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だが、情熱はある―実写版『デビルマン』感想

こんにちは、ダマシと申します。

みなさんは来年2024年は何の年かわかりますか?
箱根駅伝100回記念?パリオリンピック?

いいえ違います、2024年は…

ちなみに誕生日は10月9日です。みんなで祝おう!

実写版『デビルマン』20周年です。

というわけで今回は来たるべきデビルマンブームに乗り遅れないために実写版『デビルマン』のレビューを行っていきたいと思います。

私自身近所のTSUTAYAでレンタルし鑑賞したのがもう3年前とかなので記憶がややあやふやなところもありますが、それでもある程度内容は覚えているのでそれを基に書いていこうと思います。

…なんでレビューするのにまた借りなかったのかって?仕方ないじゃないですか、他の誰かが借りてたんですから。

あらすじなど基本概要

まず始めに知らない方もいると思われますので『デビルマン』について簡単に説明していきたいと思います。

デビルマンは永井豪氏によって『少年マガジン』に掲載された作品で、主人公の不動 明(ふどう あきら)がデーモンの力で「デビルマン」となり侵略者であるデーモンと戦いを繰り広げる作品です。

原作漫画は人間に化けるデーモンにより人間同士が疑心暗鬼となり魔女狩りのような虐殺を起こしてしまうなどダークでシリアスな作風であり、対してアニメ版はヒーローであるデビルマンが悪役であるデーモンを倒していく王道のヒーローものとなっています。

そして、今回紹介する実写版は原作をベースとしています。

10億円もの予算をつぎ込んだと言われ、上の画像を見ていただければわかると思いますがCGもカッコよく気合いが入っています。
これはさぞ名作に違いない!と期待する人もいたでしょう。しかし結果は今でもなおクソ映画の代名詞となってしまうほど悪い意味で有名となってしまいました。

実際私自身も一目見て「ああ、この映画はヤバいな」と感じるくらいでしたので、今回のレビューは基本悪かった点です。

駄目な点と良かった点

ここからはなぜこの作品が「クソ映画」と呼ばれてしまっているか考えていきたいと思います。

素人でもわかる失敗点


まず大きいであろう部分は原作からの改変です。古今東西、原作から大幅な改変を加えたことでファンからの不評を買ってしまった作品は多く、この作品もその一つでしょう。ただし私自身は原作を読んでいないため、原作との詳しい相違点に関しての問題は他のサイトに任せたいと思います。

個人的に最も大きな理由としては、表現や演出に破綻している点がいくつも存在しているためじゃないかと思っています。

演技に関してもよく言われるように主役の二人が棒読み過ぎて酷かったという大きなマイナスポイントは存在しますが、そもそも演技未経験だったのでそんな人を抜擢した制作側が悪い、とギリギリ擁護できるのでここでは割愛します。

酷かった例としては、最初明がなんやかんやあってデビルマンへと初変身するシーン、ここでいきなりデーモンが現れてなんか重要そうな説明をするんですが、その内容を無視してワンパンで倒してしまいます。

序盤で語られる、しかも重要そうな世界観に関する説明が来ると身構えていただけにこの展開には「えぇ…」となりました。倒すときの演出はアニメチックでとてもスタイリッシュなだけにもったいない感が凄かったです。

いきなり出てきて話も聞いてもらえず、戦闘シーンもないまま倒されてしまった彼のことを私は「チュートリアルデーモン君」と名付けその不遇さに同情しました。
実際に視聴して確かめていただきたいですがビジュアルが良かったのも哀愁を漂わせます。

他にも中盤あたりでシレーヌというデーモンと戦うのですが、このデーモンが強くデビルマンこと明は負けてしまいます。
そして絶体絶命のピンチに明のもとに親友の飛鳥 了(あすか りょう)が現れるのですが、なんとここでいきなり場面が切り替わり明が気がつくとシレーヌの姿が消えていました。

どういうこと!?今まで戦ってたじゃん!
さすがにこのシーンは訳が分からず何度も見直したのですが、結局今に至るまで真相はわかりません…
嘘だと思う方がいましたら実際に見てみてください。いきなり場面転換して何事もなかったように話が進みますから。

まぁネタバレになるのですが了の正体は「サタン」というデーモンのトップのような存在であるため、おそらく命令を出してシレーヌを下がらせたか明を守るためその力で殺害したかのどちらかではないかと思っています。
ただあくまでもこれは私の想像のため、本当のところはまったくわかりません。

ていうかそれくらいはっきり作中で描写してくださいよ!
例えば場面が切り替わった後に、

「あいつはどこに行ったんだ?」
「わからない、唐突にどこかへ消えたんだ」

みたいな会話して、その直後に血のついた羽根とか映しとけばなんとなく「ああ、了が何かしてシレーヌを倒したんだな」って思うでしょうが!

言ってしまえばここは強敵シレーヌを何らかの方法で退けた了の得体の知れなさと、それをなぜか明にはごまかすことで「了には何か秘密があるのか?」って観客に想像させる美味しいシーンなんです。

それをなんでこんな宙ぶらりんの形で終わらせて、観客にモヤモヤした感情を抱かせるのか素人でも理解に苦しみます。

あと個人的に酷かったのがヒロインの美樹がいる牧村一家がデーモン(明)をかばったことで暴徒に襲撃されるシーンです。
未読の私でも原作でヒロインの生首が民衆に掲げられるというショッキングなシーンを知ってるほど凄惨な場面なんですが、この映画では絵面がギャグにしか見えません。

まず牧村夫婦が襲われるシーンですが、ここで皆さんに一つ質問です。
大勢の人間に暴力を受けていて、かつ凄惨な場面といったらどのような状況を想像しますか?

