見出し画像

見た目がカッコいい『肩甲骨の装具』;翼状肩甲骨を防ぎ、挙上角度を6度増加させる

▼ 文献情報 と 抄録和訳

より高く到達するために 不可逆的な肩甲骨骨折者の上肢機能を向上させる肩甲骨外反補助術

Georgarakis, Anna-Maria, et al. "Reaching higher: External scapula assistance can improve upper limb function in humans with irreversible scapula alata." Journal of neuroengineering and rehabilitation 18.1 (2021): 1-14.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] 肩甲骨の可動性や機能に異常をきたす肩甲骨運動不全は、日常生活における上肢機能を低下させる。肩甲骨の運動障害の典型的な徴候は、腕を上げたときに肩甲骨が突出する「翼状肩甲骨」である。翼状肩甲骨は、可逆的な原因であれば治療が可能ですが、不可逆的な原因であれば侵襲的な外科手術が必要となる。しかし、手術ができない場合、日常生活で肩甲骨を補助するための標準的なアプローチが存在しないため、深刻な制限が生じる。本研究の目的は、外部から、すなわち非侵襲的に肩甲骨を補助した場合の機能改善を定量化することである。

[方法] 本研究は、無作為化制御クロスオーバー試験としてデザインされた。筋ジストロフィーのために肩甲骨が不揃いとなった8名の参加者は、非介助(ベースライン)、訓練を受けたセラピストによる外部介助、および織物をベースとした新しい肩甲骨装具による外部介助の状態で、肩の屈曲および外転における腕の挙上を行った。

2【Journal of neuroengineering and rehabilitation】Georgarakis, 2021:より高く到達するために 不可逆的な肩甲骨骨折者の上肢機能を向上させる肩甲骨外反補助術_サムネイル

装具は3つの層で設計された
1. 硬い肩甲骨のインターフェイス:肩甲骨のインターフェースの後面に圧力を加え、内側および背側のウイングを打ち消す拘束力が得られる
2. 身体の前側と外側に作用する力を固定する繊維製の胸郭ハーネス:肩と胸部に調整可能なストラップを付けた
3. 回転式のケーブル固定機構を備えた硬質のプレッシャープレート:連続的に調整可能な力増強滑車システムを構成していた

[結果] セラピストの介助により、腕の平均挙上量は、屈曲時に17.3°増加した(p < 0.001、平均値の95%信頼区間𝐶𝐼95%=[9.8∘,24.9∘])。CI95%=[9.8∘,24.9∘])、外転では11.2°増加した(p < 0.01, 𝐶𝐼95%=[4.7∘,17.7∘])CI95%=[4.7∘,17.7∘])となり、肩甲骨外反補助の可能性を構成した。装具による介助では、腕の平均挙上量が屈曲時に6.2°増加した(𝐶𝐼95%=[0.4∘,11.9∘])。CI95%=[0.4∘,11.9∘])、外転では5.8°の差がある(𝐶𝐼95%=[3.0∘,8.5∘])CI95%=[3.0∘,8.5∘]). 驚くべきことに、3人の参加者において、装具は少なくともセラピストと同等の効果を発揮した。さらに、装具の補助により、日常生活の模擬作業中に満タンのボトルを持ち上げた際の平均的な知覚的労作が1.25ポイント(ボルグスケール)減少した。

[結論] これらの知見は、装具の将来的な進歩の大きな可能性を示している。今回発表された織物ベースの肩甲骨装具は、日常生活の場面で遭遇するようなセラピストがいない場合に、肩甲骨の外部補助の利点を活用するための実現可能なツールであると言える。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

肩甲骨は、皮下での運動が大きく、捉えどころの少ない体部位である。
三次元動作解析で肩甲骨動態を正確に追うことは、フェルマーの最終定理だ。
近年、ポツポツとその方法論が確立されはじめているが、まだ途上だろう。

そんな肩甲骨運動のサポートを目的とした「装具」ができたという。
皮下での運動が大きいということは、表面上何か施しても、水面下で動くような感じになってしまう。
この技術は、スーパーだと思う。
相当圧力かけて肩甲骨と装具をフィットさせている、しかもそれが痛くならないような工夫が施されているようだ。
あれ・・・、これにサポート機能つけずに三次元マーカつけたら、『肩甲骨動態』、追えるんじゃない?

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓

【あり】最後のイラスト

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●○