誘発電位が存在する患者に比べて、より強い屈筋の痙縮(r = -0.50, p < 0.05)と運動機能の低下(r = 0.57, p < 0.05)を示した。N30体性感覚誘発電位と運動誘発電位の両方を含む一般化線形モデル(AIC = 121.99)は、N30体性感覚誘発電位(AIC = 125.06)または運動誘発電位のみを含むモデル(AIC = 127.45)よりも、患部近位上肢の回復段階をよりよく反映していた。

[結論] N30体性感覚誘発電位の状態は、脳卒中患者の痙縮と運動機能の程度と相関していた。この結果は、N30体性感覚誘発電位が痙縮の発生と近位肢の回復のバイオマーカーとして有望であることを示している。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

これまでの痙縮発生予測は、「間接的」であった。
痙性の結果生じる運動麻痺の重症度、痙性コントロールに影響する認知機能など、痙性そのものとは別個の外部の関連要因だった。

だが、「N30体性感覚誘発電位」は違う。より直接的なバイオマーカーだ。
痙性が反射弓(感覚入力-中枢処理-筋出力)と高次中枢の異常であるとするなら、その内部での出来事の一部を電気的にバイオプシーしてきたものが「N30体性感覚誘発電位」だ。
「友達の友達から聞いた話」ほど信頼できないものはない。目の前の当事者から聞いた話こそ、真を穿つ。

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