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雪に大きいハート描いた。

2月の初旬、東京に雪が積もった。
見てる分には綺麗だけど、
転びたくない、濡れたくない、面倒くさい。
という思いの方が勝っていた。

静岡出身の僕。
地元にいたころは3年に一回くらい、雪らしき白いものがパラパラと降る日があって、決して積もることは無い。それでも特別なものな気がしてすごく嬉しかった。
地面に触れると溶けてしまうけれど、ビニール傘をさすと少し残る感じ。
あれが好きで、それだけで感動したのを覚えている。


東京に出てきたのは高校卒業して19歳のとき。
料理の専門学校に通うために一人暮らしを始めた。
もう10年も東京に住んでる。何度か大雪をくらった。
交通ダイヤの乱れや、職場での雪かき、お客さんが来なくて暇な日。
悪いことのほうが多くて、雪予報でもテンションはあまり上がらなくなっていて、"大人の感性"になったなと少し寂しく感じる。

雪が降り始めた時、案の定レストランへの予約は無し。
スタッフで普段より豪華な賄いを食べて、21時頃家に向かって慎重にトボトボ歩く。水っけの多い雪で誰かが既に歩いた道はビショビショに濡れている。防水の靴だけど、なるべく濡れないようにと一歩一歩考えながら歩いて、家の手前まで着いた。

真っ白なジュータンを目にして心が踊った。
誰も踏み入れていない。雪のキャンパス。

隣の敷地のアパートはつい何日か前に取り壊され、更地になっていた。
あぁ、遊びたい、、、。
さっきまで慎重に歩いていたのが嘘みたい。
10センチくらい積もった雪の中をズンズン進んでいく。綺麗にかける自信もなかったけど、妻に自慢しようと思い、ハート型にした。部屋からちょうど見えるように。

意外と跡が残らなくて5周ぐらい回った。
着ていたダウンの中はじんわり汗ばんでくる。
白い息がたくさん出て、通行人には目をそらされ、自分でもガキみたいで馬鹿だなぁとおもったけど。

歪なハート。自慢できる出来ではないし。
靴はびしょびしょだし、なんかちょっと汗かいてるし。

妻に見せると、なにしてんの〜と鼻で笑われた。
けど、翌日明るくなってからちゃんと写真も取ってたし、旦那が子供っぽくてと話の話題にもされてる。

久しぶりの雪は悪いことばかりじゃなくて。
"少年のこころ"を持つって人生を楽しむためには大事だったりしますよね。
少しだけ嬉しくて、少しだけ良い日になった。

また来年、一度くらい雪が降るといいなぁ。




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