おそらく大人数が代わる代わる殴る蹴るの暴行でしたりバット等で殴打を行っている絵が思い浮かぶかと思います。

しかしこの映画はそんなステレオタイプに囚われません。

作中では向いている方向が内側なんですけど、概ねこんな感じです

なぜか皆おしくらまんじゅうのように牧村夫婦を取り囲み、なんかごちゃごちゃしている隙に誰かが包丁でブスッと1回刺して終わりです。

「数の暴力」という恐ろしさを描くシーンのはずなのに、ただみんなで取り囲んで暴力を振るうことなく終わりって何を考えてるの?って真面目に思いました。

あんまり生々しいと子供の影響に悪い?でもこれPG-12指定なんですよ。
他のシーンで充分人間を露悪的に描いてたんですからもうちょっと毒気を出してもよかったんじゃないかなというのが私の考えです。

その後ヒロインの美樹が殺害されるシーンもツッコミどころがあって、暴徒が乗り込んでくる直前包丁を見つめながら「私は魔女…」って自己暗示のようなことをしています。けど数分後に殺されてしまった際は「違う…私は魔女じゃない…」って呟くんです。

いやどっちだよ!
好意的に解釈すれば「自分は魔女なんだから人殺しくらいなんてことない」と奮い立たせていたけど結局殺すことができず「私は人殺しになれなかった…」的な感じなんでしょうけど、いかんせん美樹が攻撃をためらう描写もなければ決意を固めてから返り討ちに遭うまで数分ほどしかないので心変わりが早すぎるようにしか見えないんですよね。

もっと感覚を空けて言わせておけば印象は異なったのに…と少し悔やまれます。

こんな感じで素人でもおかしいとわかるシーンが数分単位で次々と出されるので、物語に入り込むことができなかったのが作品として致命的な欠点だったのではないかと思います。

(一応ある)良かった点

良かった点としては、よく言われるようにCGの出来は非常に良く、同時にデビルマンの戦闘シーンはそこそこ迫力があり普通に見ることができました。

また結構オーバーなところはありましたが、デーモンの擬態により人間同士が疑い合うようになった際の魔女狩りの場面など人間同士の争いによる恐怖感や醜さもよく出せていたと思います。

それ以外…?子役時代の染谷将太さんの演技ぐらいでは?

目元とか面影があります

笑えるクソ映画

さてここまで色々言ってきましたが、実は私、この映画は「良作」でもあると思っています。

世間一般的には「映画としては失格」など厳しい意見が多い本作ですが、私もその考えには同意します。

言っていることが真逆のように思えますがそうではありません。なぜなら私は、この映画は「普通の映画」としては不合格ですが、「クソ映画」としては良作の部類であると思っているからです。

私が考えるに「クソ映画」は2種類あり、「笑えるクソ映画」と「笑えないクソ映画」に分けられます。
実写版デビルマンは前者に該当します。

両者の違いとしては、作品に情熱を持ち、真面目に作品を作っているかの部分で、これが無いと独りよがりな作品となり、ひたすら虚無に近い映像を散々見せられ視聴が苦痛となる「笑えないクソ映画」となります。

わかりやすく例を出すと音痴の人の歌みたいなもので、本人は真面目に歌っているつもりでも、音程が全く合っていなければ周りからは面白く見えます。ふざけて音痴に歌うのではこの面白さを出すことはできないでしょう。

それと同じで、「作っている本人たちは至って真面目なんだけど観客からは面白く見える」のが「笑えるクソ映画」なのです。

そしてこの実写版デビルマンはこの笑える部分を大いに満たしています。

決して高いとは言えない演技力、独特すぎる演出、なにかおかしいキャラクターやセリフ、けれど気合いの入っているCGやバトル描写…

真面目に作っているんだろうけどどこかズレていてそこが面白い、これが作品の魅力となっています。

真面目に見るのはやめた方がいいけど、ツッコミどころが多くて何も考えず笑いたいときにはぴったり、そんな「楽しみ方」ができるので「クソ映画」という括りの中では上澄みの方ではないかと私は思っています。

ただ、軽い気持ちで見ると後悔するのでおすすめはしません。いやマジで。

おわりに

ということで実写版『デビルマン』のレビューでした。

日本屈指のクソ映画と聞いて気になって見たのが始まりだったんですが、個人的には確かにそう言われるのも納得のクオリティでした。

ただオリジナルのラストや人間の恐ろしさ、CGなど良いところもあったため、いくつか変更すれば名作を狙えるポテンシャルはあったと思うだけに、もったいなさも感じています。

まあこれは個人の感想なので、気になった方は一度見てみるのもよいかと思います。

アドバイスとしては、もし見る際は酒を飲んで酔いながら見ましょう。

ツッコミどころで笑いやすくなるので楽しくなりやすいでしょうし、そこまでではないと思いますがもしも見るに堪えなくなったら酒を増やして最悪記憶を飛ばせるからです。

さて今回は「笑えるクソ映画」をレビューしたので次回は「笑えないクソ映画」をレビューしたいと思います。

ではまた。


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